薬草狩り5
ミョックはすでにひざの辺りまでを覆い尽くしていた。
ハヌルを見やる余裕はないが、おそらく同じ状態になってると思えた。
もがけばもがくほど這い上がってくる気がする。
這い上がってくると同時に締め付けてくる。
腰の辺りまでが覆われるのに、それほど時間を要しなかった。
私の考えが正しければ、海の中に入ればミョックは離れるはず。
でも、転がって移動することすら不可能だった。
「だ・・・誰か助けて・・・!」
それだけ言うのが精一杯だった。
このままでは二人とも全身海草に覆われて死んでしまうかもしれない。
「こんなところで死ぬわけには行かん!
誰か助けて。
兄さん、助けて!」
心の中でそう叫んだ。
とたんに、ミョックの締め付けがゆるんだ。
指がミョックと体の間に入った。
昨日、ハヌルが襲われたときと同じだ。
服を傷つけることを覚悟して、体とミョックの間に火かき棒を差し込み、ミョックを引きちぎった。
簡単にははがれなかったが、締め付けられることがなくなったので身動きが取れるようになった。
「リン!
海へ!」
ハヌルはナイフを使って、すでにかなりミョックをはがしていた。
私はまだ両足がミョックに覆われていた。
立ち上がれなかった。
ハヌルはまだ片足が覆われてはいたが、私の手を引いて立たせてくれた。
何度か倒れながら、私たちは海へ飛び込んだ。
溶けるようにミョックが離れた。
ハヌルも私も肩で息をしていた。
ここのところ毎日「死ぬかもしれない」と思う瞬間が続いている。
このままでは精神が持ちそうにない。
海から出ると、二人で白い砂浜に腰を下ろした。
ハヌルが水筒のお茶をすすめてくれた。
わずかな甘みが体を癒してくれる気がした。
『元気になるお茶』
ハヌルがそんなことを言ってた気がする。
「海に入ったら、ミョックが離れることが実証されたね。
こんなに簡単に離れるのが分かってたら、今まで苦労しなかったのに」
ハヌルがため息をひとつついた。
「いつもナイフで応戦?」
私がたずねた。
「どれだけ必死でナイフを振り回すことか・・・」
その様子は、簡単に想像できた。
ミョックの激しい締め付けは、死ぬかもしれないと思わせるに充分だった。
「でも・・・」
ハヌルがナイフを目の高さまで上げて続けた。
「今日も、途中でミョックがひるんだ、っていうか・・・離れたよね。
いつもかなり苦労するのに、ミョックの巻きつきが緩んだから、かなり楽だった。
もしかして・・・リン、何か叫んだ?」
「たぶん、声には出てなかったと思うけど・・・助けて、って心の中で叫んだ・・・と思う」
ハヌルはしばらく私を見つめたまま、黙り込んだ。
「いいや。
とりあえず目的は達した!
ナムに届けに行こう!」
ハヌルが立ち上がってもと来たほうへ歩き始めた。
私も慌てて立ち上がった。
いろんな出来事のせいで、足が震えていたが、ハヌルに小走りでついていった。