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みずやり

作者: 藍染クロム

ホラーです。

 僕には妹が居るんですよ。二人とも幼くて、だから一緒の部屋で暮らしてるんです。妹は少し自堕落な所があって、よく僕に雑用を押し付けてきます。例えば、彼女の机の上にサボテンの鉢があるんですよ。水やりが少なくていいと買ってきたんですが、その少ない水やりも嫌がって、僕にやれって言うんです。


 その日はいつも通り、サボテンに水を上げようとしていました。彼女は、学習机の隣で、ベッドで仰向けになってスマホを見ていて、その横で僕は、サボテンに水を上げようとしたんです。


 でも、おかしい。彼女の学習机に置いてある、鉢の隣に、霧吹きがあるはずでした。その霧吹きが、机のどこにも見当たらないんですよ。


 だから、僕は妹に聞きました。


「ねー、ここにあった霧吹き知らなーい?」


「えー? 知らないよー」


「どこにあるか分かる?」


「知らなーい。そんなのどうでもいいじゃーん」


 妹はベッドで寝っ転がりながら、他人事のように語ります。


「でも、霧吹きがないなら、サボテンさんに水を上げられないよ?」


「うーん。後でわたしがやるー」


 ふむ。彼女が言うなら仕方ない。


 その日は、それで終わりになりました。




 異変に気付いたのは、それから数日後のことです。


 部屋に居ると、俺のもとに妹がやってきて、いぶかしげに俺に話しかけてきます。


「ねー、なんかサボテン、ちょっと元気なくない? ちゃんと水あげてる?」


 その手には、彼女の育てているサボテンがありました。そして、彼女の言う通り、サボテンの端っこが、少し茶色くなっている。


「え? あげてないけど」


 “はぁ?”と、俺の言葉に彼女は目を吊り上げます。


「あげといてって言ったじゃん!」


「え? エミちゃんがやるって言ってなかった?」


 彼女は僕の言葉に即答します。


「言ってない!」


 ……え? 僕は、心の底から冷気のようなものが湧き上がってくるのを感じました。


 俺は、恐る恐る彼女に聞きます。


「いや、だって霧吹きないから。だから、エミちゃんが水やるって、この前言ってたよね?」


 彼女は不可思議に目を逸らし、もごもごと呟きます。


「えぁ……ぃ、言ってないよそんなこと……」


 彼女は自分の言葉ではっきりと否定しました。その瞳には一点の曇りもありません。妹が嘘を言うはずがない。



 ……。


 ……!


 別人だ!! 


 あの日、あの時ベッドに横たわっていたのは!!!


 妹の偽物だったんだ!!!! 


 ドッペルゲンガーだ!!!!!



 僕たちは慌てて家の中を探し回りました。でも、それがあったのは数日前です。家の中には欠片も気配が残っていない……結局、僕たちは「もう一人の妹」を見つけることが出来ませんでした。


 あの日、あの時、僕に「サボテンに水を上げなくていい」と言ってきたのは、いったい何者だったのでしょう……結局、サボテンには僕が水を上げました。

ホラーです。

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