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1943 ドイツ 

 ドイツ軍はモスクワ大公国軍の効果的な反撃を受けないように慎重に進撃している。基本に忠実であった。

 主攻線はミンスク方面と見せかけて、戦略目的はバルト3国解放だった。バルト3国解放が成功すれば、ミンスクは目指さなくても良い。そして2正面作戦だが相手戦力を考え可能として実行された。

 他の国から見ればただの口実だと見えるが、本当に戦略目的と作戦行動が合致していた。どこかで上手くいきすぎると、もう少し進みたくなるのが常だが、この時点で本国のコントロールは完璧だった。

 モスクワ大公国軍はわかっていてもミンスクを目指される以上、ミンスク防衛に多大な戦力を投入しなければいけなかった。バルト3国解放がなってもミンスクが懲罰的に攻撃を受け占領される可能性が有った。ミンスクはモスクワ大公国にとって貴重な重工業地域であり、占領はなんとしても防ぎたかった。

 バルト3国方面の兵力が増えることなく戦闘で減らされ、バルト3国が徐々に解放されていく。






 フランスはドイツ国境の警戒を通常以上に厳しくしていた。ドイツはバルト3国解放という名目でベラルーシに押し入り、同時にバルト3国を解放する作戦を行っている。ドイツの戦力は東に集中しているし西は強化もしていない。

 それでもドイツ帝国を信用していなかった。アルザスロレーヌの恨みは深い。





 1943年 初夏 ベルリン


「ヘス君。バルト3国解放という目的は達成されるな」

「完璧です」

「よろしい。軍も完璧だった。何も言うことはない」

「ベラルーシはいかがされますか」

「ミンスクを少し叩いて撤退だ。初期目標を変えない。そこは軍にも徹底させよう」

「そのまま占領されないので?」

「占領か。意味は無いな。モスクワ大公国にドイツ帝国の恐ろしさを刻みつければ良い」

「しかし、目標が見えています」

「まあそうなるな。だが、大戦略を途中で変更してはいけない。特に勝っている場合は」

「そういうものでしょうか」

「そういうものだ」




 ドイツ帝国によりバルト3国の解放は成功した。ろくな航空戦力の無いモスクワ大公国軍は制空権が取れない。やられ放題になった。

 ろくな航空戦力が無いのは、欧米から国家として承認されていないせいだった。入ってくるのは最新でもドイツの1世代前の技術。

 エンジンはBMW-6が最新鋭であるがモスクワ大公国の技術力では離昇出力で600馬力までしか出せなかった。

 最大で600馬力では出来る機体もそれなりで、ドイツ帝国空軍主力戦闘機Me109cには対抗できなかった。

 キルレシオは1:10以上で墜とされたという。だが、ここでMe109最高の声が出来上がってしまった。確かに現時点での戦術戦闘機としてみれば上等であった。

 前線で使う戦術爆撃機もJu87最高の声がある。

 ただもどちらも陸戦直協型戦術機であって、その航続距離(滞空時間)を活かして戦術の自由度を増すことの出来る戦略級作戦機ではなかった。大陸軍国であるドイツの弊害が出ているのだろう。

 ヒトラーの中の人はそれを理解しているが、航続距離の長い作戦機を作らせようとするも現状で十分とかBf110がやはり出来てしまうとか、せめて1500キロの航続距離を持つ単発戦闘機を作らせようとしても上手くいかない。中の人は歴史の修正力かと思っている。そして俺は最後悲惨なのだなと。それなら暴れてやろうとも。



 

 1943年 初冬 ベルリン


「デーニッツ君。ウンターゼーボートの整備はどうかな」

「順調ですが、首相閣下。本気なのですね」

「イギリスとフランスにはとことん嫌になった」

「事あるごとに文句を言い、アルザスロレーヌを返せと良い、キール運河利用料を下げろと言い、最近ではあからさまな兵力増強ですか。しかも国境線に」

「私がバルト3国解放で止めると言ったのにな。ミンスクはやり過ぎだと思うが」

「アレは陸軍の暴走ですな」

「なんで軍事施設と生産施設だけではなく議事堂や首相府の他、公共施設まで攻撃したかな」

「ミンスクの民間人死者が1万人を超えたと、ベラルーシとモスクワ大公国が共同声明を出しましたね」

「本当にそんなに出たのか撤退してしまったから検証も出来ないが、陸軍の調査によると5000まではいかないが3000は確実ということだ」

「1000名程度なら流れ弾で済みますが」

「3000名ともなるとな。しかし、バルト3国では侵略されたときに数万人の民間人が犠牲になっている。これは国際社会に発表している。認めないのはモスクワ大公国とベラルーシだけだ」

「それでも我が国を悪者にしてきますな。イギリスとフランスは。バルト3国から撤兵せよなど、馬鹿かと思います」

「うん。そんなことをすればまたモスクワ大公国に占領される。こちらを悪者にしようと言いたいだけだ。もう避けられないだろう。国民感情も随分悪化してしまった」

「いつ頃ですか」

「雪解けの頃かな。空軍に改変した陸軍航空隊の整備が終わるのがその頃だ。陸軍も随分近代化できる。船は大型艦は時間がな。緊急で整備可能なのがウンターゼーボートしかない」

「海軍整備に時間が掛かるのはわかります。しかし、イギリスとフランスは先に手を出してきませんか」

「名目がない。我が国は散々悪く言われているし内政干渉までしてくるから反撃しても許されるだろう。だが奴らは絶対先に手を出せない」

「ならよろしいのですが」

「うむ。春までは回避には努力するが国民感情が暴発しないように祈りたい」

「市内でデモや暴動が増えました」

「そうだな。デーニッツ君、良い時間であった」

「はっ、こちらこそ。それでは失礼します」



 同日午後


「マンシュタイン元帥、シュリーフェン・プランはダメだ」

「やはりダメですか」

「君はわかっているのだろうに、何故推してくる」

「参謀本部の馬鹿どもが」

「ミンスクで参謀の馬鹿どもがやらかしたのがわかって、相当数入れ替えただろう」

「純粋培養の馬鹿が多いのです。首相閣下」

「純粋培養の馬鹿って、言い切るな」

「奴ら戦争計画は得意ですが、民意や国際関係や世界情勢を考えません」

「それは・・・」 (日本の参謀と同じか?)

「ですから『ブローニュの森でキャンプ』作戦を実行します」

「酷い作戦名だな」

「まさかそのものを指すとも思われないでしょう」

「わかった。そちらで実行するように準備を」

「了解しました。戦車が少し足りないので予算が欲しいのです」

「空軍に相当取られているが、なんとかする」

「航空機の傘がなければ失敗しますから仕方ないですな」

「わかってくれてうれしいよ」



相互不理解による戦争勃発になるのかな。

フランスの欲張りが主原因かと。


次回更新 8月25日 05:00です。

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[一言] 汚腐乱酸やなあ
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