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【胸 糞 注 意】

わたしの肉親…おばあちゃんとの記憶をあなたと共有したいんです。






わたしは、父方の祖母にべらぼうに嫌煙されている。


嫁姑問題がこじれて、母と顔が似ているからかわたしにまでとばっちりが飛んで来てキツく当たられ続けていた。


祖母の家のインターホンを鳴らすとほんの少し開く扉、そこから顔を出すわたしのおばあちゃんの顔はいつだって、思わず息をのんで目を逸らしたくなるような、嫌悪とか恨めしさが滲んだ敵意に満ちたむごたらしい表情をしていた。

冷え冷えとした刺すような眼差しをよく向けらていた。わたしに嫌がらせしてくるクラスメートのいじめっ子の男子とそっくりな目をするんだなと思っていた。

子どもながらにわたしが目障りなんだとよくよくわかった。


わたしが小学生に上がったくらいの頃に祖母の家に帰省していた時の話。父がタバコを吸いに外に出ているタイミングだ。祖母の家にはぬいぐるみがあった。口を酸っぱくして触ってはいけないと言われたがついつい遊んでしまった。くまのプーさんの綿の詰まったまるくてふわふわのお腹をどうしても触りたかった。白いアザラシもいた。ヒゲがねじれているのが面白くって引っ張ってみたくなったのだ。祖母に見つかると「八ァ〜かなんわ、はよ片付けなさいよ」とため息交じりに叱られたことがあった。翌年に祖母の家を訪れると、ぬいぐるみは全て捨てられていた。亡くなった祖父がわたしに買ってくれたものだった。「汚くなったからそろそろいいかなって」と理由でごっそり捨てられた。

まあ母は気が強く全体的に図々しく荒々しく良い人ではないので母を嫌うのはわかるが(なんせ宿敵・祖母の家の1人掛けソファで奥の銀歯が確認出来るほど口をあんぐりと開き、いびきをかきながら昼寝するのだから)

、たった1人しか存在しない孫の私まで毛嫌いするとは何事か。



もう10年近く祖母とコンタクトは取っていないのだが、ふと思い出し、こうしてつらつら綴っている。綴りながらわたしはプンプンしている。プリプリしている。ちょっとふざけながら唇噛み締めるくらいが丁度良いのだ。

祖母の顔を最後に見たのはわたしが10代後半くらいの頃だろうか。

当時久々に祖母の家に行った。部屋のレイアウトがガラリと変わっており、なにより壁にビッシリと写真を貼っていたのが印象的だった。100枚ほどの写真のほとんどに叔母か、祖母と叔母が仲良くしてる知らん家のハーフの子どもが写っていた。ハーフの子どもの写真を愛おしそうに撫でるしわしわの小枝みたいな指。掠れているが蜂蜜よりも甘ったるくとろりしたて声で「この子はほんとうにかわいい、お母さんがイギリスの方なのよ。顔がすっごくきれいでこんなに小さくてもお利口さんなの、1ヶ月前に会ったんだけど、またすぐにでも会いたいわね」って言ってた。そうですか〜って思いながら私はなんか泣きそうだった。おばあちゃんにとったら血の繋がった孫のわたしより、他人の方が大事みたいだった。屈辱的だった。わかっていてもショックだった。乾いた紙粘土がパリパリ割れてくみたいに心がひび割れていくのを感じた。たった1枚だけわたしが写ってた。私が拒食症のしんどい時に他の親族と撮った写真。力なく笑顔を作り、ふらふらした淀んだ目で正面を向いている痩せこけた顔と針金みたいな指が写っていた。

祖母は薄っすら笑いながら「さくらはここに写ってるから問題ないでしょ?」と吐き捨てるようにわたしに告げたっけ。



常々思う…


わたしにはあと一回だけ、祖母の顔を見る機会が巡ってくるだろう。その時ハンカチを持っていく必要はきっとないだろ…と。


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