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一郎の語る日本&世界 2000年から2020年

最終話です。お付き合いいただきありがとうございます。

地震の表現があります。


一部で山田一郎が抜けていましたので書き加えました。10月30日9時。

 現職一郎です。コンピューターソフトの西暦2000年問題も無事にこなし、21世紀になりました。


 21世紀と言えば大災害の世紀。

 スマトラ島沖地震や東日本大震災が起こりました。対策はしつこいほど転生者全員が訴えており、国際地震観測システムや国際津波観測警報システムが張り巡らされています。

 一部では気象庁の予算を減らそうという動きもありましたが、総理大事に直接面会する権利という伝家の宝刀を抜いての抗議にそういう奴らは動きを封じ込められました。俺がやったんですけれどね。


 また重大事案の一つである原子力発電所です。

 これは俺、現職一郎と山田一郎と平仮名いちろーがかなり厳しく訴えました。前世でどれだけの惨状になったか。また日本経済の足をどれだけ引っ張っているかも。俺たちも頑張って甘くさせないよう見張りました。それにより、高さ20メートルの津波に主要設備が侵襲されないという規定を作り上げたそうです。主要設備には非常用発電機と燃料タンクも含まれています。また外部電源も三系統を別の電力回線から引き入れる事も明記されました。外部電源全て断絶の時でも1週間は非常用電源で持たせることも規定になりました。非常用発電機も原子炉1基当たり三台を備える事と。他国の転生者も支持をし、これは世界共通の規制として採用されています。良きかな。とても金が掛かるので反対の声も大きかったのですが、安全の一声と責任取れるのか、で黙らせました。

 実際、国内でも安全のための付帯設備に金が掛かりかなりのコスト高になり反対する声も大きかったのですが、災害時に全て責任を取るならやって見ろと言われてすごすごと引き下がったそうです。


 その時の総理の啖呵が

「兆円単位の賠償金と有害核物質が半減期を迎えるまでおそらく永遠に続く対策事業と補償。会社を潰して逃げようとしても、お前達の会社にも役員にも責任を取らせて賠償金はケツの毛まで毟り取るし、株主にもビタ一文渡さん法律も作る。会社の金は全部補償と対策事業に回せるようにな。それでもいいならやってみろ」と。

 台本は平仮名いちろーと山田一郎と現職一郎である俺で作ったんですけれども。東日本大震災を知っているから絶対に手抜きはさせない気持ちで。総理はさらに過激に言ってくれたそうです。

 原発推進派の大曽根という国会議員がそれでは高価になりすぎるとしつこかったんですが、軍令部総長に出張って貰いかたを付けたそうです。大曽根議員は海軍出身だそうです。大曽根議員はこの件で大企業からの支援を失い他の議員からも距離を置かれ与党の重職や大臣に就けず七十を待たずに政界から去って行ったそうな。





2004年 スマトラ島沖地震

 起こりました。年末としか記憶が無く正確な日はみんな覚えていない。国際津波観測警報システムが有効性を発揮しましたが、肝心の地元住民や観光客が津波の恐ろしさを教えられた知識として知ってはいても実感として知らない状態だったので、前世よりも被害は少なかったのですがそれでも10万人を越える犠牲者を出しています。避難した人も多かったのですが間に合わなかった人も多かったのでしょう。






2011年3月11日 東日本大震災

 やはり起こりました。

 この時間に起きると言ってしまうと、次からも教えろとなってしまいます。それは避けなければいけないと、起きる可能性が有る事だけを徹底しました。南海トラフ地震も絡めてキャンペーンを張りました。

 犠牲者は多数出ました。1万人強です。

 それでも前世に較べてそれだけで済んだのは事前のキャンペーンと各地での津波教育のおかげでしょう。勿論、俺たちの知識に有った事柄も参考として対策に盛り込まれています。


 とにかく逃げる。三陸各地に言い伝えであった「地震が来たら逃げる」*を、徹底的に。

 俺たちが率先して政府に伝えたのは、学校や職場・地域で議論なんかしている暇があったら逃げろ。訓示や議論なんか始めた奴は【無視して逃げろ】*「大丈夫だ」は信用するな*。

 この3*を徹底して貰えるように頑張りました。


 また釜石港の巨大防波堤もさらに嵩上げし波高12メートルに耐えられる設計としました。壁しか見えんと不評でした。予算は5割増しになったけれど、いざという時に役に立つためのものなので反対を抑え施工に踏み切りました。

 宮古なども巨大防波堤の整備をしようと思いましたが、三陸は観光も大きな産業なので巨大防波堤は反対も多いのでした。ですから逃げ道の確保を優先するような道路整備や避難先に出来るような公園整備を行いました。地域の防災拠点や避難先になるような建物も造りました。他の費用対効果が低いと思われる地域も同じです。残酷なようですが2011年3月11日までには間に合わないので。予算と施工能力という現実も立ちはだかります。俺たち以外は知りませんが中途半端な工事で終わるよりも逃げる場所を確保しようという姿勢です。釜石ばかりに金掛けてと罵られますが、現実です。 

 地震を感知するシステムが前世では予算削減で機能不十分な状態でしたが、予算は削減していません。むしろ増やしています。気象庁の予算も人員も十分確保し、不十分なデータで東京から遠隔地の予測を出すなどということもしていません。機材や職員も現地に十分な数を置いているので現地で出します。

 これにより当初から津波高さは10メートル以上と警報が出され、住民が避難を始めたのでした。

 それでも体の不自由な家族や知人を助けようとしたり、様々な事情で逃げ遅れてしまった方も居ます。

 馬鹿にして逃げなかった人は自業自得ですが、このような方も大勢居たのは悲しい出来事です。


 なお、火事場泥棒は徹底的に取り締まりました。30人近く逮捕されるとは思いませんでした。こんな時にこんな屑野郎が居ると思うと。警察と自衛隊はご苦労様です。


 懸念の原発ですが、女川原発は少し機材に異常が出て運転停止。漏れはありません。

 福島第1第2は、前世建設場所から少し離れた高い台地をあまり削らずに建設し、さらに建設時は必要ないといわれた防波堤もありましたので波も被らず発電所自体は無事でしたが、外部電源3回線の内2回線の鉄塔が倒壊するという事態で外部電源3回線が復旧するまで運転停止です。

 それよりもこの地震で中越沖地震での損傷復旧中だった柏崎刈羽原発の機材破損って。何やってんだか。






2020年

 中国で新型コロナが発生していない。

 発生するのだろうか。一応、アフリカやあの地域は何があるかわからないので衛生防疫面での監視を怠らないようにお願いしておく。

 おそらく最後のお願いだろう。







2021年1月 日本


 細々(こまごま)としたこともありましたが(災害に遭われた方にとっては細々ではないでしょうが)、最大懸念事項である東日本大震災が前世を元に作り出した想定よりも被害者が少なくホッとしました。さて、問題はこの後です。俺たちの知っているという知識上のアドバンテージが通用しません。

 政府に協力する転生者の死亡時期はまちまちですが、一番後でも2021年(令和3年)だった。意外な事にもう鬼籍に入っている怪しいサトーさんだ。俺、最後の一郎は交通事故で2020年。

 サトーさんも記憶があるのは新年早々だけといっていたので。もうわからない。

 日本の他の転生者も、他の国の転生者も2020年以降の記憶が無い。皆それまでに転生している。

 だから俺たちの物語はもう終わりだということになる。ただ俺たちへの支給金は最後まで出してくれるという。老後が安心。

 前世に較べると随分と平和な世界だ。良いことだと思うが、逆に言えば甘くぬるい世界だ。いつか外敵が現れたときに対抗できると良いが。

 俺たちをこの世界線に送った存在がなにを考えているのか知らないが、


             もう無いよね。



ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
完結お疲れさまでした。
会話の軽いノリが好きで楽しめました。 ちゃんと完結してくれてありがとう。
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