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【捨て犬・イエス】  作者: シュリンケル
3/20

3.死の予感

 監獄の中で、誰よりも小さく弱い存在の僕のことを、周りの犬達は威嚇すらしなかった。


それは何故か?


答えは死にかけていたからだ。


呼吸は細くなり、痛みの感覚すら遠くなっていた。


僕の口の中には常に不吉な鉄の味がしていたし、身体からは(のみ)すらも逃げ出していた。

(死に行く生き物には蚤すらも寄り付かないのだ)


看守・カトーの予想(すぐに死ぬだろう)は実に的を得ていたのだ。


---


 「さあみんな、朝だよ!」今日も一人の看守が鉄の桶を叩いて歩き回っていた。


それは、朝ごはんの合図でもある。


周りの犬達がそわそわと起き上がり、鉄格子に集まる。


僕は起き上がろうにも身体が鉛のように重たくて、そのまま丸くなっている。


でもお腹がすいたな、と思った僕は起き上がろうとした

その時だ

どすん、と僕に一匹の犬がもたれかかる。

どすん、ともう一匹の犬が反対から座り込む。


僕は起き上がる事もできないままじっとしていたんだ。



 やがて鉄格子の向こうから看守達が食事を持ってくる。

(いい匂い!)

だけど僕の両側には大型犬がもたれかかり、僕は動けなかった。


仕方なく、僕はみんなの食事の音をぼんやりと聞いていた。



 看守達は鉄格子の一部をぎぃぃっと開けた。

僕の両側にもたれた犬達が身体を緊張させていた。

(僕はもたれかかる大型犬の後ろからその光景を見ていた)


必死に食べまくる犬達を、看守はしばらく眺める。一匹ずつ、見比べては指を刺して歩く。

そして監獄にいる半数近くを、看守達は監獄から連れ出した。

(散歩に行くのかな?と僕はぼんやりと見ていた)


そうして犬達は違う場所へと移動して行く。-それきり彼らは戻っては来なかった。-


その後、看守達は隣の監獄でも同じ作業を繰り返していたようだ。



 僕を両側から抑え付けるように座り込んでいた大型犬達は、大きくあくびをするとようやくその場を離れた。

僕が大型犬たちを見上げる。

彼らが僕を見下ろす。

『ご飯を食べな』 大型犬の一匹が僕に言う。


 僕はよたよたと歩き、わずかに残ったごはんを食べた。

お腹は空いているのに、僕は食べた後に吐いてしまう。(固形物を身体が受け付けないのだ)

僕が吐いたごはんを、さっきの大型犬の一匹がすかさず食べた。

何度も噛み砕いて・・・僕の前に吐き出した。

『これを食え』と彼は言った。

僕は、それを食べた。(今度はなんとか飲み込めた)


その大型犬は僕の耳の匂いをしつこく嗅いで、何かを納得したかのようにふんっと鼻息を飛ばして言ったのだ。


 『お前は生きろ』 と


挿絵(By みてみん)


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