表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/35

緊張

24年8月29日 

ドイツ超弩級戦艦の艦名を変更。ドイツの戦艦は都市名ではなくて人名でした。

 昭和八年八月 八戸


「美味い。甘い。何個でもいける」

「食い過ぎるなよ」

「はい。わかっておりますが、美味しすぎて」


 私、東北大学准教授佐々木修吾は転生者である海軍中尉荒巻義一と八戸で一心不乱にウニを食べていた。

 前世でも三陸のウニは好物であった。殻を割ってすぐに食べるのが一番美味い。

 

「荒巻君。大湊でもウニは有るよね?」

「大湊のウニも美味しいですよ。でも人の財布だと美味しいがマシマシ!です」

「このやろ」


 こめかみグリグリの刑に処す。


「痛い痛い、冗談です。冗談」

「おう、わかればいい。でだ、何故通信科に入った」

「電波ですよ電波。わかるでしょ」

「まだ中尉だろ」

「それでも八木アンテナの指向性を指摘し稟議書を何枚か書いたんですよ。そうしたら偉いさんの目にとまって、方向探知機の開発をやれと。大湊要港部なのは距離があるので遠距離探知試験には都合が良いだろうと」

「ほう。指向性の強いアンテナなら上手くいくだろう。大湊である必要は無いがな。遠ざけられたのではないのか。それでもまあ上手くいってるではないか。後は発振側だな」

「やはり遠ざけられたのでしょうか。ウザかったですかね。かなりしつこく訴えましたから。それに電波の常時発振は闇夜の行灯とかって嫌われるんですよ」

「周波数帯が高ければ同じ周波数帯を受信できないと探知は無理だぞ。ラジオの同調ずれみたいなものだ」

「それを言っても理解しないんですよ。それにそこまでの高周波はまだ発振できません」

「今マグネトロン管を超えるスーパーマグネトロン管をやっている。マイクロ波の発振も出来る」

「佐々木さんは真空管の権威ですもんね」

 

 私は財閥系電気会社の経営者たちには好かれていないが、中小の真空管製造会社からは信頼されていた。大正から真空管と設備や工程の改良について助言し続けたからだ。財閥系電気会社は言うこと聞かなかったからな。今では財閥系電気会社製真空管よりも中小真空管製造会社の真空管は物が良かった。ほとんど欧米に近い製品水準まできている。





 佐々木と荒巻がウニを食っている頃。ヨーロッパでは緊張が高まっていた。

 モフィン紛争である。モスクワ大公国とフィンランドの紛争であった。

 フィンランドはロシア宮中反乱のどさくさに紛れて独立をした。それを旧主に戻れとばかりにいろいろ難癖を付けている。

 しかし、フィンランドはほとんどの国に承認されている。対してモスクワ大公国を承認しているのは10カ国程度に過ぎない。ドイツ帝国とフランスは双方を承認している国だ。

 春の雪解け前にモスクワ大公国がいつものように言い掛かりを付け交渉は当然決裂。いつもと違うのはモスクワ大公国が雪解け後の地面が固まった頃にフィンランド国境を侵した事だ。モスクワ大公国は反乱勢力の討伐という口実だった。

 ドイツとフランスが黙視する中、イギリスがフィンランドへの支援を開始。フィンランドへ兵器供与の他、本国艦隊の一部をバルト海に派遣。モスクワ大公国向け商船の臨検まで始める。通商破壊をしようとしていたモスクワ大公国海軍は身動き取れなくなってしまう。旧式戦艦1隻と巡洋艦数隻に駆逐艦10隻程度のモスクワ大公国海軍ではイギリス本国艦隊の一部とは言え最新鋭のR級戦艦2隻を主力とした派遣部隊に対抗できるわけもない。

 このイギリス本国艦隊の一部をバルト海にしたことでドイツが文句を言った。要約するとバルト海はドイツの内海であると。

 イギリスとしてはデンマーク海峡通過を事前に通告するなどしてデンマークを無視して通過したわけではないしバルト海の公海海面しか航行していない。

 ドイツ帝国は目の前で勝手なことをするなと言いたいのだ。

 まだドイツと揉めたくないイギリスはサンクトペテルブルクを目指し進路を取るがフィンランド湾で百八十度回頭。モスクワ大公国を脅すにとどまった。

 この時、ドイツ海軍の新鋭超超弩級戦艦オレインブルク級オレインブルクと同シュタインの2隻と護衛部隊が併走。ただどちらも落ち着いた航行を行っていた。





-------------------------------

ちょっと解説

日清日露にWW1も無いこの世界。そしてソ連も無い。革命の遙か前にロシア宮中反乱が起きてしまったから共産党自体があるかどうか怪しい。


1933年 昭和8年時点 推測

ソ連比でとても弱く小さいモスクワ大公国。

モスクワ大公国の現状。

人口4,000万人。

バルト3国は無い。ウクライナは無い。それらと南部イスラム圏はロシア宮中反乱のどさくさで独立を宣言。現在も各地で紛争は収まらず地上戦が時々起こる。いろいろな国が新装備をこっそりテストしている。極少数であれば目立たないし、中国よりも圧倒的に近い。ここでテストされ中華内乱で実用に向けた耐久試験が行われる。

東ロシア帝国との境界線(どちらも国境とは認めていない)はエニセイ川であるが、どちらも実効性を持たせるだけの能力が無く周辺住民は好き勝手にエニセイ川を使っている。


普仏戦争で疲弊したがWW1が無いために何とか立ち直ったフランス。もちろん財源は植民地。

WW1が無いのでアルザスロレーヌの帰属はドイツのまま。そのためフランスの工業力は史実よりもショボい。

WW1が無いので疲弊していないドイツ帝国。キール運河は俺の物。通行料は高いぜ。もちろんドイツ船籍船は格安。


ヨーロッパの主要国は疲弊していない。ドイツ帝国は軍事国家に近いし、フランスはフランス。イギリスはまだ世界最大の帝国をなんとか維持。

ヨーロッパは基本的にWW1前の状態に近い。


アメリカはWW1が発生しなかったため、ヨーロッパの金がアメリカに流れることが無く経済規模は史実のように膨れ上がっていない。

それなりの規模ではあるが金融力ではイギリスに勝てない。生産力では世界最強になりつつある。


日米関係は悪くない。

悪化させた原因の一つである海外移民がロシア宮中反乱の影響で日本が大陸進出を諦め人員(移民を含む)と資金を東北と北海道開発に回したため。

海外移民の数はロシア宮中反乱以降激減し、海外移民はロシア宮中反乱後になると自主的に海外を目指した人のみで極少数。




軍事技術 1933年 昭和8年時点出の推測

史実比で概ね5年から10年くらい遅れています。


飛行機

発達が遅い。WW1での驚異的な進歩が無いせい。1933年時点で全金属製単葉機は少ない。複葉機全盛。異色なのは1930年に唯一実用化されているユンカースの全金属製単葉機とポーランドのP.1。

エンジンは500馬力級が主流。最大勢力はブリストル・ジュピター。

イギリス・ドイツ・アメリカで次々と700馬力~800馬力級高性能エンジンが出現を始めるのは1935年頃。

P&W R-1340やライトR-1820の出現が1936年。DB600やユモ211は1938年。

ボーイング社は設立された。

ブリストル社は2年前。

フォッカー社はドイツ。

Bf109はまだ影も形も



戦車

試行錯誤の時代。思想的には歩兵直協が主流で対装甲車両など考えられていない。エンジン性能が航空機同様低く機動性の高い大型車両を作れないため。移動砲台としての戦車ならシャール2Cなどがある。

イギリスは英国面なので。

アメリカでクリスティーさんがクリスティー式戦車を開発した頃。



WW1が無いので、いろいろ設計思考が遅れている。

ドイツ高海艦隊は存在。

八八艦隊思想は無く北海道から沖縄・小笠原を守るための高速戦艦主体で構成される四四艦隊が出現。

高速弱装甲の巡洋戦艦多数のイギリス海軍。そろそろ見直されているはずですが英国面なので。



戦術思想

いろいろ大規模な戦争が無いのでかなり遅れているはず。


イギリスは英国面なので。

これで済ませば無問題(もうまんたい)


三陸のウニは今の時期凄く美味しいんですよ。生け簀から出したばかりのウニの殻を割ってスプーンですするの最高。


5話連続で投稿しましたが、次回は7月31日 05:00です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ