軍縮会議
1933年のモフィン紛争から始まったヨーロッパの緊張で軍備拡大が始まった。
それに財政面からの危惧を示した各国は1936年に軍縮会議を開催した。
パリ軍縮会議である。
「おかしいな。動きが速すぎないか」
「怪しいサトーよ、どうした」
「軍縮会議の開催だよ。財政が怪しくなる前に開催とか、明らかに誰かが動いている」
「ヨーロッパの転生者か。田中さんにもいるだろうと聞いたが、年齢がわからん。あの頃からなら死んでいてもおかしくない。それか凄く若かったか俺たちと同じで後を継いでだ」
「後を継いでの方が可能性は高いが、高貴な身分ならどうだ」
「王室とかか。しかし、どのみち複数いる可能性が高い。向こうは政治的影響の大きい連中がいると考えよう」
「そうだな。変に技術が進んでいないし」
「ペニシリンが早いだけか」
「触発されていろいろ早くなってはいる」
「医療関係はいいことだと思うが」
「スペイン風邪の死亡者も半分以下か」
「確かにいいことだが、ヨーロッパの国力が減らないんだ。爆発したときが怖い」
「歴史の修正力か。俺は無いと思うぞ」
「無いのが一番だな」
1936年のパリ軍縮会議は、かなり多数の国が参加した。モスクワ大公国のように途中で席を立った国もあるが、1936年暮れに要項が決定。各国が締結に向けて批准する運びとなった。
同時にジュネーブ条約の見直しが行われた。
大まかな内容は
1.陸軍
平時の兵数を人口1,000万人あたり最大5万人とする。
この兵数は全兵種合算であり、将校・下士官・兵の合算とする。
*人口1000万人以下の国は最大5万人とする。
2.海軍
イギリスを10とし、戦力は各国の状況に合わせて上限を設定。
戦艦 巡洋艦 駆逐艦 空母 潜水艦
総量 50万トン 35万トン 20万トン 30万トン 6万トン
イギリス 10 10 10 10 10
アメリカ 8 8 8 8 8
日本 6 6 6 6 6
フランス 6 6 6 6 6
ドイツ帝国 5 5 5 5 5
イタリア 2 2 2 2 2
スペイン 2 2 2 2 2
艦種の設定
戦艦 口径10インチ以上の砲を装備する。
口径は最大16インチとする。
排水量上限35,000トン
巡洋艦 口径10インチ未満の砲を装備する。
8インチ以上の砲を装備する艦を重巡洋艦とする。
軽巡洋艦 排水量上限8,000トン
重巡洋艦 排水量上限15,000トン
駆逐艦 口径5.5インチ未満の砲を装備する。
排水量上限3,000トン
空母 10インチ未満の砲を装備する。
排水量上限35,000トン
潜水艦 10インチ未満の砲を装備する。
排水量上限3,000トン
その他艦艇 口径4インチ未満の砲を装備する。
魚雷搭載不可。
装甲厚最大40ミリ以下。
排水量設定無し。
3.1.1の陸軍全兵種には航空隊と空軍も含まれる。
2.海軍の保有機数は陸軍と空軍の合計を超えてはならない。
3.艦艇の排水量は建造排水量とする。
4.流用条項。
条約のトン数内で他艦種の建造を認める。
イギリスとしては戦艦の保有に余裕を持っておきたかった。ドイツの蓋をして地中海で覇を唱えるには必要だと思われたからだ。しかし、この規模の海軍がどれだけ金を喰うのか。この総量制限はイギリスでも持て余した。イギリス比で総量が決まるから、他国からの突き上げで増えてしまった。もっと減らしても良かったのではないかと議論もされた。きっと次回は減らしに掛かる。
ジュネーブ条約の見直しでは、
1.化学兵器及び細菌兵器の全面禁止。
2.地雷及び機雷は設置地点を必ず記録すること。
撤去は設置国が責任を持って行うこと。
3.将兵に対しジュネーブ条約の教育を行うこと。
上記に違反した国への罰則として、
恒久的に地雷と機雷の使用及び保持禁止。条約批准国による不定期査察有。
ジュネーブ条約の教育をしない国は、
捕虜の取り扱いに苦情を申し立てることが出来ない。
これは当該地域の国名や国家の政治体制が変わっても継続する。
などが盛り込まれた。
昭和十一年 国会ラジオ中継
「我が大日本帝国の海軍力がイギリスの半分というのはどうかと考えるが海軍大臣はどうお考えか。これで国防は果たせるのか。お聞かせ願いたい」
「海軍大臣」
「はっ。海軍としては、第一に国防という観点からは現状で十分と考えます。理由は現在日本周辺に帝国海軍の脅威となる存在は居りません。ならば軍備はいらぬだろうというお言葉には、矛と盾が無ければ蹂躙されるばかりだとお答えします」
「議長」
「荻原君」
「海軍はよろしいでしょう。理解できます。なら陸軍はどうか。お聞かせ願いたい」
「陸軍大臣」
「陸軍大臣であります。海軍同様ですが、島国の我が国が敵に上陸されれば、そのときは既に海軍が戦力を喪失しているときであります。我が陸軍は最後の牙として国民を守る盾となりましょう。また現在の人員ですが、必要にして十分であると考えております。現状、陸軍の任務は多くが災害派遣であります」
「議長」
「荻原君」
「海軍と陸軍お覚悟を聞かせていただけました。これにて質問を終わりたいと思います。ありがとうございました」
「海軍も陸軍も猫被ってるな」
「荻原議員との出来レースだろ」
「我が国の軍備がイギリスの半分程度とはけしからんという頭のおかしい奴もいるからな」
「せっかく、日清戦争も日露戦争もなく第1次世界大戦も無いんだ。このまま平和がいいな」
「植民地で火を噴くと思うが、我が国はほぼ無関係だし」
「台湾はちょっと惜しいと思うが、満州も半島も無いのは楽でいい」
軍縮で区別される範囲が大雑把すぎるのですがこれで苦しむ軍部も書こうかなと。
量は国際情勢が覇権主義剥き出しではないので、この程度で。
モスクワ大公国の陸軍人員数は制限を超えているので、会議から撤収。
ドイツ帝国海軍は狭いバルト海中心だし、戦艦で守るような海外領土が無いという理由でイギリスの半分。事実なので言い返せず。
>排水量は建造排水量
建造技術勝負でインチキは出来ない。申告で誤魔化せるのだが。
>不定期査察
軍備を突然査察されるという大問題に。
地雷も機雷もどこに隠してあるかわからないからね。
>捕虜の取り扱いに苦情を申し立てることが出来ない。
言い換えれば、何されても文句言うなよ。
次回更新 8月04日 05:00です。