巻き込むな
9月04日
共産党がまだ無い世界で「社会共産党」と書いてしまったのを「社会労働党」に変更。
昭和二十年八月 宮中
「回避するすべは無いのか」
「現状の国際情勢では無理にございます」
「そうであるか」
「同盟の盟約に従い海外派兵をいたします」
「出さないとどうなるか」
「出さないためには同盟を破棄したり要請を拒否すれば良いのですが、我が国は国際的信用を失うでしょう」
「・・・国際的信用を失うのは好ましくない」
同 国会議事堂
「日英同盟に従い我が国はイギリス支援のために軍事力を行使する」
ざわつく議場。
「議長」
「沢田君」
「社会労働党の沢田です。総理大臣にお聞かせ願いたいのは、我が国がどこまで踏み込むかです。同盟関係上、要請があれば軍事力行使もやむを得ないのは当然であります。ただ、どこまで関与するのかをお聞かせ願いたい」
「議長」
「内閣総理大臣」
「質問にお答えしたいが、情勢は流動的であり区切ってしまうと同盟関係によろしいとも思えません。よって、ドイツとイギリスが講和する時点までとさせていただく」
「議長」
「沢田君」
「講和する時点という区切りがあるのは理解できました。ではどの程度の兵力を出すのか。お聞かせ願いたい」
「規模につきましては、軍の専管事項であり私は軍からの報告を信じるのみであります」
「議長」
「沢田君」
「現状で答えられる範囲でお答えいただきありがとうございます。これにて質問を終わります」
「議長」
「鳥山君」
「民主憲政党の鳥山です。日英同盟に基づく派兵とおっしゃいますが、そもそも戦争になったのはイギリスとフランスがドイツ帝国に難癖を付け続けたことではないでしょうか。いくらドイツ帝国から宣戦布告されたとはいえ、派兵しても良いものでしょうか」
「議長」
「内閣総理大臣」
「今回は国家間の条約に基づく派兵であります。理由はいかにせよ派兵しないのは我が国の国際的な信用を落とします。鳥山議員は国際的信用を落としても派兵するなと言われるのでしょうか」
「議長」
「鳥山君」
「私が言っているのは、戦争のきっかけを作ったのはイギリスとフランスだと言いたいので・・・」
引っ込め鳥頭!
議場から誰かのヤジが飛ぶ。
鳥山議員は自分にとって気持ち良く都合の良い発言が否定されたり都合が悪くなると無かったことにして次の自分にとって気持ちよく都合の良い発言をする事で有名であった。地元大物有力者の子供でなかったらとても国会議員になれたとは思えないというのが周囲の評価だった。
「・・・・・」
「・・・・・・・・・」
議会は続く。
同 大本営
大本営の設営は制度が始まって以来の事。要するに初めてである。
「何をすれば良いのだ」
「陸海の調整だと思います」
「調整だけではないだろう。陸海の意思が違わないようにだな」
集められた軍人も右往左往している。
昭和二十年九月 横須賀
「やれやれ、ヨーロッパか」
「士官候補生時代に行っただけですな」
「俺の時は石炭炊きでな。経験せよと言われて大変だった。それまでも練習艦で5分程度はやったが、30分はまいった。それ以降釜焚きといって馬鹿にしないようになった」
「私もです。アレはきつい」
同 呉
「全艦。蒸気上がりました。出航いつでもよろし」
「定めに従い出航せよ」
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遣英艦隊 旗艦 大和
第一艦隊
第一戦隊 大和 武蔵
第二戦隊 長門 陸奥
第六戦隊 妙高 那智 羽黒 足柄
第九戦隊 大井 北上
第二水雷戦隊 阿賀野
第六駆逐隊 陽炎 不知火 黒潮 親潮
第七駆逐隊 早潮 夏潮 初風 雪風
第三駆逐隊 白露 時雨 村雨 夕立
第二艦隊
第一航空戦隊 飛龍 蒼龍 天霧 狭霧
第二航空戦隊 翔鶴 瑞鶴 夕霧 朧
第三戦隊 金剛 比叡
第七戦隊 高雄 鳥海 愛宕 摩耶
第三水雷戦隊 矢矧
第八駆逐隊 天津風 時津風 浦風 磯風
第九駆逐隊 浜風 谷風 野分 嵐
第四駆逐隊 海風 山風 江風 涼風
第七艦隊
第八戦隊 青葉 加古
第四航空戦隊 龍襄 吹雪
第十四戦隊 長良 夕月 望月
第五海防隊 睦月 如月 弥生 卯月
第六海防隊 皐月 水無月 文月 長月
第十五戦隊 多摩 神風 早風
第三海防隊 朝風 春風 朝凪 夕凪
第四海防隊 松風 旗風 追風 疾風
補給部隊
補給艦 間宮 伊良湖
工作艦 明石
病院船 氷川丸(徴用船)
給油艦 洲崎 高崎
給兵艦 樫野
輸送船 6隻(徴用船)
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海軍主力艦艇の6割を出すという決断がされた。これは一気にドイツ海軍を潰し講和に近づけようという意思の表れでもあった。かなりの数が新型艦で占められ期待の大きさを物語っている。
第七艦隊は臨時編成の対潜部隊である。
海防隊各艦はオホーツク海や千島周辺での16号海防艦の運用実績と新装備の試験運用結果により、さらに対潜能力と航洋性を進化させている。
海防艦の名前は駆逐艦時代のままだが、これは対外的に番号呼びはちょっとということになって派遣終了次第艦名は変更される。既存の海防艦も含め変更される。今のところ、島の名前が有力である、
派遣艦隊は補給部隊まで含め全艦に対水上電探と対空電探を装備。聴音機も装備されている。戦闘艦艇は水中探針儀も最新の二式水中探針儀を装備している。
それほどまでに潜水艦には気をつけている。荒巻中佐の意見が軍令部総長経由で尊重されていた。これは演習弾を用いた演習で潜水艦にやられ放題になったことから信じられた。従来のやり方と装備では潜水艦を発見できず主力艦が雷撃されてしまったからだ。
それ以降は対潜兵器の改良と対潜戦術の研究が進んだ。
ひょっとしたら世界最強の対潜部隊かもしれない。
次回更新 9月04日 05:00です。
士官候補生に釜焚き体験をさせるのは田中一郎の企みです。兵機合一を目指したものの、体験学習で苦労をわからせるに留まった。それでも機関部員を大事にするという精神は生まれました。
自動給炭機が付いている軍艦はあったんでしょうか。一部の商船と蒸気機関車に付いていたと思います。
大和級
肉を切らせて命を断つ思想で建造された。多くの戦艦が交戦距離2万前後に対して交戦距離1万5000以内を想定している。他国海軍や軍事関係者からは狂っていると評価される。
そのために舷側装甲は厚く最大450ミリもある。傾斜装甲であり垂直相当500ミリ以上と言われる。装甲板は徐々に厚さを減らしながらも艦底まで伸びており、水中防御も堅い。水平装甲も最大150ミリと十分な厚さを持っている。
また逃げるだろう敵に追いつくべく日本海軍最強の19万馬力を発揮する機関を持つ。それにより条約型3万4500トンの船体を34ノットまで加速させる。
ただ、高速重装甲の代償として主砲の門数は少ない。40.6センチ砲連装3基6門である。長門と同じ砲であるが主砲弾の改良により、より強力になっている。つまり砲力最強は8門装備の長門になる。