覚醒3
「やめて!助けて!」
私は叫んだ。
実際は声にならず、心の中で叫んだだけだった。
次の瞬間、私を締め付けていた枝がゆるみ、枝から抜け、私の体は落下した。
地面に落ちる前に、別の枝が私を受け止めてくれた。
「ナム!一体どういうつもり!
リンは信用できるって言ったでしょ!」
ハヌルが本気で怒っている。
私を受け止めてくれた枝は、私をやさしく地面に降ろしてくれた。
私は苦しくて咳き込んだ。
「リン、悪かった。
ハヌル、この子には力がある」
ナムの眼は、少し鋭くなったように見えた。
「力?なんの!」
ハヌルはまだ興奮していた。
私はハヌルの足元に崩れるように座り込んだ。
「ハヌル、リンは自分を守る力を持っている。
自分だけじゃない。
ミョックがハヌルから離れたということは、自分の周りの人も助ける力を持っている」
ナムが何を言ってるのか私には理解できなかった。
私が守る?自分を?人を?
「リンを握り締めていたが、すごい力で押し戻され、リンを落としてしまった」
ナムが、そう説明した。
「うまく説明できないが、リンが心から願ったとき、体が、リンの体が何かに守られる。
そういう力を持った人間がいると聞いたことがある」
ナムは何百年と生きている。
何年前か、何十年前か、何百年前かにそういう人間のうわさを聞いたことがあるらしい。
私にそんな力があるとは思えない。
「リン」
ナムが私に話しかけてきた。
「今まで自分の力に気づかなかったのか?」
「今までも何も・・・今もそんな力があるなんて思えへんよ」
私は正直に答えた。
「ここにたどり着いて、力が目覚めたのかもしれない」
ハヌルが言った。
「私もね、ここに来るまでナイフなんて持ったことなかった。
果物ナイフすらね。
でも、ここにたどり着いて、誰に教わったわけでもないのに、ナイフで闘える自分に気づいた」
「ナイフで闘う?」
私が聞き返した。
ナイフで闘う場面がそんなにもあるのだろうか・・・。
「ここはナムが守ってくれてるから平和だけど、林を出るといろんなのがいるから」
ハヌルが意味ありげに言った。
「目覚めたばかりの力か・・・」
ナムが言った。
「まだ、自分で力をコントロールできないかもしれないな。
どんなときにどんな力が出るか、未知数ってところだ」
「もっとすごい力があるかもしれないし」
ハヌルが私を見た。
「もしかしたらこれで終わりかもしれない力?」
「未知数だな」
ナムとハヌルの会話を聞きながら頭が痛くなってきた。
飛行機から落ちて、不思議な海草に襲われて、平然と木と話をして・・・。
そのうえ、私になにやら力が目覚めた・・・?
頭がおかしくなりそうだった。