1952 世界と日本
書けたですよ。
各国の新兵器投入で激しくなる中華内戦。主犯はアメリカ合衆国とドイツ帝国。
イギリスもセンチュリオン戦車を鄭亮鑑を旗頭とする呉の後継者を名乗る重慶派(シンセン派を飲み込んだ)に渡してテストしている。
日本は兵器輸出を止め離れた。さすがに近すぎた。深く関わらないのは国是である。もっとも人気のあったのは重擲弾筒だけだった。小銃は反動の軽い扱いやすさよりも威力不足が問題とされ大陸で国内生産している7.92ミリモーゼル弾を扱える各小銃が主流となっている。日本製の各種機関銃は問題外とされていた。日本製機関銃の熟成度にも問題があったがMG34とZB26が優秀すぎた。
重擲弾筒は、手榴弾よりも長い射程、迫撃砲よりも軽く取り扱いが楽、という理由で人気がある。最近は使用弾薬も含め模倣品も出回っているようだ。
模倣品が出回るようになると日本としては意味も無くなったので武器輸出から手を引いた。医薬品もアメリカ合衆国とドイツ帝国から大量に入っており、そろそろ手を引こうかと考えている。
1952年時点での大陸勢力図は、中華民国、呉(後継者を名乗る重慶派)中華共和国(謎の勢力がやっと国際社会に名乗りを上げた。今まではころころ名前が変わっていた)が三大勢力で、事実上国土を三分している。
日本としてはもう2個くらい対抗できる勢力が出来て欲しいが難しいだろう。ならこのまま安定して欲しいとも思わない。中華共和国がいやすぎる。内陸部に封じ込めても、あそこは何か重要な資源の産地だったはずだと転生者がのたまった。資源の名前までは覚えていない転生者だった。なにより現時点ではその主義主張が危険であり封じ込めよりも消滅を願う日本だった。
その作品がやってきたのは昭和二十七年だった。
「白雪姫」ズムウォルト・ディスティニーが主体となって制作されたフルアニメーションだった。
作品は大ヒットした。そして衝撃を与えたのがフルカラー・フルアニメーションという手法だった。
「ぐぬぬ」
「うなってもどうにもならんぞ」
「わかっているけれども」
山田一郎がうなっている。会話相手は同僚の川村敬一だ。
「もっと早くやるはずだった」
「企画が通らないんだ。どうしようもないだろ」
「面白いのに」
「お前にとっては面白いんだろうが俺から見ても意味不明だ。それにどうやっても『羅生門』には勝てない」
「完全に違う分野の企画だしな。それにあの監督の次の作品はもっと凄い」
「そう思うか」
「絶対にな(七人の侍だし)」
「逆立ちしても勝てんな」
彼、山田一郎が手にしている企画書は人が乗り込んで動かす機械人形の漫画とそれを元にしたアニメーション制作の企画書だった。詰めが甘い。意味不明なもの作るな。金は回せん。酷い言われようだった。
山田一郎は一般企業に置いておくと未来知識でやらかす可能性が有り、奇抜なことをやらかしても目立たない映画会社に再就職させられていた。
映画界が盛況なこともあり、手掛けたいくつかの作品はヒットして会社の収益を上積みしている。
山田一郎が有るだろうなという動きがあった。
白雪姫に刺激された漫画家達が作風を変化させてきた。
キタコレと喜びながら、山田は時代が進むのを待つ。T先生I先生N先生M先生お願いします。早く超有名になってロボット物と宇宙物の企画が通るような時代に。
都合の良い事に数年前からアメリカやヨーロッパのSF小説が多数翻訳されそこそこ売れている。
自分で生み出せないから人任せだ。しかし、企画くらいは話してみるか?映画会社で企画やっていると言えば会ってくれるだろう。
そうだトキワ荘に行こう。(まだ居ません。この世界線だと3年後くらいです)
「居ないじゃん」
「誰がだ」
「将来の金の卵達だ」
「なんで知っている?」
「知らない方がいいぞ。今聞いたことは忘れとけ」
「やばいのか」
「俺の存在が国家機密扱いだな」
「言っていいのか」
「誰も信じないだろ。とにかく詮索するな。それか一蓮托生になれ」
「わかった。詮索しない。平穏が一番だ」
「俺も数年前まではそうだったよ」
「どんだけやばいんだ」
「帰るか。今日のことは忘れよう」
「ああ」
日本は平和だった。
同年秋 ワシントン 某白い家 日米首脳会議
「転生者ですと?」
「そうです。何か時代にそぐわない技術や思考を持った人間のことです。お国でも保護調査対象なのでは」
「日本もですか」
「知っておいでか」
「実は前大統領が転生者という事は引き継ぎで知らされました。そして最重要事項として秘匿されていることも」
「公になれば手に入れようと群がるでしょうからな」
「それで今回の要件は転生者に関わることですか」
「その通りです」
・・・・・・・・・・・
・・・・・
「共産主義ですか」
「社会がある程度熟成されればそんなに危険な思想でも無いと言っています」
「今は危険なのですな」
「彼らはそう言っています」
「熟成度が足りないと?」
「選挙制度や教育水準に情報伝達能力とその制御技術など、かなり足りないようです。一番の問題は富の偏在や集中とそれによってもたらされる国家間の経済格差や大衆の貧困問題だと」
「…それは。要するに当面は危険な思想であるということですな」
「全くもってその通りです」
会議の結果は六割程度が発表された。四割は共産主義に関してなので秘密であった。
日本はいそうな国に声を掛け首脳会議が開催されることとなった。
1953年夏のこと。最初の会議はロンドンで行われた。
G5の始まりである。
日本
アメリカ合衆国
ドイツ帝国
イギリス
東ロシア帝国
以上の5カ国が転生者を認識し国家として保護(利用)している大国であった。
他にも何カ国か有ったが、小国であり会議に混ぜると何故その国がと疑問になるだろうから、経済的・国土的に大きい5カ国が中心となった。
次回更新 10月13日 05:00です。
次回もどうなるやら。本編間に合うといいな。