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【捨て犬・イエス】  作者: シュリンケル
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6.バンドーの恋人

 厳しい寒さが和らいだその日、わたしは坂東バンドーの仕事場へ見学に向っていた。


わたしが坂東と知り合ったのは、先月のこと。


女友達三人で久しぶりのお茶会(というか飲み会)にテンションの上がった私達は、

カラオケBOXで二次会を楽しんでいたの。


 「エリー!次はあんたのために歌うわよっ!」 と叫ぶのは親友のカナ。

(彼女はお酒が入るといつも弾けるのよね)


カナが”愛しのエリー”をいつものように唄ってくれた。

曲がサビに差し掛かり、カナの歌声に力がこもる。

「えーーーりぃーーー」 わたしを熱く見つめるカナ。

「そぉーーーー」 わたしに迫るカナ。

「すぃぃぃーーーー!!」 マイクを投げ捨てわたしに抱きつくカナ。

相変わらず面白い奴だわよ。

そんな私達を大笑いして写真に撮りまくるのは親友のミナ。


 ちなみに、お酒の入っていない時のカナは同一人物とは思えないほどにおしとやかなのよ。

わたしがピアノ演奏を担当している結婚式場で、彼女はとても清楚に案内嬢を務めているわ。

それとミナは結婚式場のカメラマンなの。(わたしたちの姉貴って感じね)



 歌い終わったカナは盛り上がりすぎて部屋を飛び出していく。

きっとナンパに行ったんだわ。

「カナって自由よね」 と言ってわたしとミナは笑う。

きっと酔いが覚めたら何にも覚えていないのだろう。



 やがてカナは男子を三人連れて帰ってきた。


カナを両脇で支えあう男子二人はちょっと軽い感じのハンサム君達。

その後ろで赤くなっていたのが・・・坂東だった。

(彼を見た瞬間、なぜだかわからないけどドキっとしたわ)



 二人のハンサムは最初のうちこそ礼儀正しく見せていたけれど、

カナが酔っ払ってもたれかかるのを見ると露骨に口説き始めた。

(その時点で危ないな、とは感じていた)

「う、気持ち悪い」と言い出したカナをトイレで介抱していると、ハンサム二人がいきなり入ってきた。

「俺らが替わるよ」と彼らは言って無理やりわたし達をトイレから追い出した。


これは危ない。わたしは何とかトイレに押し入ろうとするのだけれど、ドアはびくとも開かなかった。


坂東が走ってきたのはその時だった。


ドアが内側から固定されているのを見ると、彼はいきなり横向きにドアを蹴り上げた。

そうとう強い力で蹴ったのだろう。

ドアは枠ごと壊れ、内側で押さえていたハンサムの一人がトイレの壁に叩きつけられた。

トイレの個室でカナを押さえつけていた、もう一人のハンサムが真っ青な顔で振り向く。

坂東が静かに見下ろす。

ハンサムは歯をガチガチと鳴らして震えた。震えて許しを求めた。


「みんなに謝れ」坂東がハンサム二人に言う。


彼らはトイレの床に正座してわたし達に謝った。そしてみんなの会計を二人で支払って帰っていった。



「どうもすみませんでした」坂東は深く頭を下げる。


とんでもない、とわたしは言った。

けしかけたのはカナだったわけだし。


「それでも、怖い思いをさせてしまった」そう言って再び頭を下げる坂東。

あなたの連絡先を教えて。とわたしは言った。


 それが私達の出逢いだった。


それからわたしは坂東に連絡を取り、二回目のデートで恋人となった。


---


 そして今日、わたしは彼の仕事場を見学するのだ。”動物愛護センター”を。


挿絵(By みてみん)


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