16.コミュニケーション~お友達~
エリーと、エリーのお父さん。
彼らは僕を理解してくれたようだ。
(少なくとも、「もしかして」のレベルで)
どうやら僕は他の犬に比べて、彼ら人間の言葉が解るらしい。
それに気がついたのは”お散歩”に行くようになってからである。
外の世界。
それは僕にとって奇跡の連続だったんだ。
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散歩の途中で出会う僕の友達。
彼らと僕は常にお互いの情報を交換しあうのだ。
『いよ!大統領!今日もステキな匂いがするね』 彼はポチ。お調子者のビーグルだ。
『昨日さぁ。道に落ちてた黒い物を食べちゃって・・・お腹痛いんだよなあ。お前も気をつけろよな』 彼はポメラニアンのニン。食いしん坊だ。
『あら~ん。イエスちゃん。あたしんち、すぐそこなのよ。遊びに来ない?』 彼女はメル。最近色気を覚えたウェルシュ・コーギーだ。(僕には荷が重いよ)
ある日のこと。
メル(色っぽいウェルシュ・コーギー)が僕に言った。
『ねえイエス。うちのご主人様ってあたしを見るたびに悲しそうに何かを訴えるのよ。何故かしらね?』
僕はエリー(ご主人様)と楽しそうにお話しているメルのご主人様の言葉に耳を向ける。
(僕が耳を傾けると、光の”妖精”が頭上に現れた)
そして、人間達の言葉が僕の耳にすんなりと入ってくる。
『君は食べすぎてしまうからダイエットさせないといけないって。心臓に負担がかかるんだってさ』
僕は人間同士で話している内容をメルに教えた。
(当然、彼女にも理解できてると思っていたのだ)
僕の言葉を聞いて、メルが真剣な顔になる。
『あんた、なんで分かるの?あたしの身体の秘密を』 彼女はそう言って深呼吸をした。
そうして僕は説明したのだ。
僕が理解できる人間の言葉を。
みんなにも聞き取れると思っていた事を。
”言葉を全て理解できる”
その噂はあっという間に近所へと広まっていった。(交友の広いメルが情報源となったらしい)
その日から、僕は犬達の相談役に任命されることになった。
お散歩の帰り道、暖かさの混ざった強い風が辺りに吹き付けていた。
季節は春を迎えようとしていた。