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昭和十五年 3代目は いちろー

 俺こと怪しいサトーもついに退役を迎える。ありがたいことに営門少将としてくれるそうだ。

 問題は後継者だが海軍の荒巻だけでは心許ない。陸軍内にいないか探した。

 上手く隠れていたものだ。航空本部とはな。そういうところなら転生者の気配を感じられるはずだったが、無駄に隠れ方が上手かった。

 尻尾を出したのは史実なら九七戦になるだろうキ27のエンジンを試験運転し始めたばかりのハ26(瑞星)にしようとしやがったからだ。当然中島から文句も出る。

 そこで読めた。こいつ高速化を狙ってやがると。転生者臭いぞ。




 

 わたくし鈴木一郎です。怪しい名前ですが本名です。全国の鈴木一郎様ゴメンナサイ。ちなみに野球は右打者です。大会では出ると負けの学校でしたが。

 佐藤砲兵大佐からのいきなりの面会。驚きました。大尉にすぎない自分に教育総監部の大佐からです。驚きますよ。そして面会でバレたんですよ。


「君。凄い九七戦を作ろうとしていないか」

「引込脚で13ミリ機銃なら強力な戦闘機になります」

「ハ26を搭載すると何になる」

「隼ですね(~_~;) シマツター」

「そっかー。隼か。キ43か」

「正気(鍾馗)でいいかなと」(開き直り)

「君は自分が生きていた時代を知っているね」

「ア、ハイ。令和元年没。享年95歳です」

「先輩ですか」

「佐藤大佐は」

「令和3年。流行病でね。新型コロナというのだが65歳。つまりあなたよりも若造でした」

「いえいえ、今は私の方が若いですから」

「それなら、今のままで」

「その方が不自然ではないですね」

「鈴木大尉は随分言葉遣いが若いですが、本当に戦前生まれなのですか」

「ネットはアナログ電話回線を使う電話モデム時代からやっておりまして、33kbpsとかほんとに遅いのですよ。戦前生まれですかと驚かれる事も多かったですね」


・・・・・・


「では、九七戦もどきだが。どうするつもりだ」

「隼ですね。これでも最後まで整備に携わった兵ですよ」

「陸軍航空兵ですか」

「整備兵ですよ」

「終戦はどちらで」

「九州です」

「陸軍は嫌ではなかったのですか」

「そりゃあ嫌でした。いじめとしごきがね。しごきはまだいい。やり過ぎなければ兵隊の訓練ですから厳しいのは当然。しかし、いじめはたまらん。でも、もう特攻を見送るのは勘弁して欲しい。今世は平和ですが、またならないとも限らない。特攻などしない戦いにもって行きたかった」

「私はその時代に生きていなかったので、その件については全く口出しが出来ません。しかし、特攻など無い、万歳突撃も無い戦いというのは目指すところです。そのために軍人になりました」

「そうですか。上手くいっていますか」

「参謀達の意識改革は結構上手くいったと思います。少なくとも参謀主導の玉砕命令や万歳突撃は無いでしょう」

「おお、それは」

「前世の歴史はともかく、私は前世の装備品には詳しくないのですよ。概要を知っているくらい。砲兵大佐などやっていますが、兵器に関しては今世での知識の方が多いくらい。鈴木氏には装備品の中でも航空機の高度化をやってもらいたいのです」

「しかし、そこまでの権限はありません」

「ご心配なく。近いうちに教育総監部と参謀本部経由で参謀総長の方からなにがしかのてこ入れが有ると思います。参謀本部入りもありますか。大尉になって3年なら少佐も問題ないでしょう」

「早いですよ」

「いないわけではありません。陸軍内で教育総監部と参謀総長に目を掛けられていれば怖い物は有りませんよ。天保銭がブツブツ言うくらいです」

「天保銭か。憂鬱になりそうです」

「前世ほどの威力は無いので、嫌がらせが関の山ですよ」

「それなら出来そうですね」

「期待しています。良かったですよ。退役前に引き継ぎが出来て」

「退役なのですか」

「3ヶ月後ですね。営門少将です」

「将官ですか。立派なものです。極少数じゃないですか」

「これも前世知識あればこそでお恥ずかしい」

「いえいえ」

「いあいあ」

「いあいあ?」

「すまんです」





 無事?サトーから引き継いだ怪しい【いちろー】こと鈴木一郎です。平仮名だよ。カタカナなど恐れ多い。

 驚きの少佐です。意味わからん。しかも恐れ多くも参謀総長との面談つき。だいたいわかった。前世現役軍人であった事から、さらに現実でどうだったかを語った。参謀総長殿は恐れおのいておられました。

 幸い勤務先は航空本部のままで、陰で言う奴はいるが権限は増した。

 今世は前世と相当違います。どうも怪しいシリーズ初代の田中一郎氏が相当頑張ったみたいで、陸軍内のいじめや過度のしごきが相当軽減されております。驚くことに海軍も。

 対外戦争が無かったせいで過度の精神論も見られません。これも白虎隊や西郷さんを説得した初代怪しい一郎の成果らしいです。そういえば教育勅語が大部違う。肩肘張っていないしわかりやすいし、内容も優しい。やりやすいと思っていたのはこのせいでしたか。過去の怪しい一郎シリーズよありがとう。おっとサトーはまだ生きているか。



 無事、キ27にハ26を採用させた。引っ込み脚も。防弾と消火は今の技術では不十分だが無いよりもだ。今の航空技術ならこれで世界一流の戦闘機になるだろう。

 ドイツはユモ211とDB601が出たと聞く。アレは運用上の制限や生産性の悪さでいろいろあるのでそのまま使ってくれるとありがたい。ついでだが永遠にBf109にしがみついてくれるとありがたい。メッサーシュミットは政治力を保てよ。Fw190を出すんじゃないぞ。BMWもタンクと組んでBMW801なんて出すなよ。


 完成したキ27は驚くべき性能だった。世界最高水準を行っている。これには中島も驚いた。発動機に寿など使って固定脚のままであったら小回りだけ効く低速戦闘機となり即、旧式化していただろう。中島で栄の実用化に努力していると聞くのでいずれはハ25かな。それよりもハ45だ。ちょっと大きくして無理の無いハ45だぞ。



キ27  一〇〇式戦闘機 隼

全幅    10.5メートル

全長     8.7メートル

全高     3.3メートル

自重     1.8トン

全備重量   2.4トン

発動機    ハ26  850馬力

速度     493キロ/3000メートル

航続距離   1300キロ(正規)1900キロ(空輸)

武装     ブローニングAN/M2 12,7ミリ機関銃2丁(機首)

        装弾数200発

       爆弾 25キロ✕4発または100キロ1発 胴体下 


 残念ながら落下増漕という思想が無く、空輸時は胴体下に固定タンクを取り付け運用する。爆弾装備位置は胴体下で固定タンクと排他利用であり空輸時には必要なしという考えであった。

 発動機は1速過給器でまだ1段2速過給器が無い。出来れば排気か2段が欲しい。

 ブローニングAN/M2は正規にライセンス契約を結んだので国産化する。今は購入品。マ弾とかこっそり呟いておいたので開発はしているだろう。空気信管もな。

 喜んだのもつかの間、ドイツはBf109Cが出た。イギリスはハリケーンの配備が始まった。アメリカはP-36が出た。 


 Bf-109C

 速度 470キロ

 武装 7.92ミリ機関銃2丁

 ハリケーンMk-1

 速度 500キロ

 武装 7.7ミリ機関銃8丁


 Bf-109Cはかなりの高機動戦闘機だと記憶にある。2年先か早ければ来年にはE型登場か。機動性がいいのはEとFまでで、その後は機動性が悪くなるばかりなので戦闘機としてはどうかと思うが。

 しかしハリケーンのこの変態武装なんとかならないか。防弾優秀なら撃墜されないかもしれないが、弾痕多数で修理が大変だろう。おまけに穴塞ぎしてかなり性能低下する。使わない方が良い機体も多数出るだろう。恐ろしき英国面。そこまで深読みしているのか。

 アメリカのP-36は一〇〇式とほぼ同じ性能である。  

 ハ26もまだ200馬力は向上の余地がある。一〇〇式の性能はまだ上がるから、その間に欧米に後れを取らないようにしないと。

 

 だが、ヨーロッパの緊張により急速に性能が向上するのだった。

やや小さい隼になりました。金色というよりも黄色は1機あるかな?試験機として。

ブローニングAN/M2は正規にライセンス契約しました。


次回更新 8月14日 05:00です。

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