19.エンディング
暖かい日差しの下で、わたしはイエスと芝生の上で座っていた。
わたしはふかふかのパンを一つちぎってイエスに与える。
そしてわたしも一切れ食べる。
はむはむとイエスは美味しそうにパンを味わい、わたしの顔を見つめる。
『何か言いたいみたいだね』 彼の瞳はそう言っている。(そんなふうに聞こえてくるの)
そうよ。とわたしは言う。
あなたの言葉はわからないけれど、わたしはあなたの心を感じるの。
きっとあなたにはわたしの言葉がわかるのよね。
そうだよ!と言うかのように、イエスは一声わんっと吠える。
千切れそうなほどにそのシッポを振る。
公園のハトが一斉に飛び立つ。(彼らは綺麗な隊列を組んで空を流れる)
「おーい!」 丘の向うから、坂東が走ってくる。
手を振りながら満面の笑顔で走ってくる。
わたしはイエスのリードを外し、坂東を指差して言う。「彼の所へ走るのよ、まっすぐに」
イエスはわたしにこっくりと頷き、笑顔で走りだす。
(嬉しすぎてシッポが丸まっている)
イエスがジャンプし、坂東が腕を広げてイエスを抱きしめる。
「いい子だイエス!いい子だよ!」
彼らが笑い、わたしも笑顔になる。
イエスと坂東は仲の良い親子みたいだ、とわたしは思う。
彼らを見ていると愛しさが込み上げてくる。
わたしたちはイエスから教わったのだ。
”命”の重みと、イエスから常に感じる”愛”の暖かさを。
それはとても当たり前の事。
だけれど、とても大きな力。
それがなんだか嬉しくて、わたしは坂東にキスをする。イエスがそこに割り込んで来る。
わたしたちは暖かい日差しを浴びて笑いあった。
ぽっかりと浮かんだ白い雲に見守られて。
-FIN-