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【捨て犬・イエス】  作者: シュリンケル
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2.監獄のルール

 僕は一日のほとんどを寝て過ごした。


汚れた(しかし暖かい)毛布は力の強い犬達の寝床になっていて

力の弱い犬達は硬く冷たいコンクリートの上で丸くなって寒さに耐えるしかなかった。


僕ら(犬達)の間にはしっかりとした力関係が成り立っている。

その関係は強さによって、均衡を保たれている。


そして一日に何度か、その力関係を再構築すべく決闘が行われた。


 今日も一匹の大型犬が、力の強いボス犬(この部屋には何匹かのボスがいた)に決闘を挑んでいた。


殺意に満ちた目でボスの目を見つめて合図を待つ。

(それが決闘のルールだった)


挑まれた側のボス犬(彼は西側の毛布を二枚確保していた)は毛布の上で顔を上げると静かに見つめ返した。

ボス犬の耳はピンと立ち、鼻がひくひくと動く。敵の強さを測っているようだ。


ボス犬の見返す目つきを合図に、大型犬がぐるるるっ、と低く唸る。


じりじりと大型犬が近づく。ボスは動かない。

鼻先が触れ合う距離まで近づき、大型犬が口を大きく開け、牙をむき出す。


それを見てボスが動き出す。


しっぽをぴんと立て、身体をゆっくりと起こす。


背中の毛が毛羽立つ。



ボスは音も立てずにしなやかに飛び掛った。

それは一瞬だった。


ガオっと低く唸った次の瞬間に、ボスの牙は大型犬の喉下を捕らえていた。


大型犬のギャオンっと言う泣き声が終了の合図となった。


しっぽをしゅんと丸めて大型犬が部屋の隅にとぼとぼと逃げて行く。

硬いコンクリートの床にそっと丸くなる。


 それがその日の決闘だった。


僕達は目を伏せてその後をやり過ごした。


(それは、この監獄のルールだったのだ)



挿絵(By みてみん)


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