17.みんなの知りたいこと
公園の小高い丘の上に、とても強い風が吹き付ける。
「春一番、吹いたわねえ」 エリーに話しかけているのはポチ(ビーグル・オス)のご主人様。
「春が来るのね」 とエリーが頷く。
『ご主人達は何つってんだぃ?』 ポチが鼻を鳴らして僕に聞く。
僕はご主人様たちの会話を翻訳する。(光の”妖精”がふわりと現れる)
『ほぅ。人間様ってぇのはイキな事を言うもんだ。へぇ。この風は”春”を運ぶのか』
ポチが頭を振ると、大きな耳がぱたぱたと揺れた。
お日様が暖かく僕達を照らす。
やがて、公園の向うから何匹もの犬達がそれぞれのご主人様と共に近づいてくる。
最近、僕が公園に来ると、気配を感じて様々な犬たちが集まって来るようになっていたのだ。
(メル(ウェルシュコーギー・メス)が噂を広げてくれたおかげなのだ)
『おっす!イエス!いい天気だね』
『ここで悩み相談してくれるんだって?』
青空の下、公園の丘の上のドッグランで、僕はたくさんの犬達に囲まれた。
僕は説明した。人間の言葉は理解できても、会話が出来るわけではない事を。
『みんなイエスに聞きたい事がたくさんあるみたいよ』
メルの言葉を受けて、彼らは列になって僕の前に並んだ。
その日から、ウッドチップが敷き詰められた会場で、みんなの知りたい事が語られたのだ。