18.みんなの知りたいこと2
恋はマジック(Could It Be Magic) -バリー・マニロウ-
近くの商店街から流れてくるその曲を、相談者”バウ”(柴犬)が知りたがった。
僕はドッグランにいる人間達の会話から、偶然聞き取ったその曲名を彼に教えた。
『人間はこの不思議な音の事を”音楽”と呼んでいます』 僕はそう言って説明する。
『音を奏で、感情まで表現するんです。それが音楽。音楽はそれぞれを”曲”として分けているんだ』
ふーむ。と唸ってバウは納得したようだ。
『音楽ってステキね』 とメルがうっとりして耳を傾ける。
次の相談者は”ポチ”(チワワ)である。
ポチは言う。
『僕たちはお散歩で色んな匂いからニュース(情報)を教えてもらうじゃない?それをとてもご主人様は嫌がるんだ。なぜなの?』
良く聞く話である。
僕は説明する。
人間たちはペットである僕達(犬)の健康を心配している事を。変な物を食べたりして病気にならないように気をつけている事を。
『それであんなに嫌がって怒っちゃうんだね。ありがとうイエス!良く分かったよ』
最後の相談者・メルが言う。
『わたしたちが人間ともっとうまく暮らすには、どうしたらいいかしら?』
そうだねえ。と僕が口を開くと、たくさんの犬たちがお座りをする。みんなが一番知りたかった事なのだ。
そうして僕は、かつてのドンが教えてくれた教訓を彼らに語った。
-むやみに吠えない。
-むやみに鳴かない。
-うまくいかない時には辛抱強く待つこと。
-危ないと感じたらしっぽを丸めて静かに逃げること。
-今日を生きていることに感謝すること。
-そして・・・生きる希望を最後まで捨てないこと。
聞き覚えのある曲が商店街から流れた。
Get Lost -Eric Clapton-
空の向こうでドンが微笑んだような気がした。