13.夢の続き
ふと気がつくと、僕は真っ黒な闇の中で佇んでいた。
辺りを見渡して鼻をひくひくと動かし、匂いを確認するけれど
この場所を示す情報が僕には確認できなかった。
僕の鼻、どうかしちゃったのかな。
不安になってふらふらと辺りを歩いてみる。
歩くたびに足元の地面がふわふわと揺れる。
ここはどこ?エリーはどこにいるの?
僕の不安は大きくなり、周囲の闇は深みを増して行く。
僕は闇の一番暗い部分へ向けてやみくもに歩いてみる・・・そこで僕は分厚い”壁”に突き当たった。
その”壁”は僕の侵入を拒んでいるように感じた。
しばらくすると壁の向こう側から何かが近づいてくる音がした。
僕は気配を伺う。
『ようイエス』 闇の壁がぶわわっと震え、壁から何かが滲み出してきた。
「・・・ボス?」 僕は小さな声で聞いてみる。
『あぁそうだよ』 ボスはとても低い声で僕に答える。
でも僕にはボスの姿がうまく見えなかった。
「ねえボス、よく見えないよ。あんたが見えないよ」 と僕は言ってみる。
ボスは首を振った。
それでいいんだよ、と首をふるのだ。
『いいかい、イエス。俺はもう死んだんだ』 とボスは話を始めた。
- お前は生き延びた、とボスが言う。
俺の言った通りだっただろ、と嬉しそうに言う。
俺は死んでこれからあっちの世界に行くんだ。
なんだか随分楽しい事になるらしいが、それは死んだ奴の特権さ。
お前はこっちの世界を楽しむんだ、その義務があるんだよ。
何のために生きるのかって?
そんなの分からんよ。 -
『その答えはお前が自分で見つけるのさ』
そういうとボスの形をした影はすぅっと壁から消えていった。
ボスが消えると壁は闇と共に消え始めた。
そうして僕は夢から覚めたのだ。
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目を開けた僕を心配そうに覗き込むのは・・・エリー!
僕のご主人様だ!
僕は身体を起こし、全身で表現する。
ありがとう!うれしい!大好き!って。
エリーは僕のキスを顔中で受け止めて抱きしめてくれる。
「おはよう!イエス!」
夢の続きは、ステキな現実だったんだ。