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【捨て犬・イエス】  作者: シュリンケル
15/20

15.会話のきっかけ

 ハンガリー舞曲第5番嬰へ短調 -J.ブラームス-


 鍵盤を跳ね回るわたしの指先に合わせるかのように、イエスがボールで遊んでいる。


鼻先でボールを弾き、ずだだだーっと走っては飛びつき、ボールに噛み付く。

そしてわたしを振り向き、わたしの演奏に耳を向ける。

ピアノの鍵盤を叩くたびに、首を右に左に傾げる。


それを見るのが嬉しくて、わたしはこの曲を何度も弾いてしまう。


 「イエス。あなたピアノが好きなの?」 わたしは聞いてみる。


うん。とイエスが頷く。(そう言ったように聞こえたのだ)


 驚いたことに、イエスは日に日にわたしの言葉を理解しているようだった。

(偶然だろうと思っていたが、試してみると何にでも頷くわけではないのだ)


 お腹が空いた時に「抱っこかな?」と聞くと、首を傾げる。 

「ごはんかな?」と聞くと、頷く。

こんな具合なのだ。


 さっきそのことを坂東に話して聞かせたら、ふーむと唸っていた。

「イエスならありえるかも」と彼は言ったのだ。

(隣でイエスがくしゃみをした)


 イエス、あなたには秘密がたくさんありそうね。



---


 ピンポンと玄関のチャイムが鳴る。


 「エリー!!久しぶりじゃねえ!」

ドアの向こうで待っていたのは父だった。


「どれどれ。新しい家族を見せてくれんかのう」

父はそう言って、イエスの姿を探し始める。


「イエス!わたしのパパが会いに来たのよ。ご挨拶しましょう」

するとわたしの呼び声に答えるかのように、イエスが仕切りの後ろから顔を覗かせた。


こんにちは、と父が会釈をする。


とことことイエスは父のもとに歩いて来る。


父の足元でお座りをして・・・ぺこんと会釈をした。


「いい子!イエスはいい子じゃねえ!」 父は孫にでも会ったかのように興奮した。


「この子は・・・言葉が解るみたいじゃのう」

「パパもそう思う?」


 父はひと目でイエスが気に入ったらしい。

わたしはイエスのエピソードを改めて話して聞かせたわ。


 聖書の聖句(詩篇22篇-マタイ27:46節-)のくだりを説明したところで、

わたしの膝に座っていたイエスははっとした表情で立ち上がり、ワンッと一声鳴いた。


わたしは父と目を合わせて頷きあった。


 やっぱり・・・偶然ではないみたい。


「こりゃあ、面白い!エリー!お前は素晴らしい家族に恵まれたかもしれん」


 父の喜ぶ笑顔を見て、イエスがにっこりと笑った。


挿絵(By みてみん)


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