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Are You Happy ?

作者: 和の心

『お互い幸せになろうね』


 その連絡を最後に僕は呪われてしまった。


 順風に行っていると思っていたのは僕だけのようで、それに気付けないマヌケには当然の結果だったのかもしれない。


 アナタは悪くないと言ったけど、そんなの信じる事が出来る訳もなく。自分に落ち度があったから、君は僕を振ったのだろう。


「別れたい」


 唐突に言われた時、聞き返した僕の声はあまりにも滑稽で、聞き間違えだと祈りながら二度、三度、繰り返し聞き返すその間の頭の中は真っ白だった。


 泣き出す君を慰めながら、最後まで優しい彼氏を取り繕って、「うん、仕方ないよね」「いや、大丈夫」「僕も悪かったから」なんて言ってみたりして、本当は自分が泣きたいくせに無理矢理物分かりの良い彼氏面をした。


 いくら優しく接したって、そこからの逆転なんてものはなく。


「元の関係に戻るだけ」「でも連絡はしばらくしないで欲しい」「笑い話に出来るようになったらまた会おう」「バイバイ」と言う君に、【最期】の意味で「バイバイ」と言った。


結局、僕の方は涙が一粒も出せなかった。

 

 どれだけ時間が経っても心は君に支配されていて、SNSを覗く度に君を探して、たまに見つけて楽しそうに笑う君を見て傷つくアホな自分。


 写真じゃ見えないけど、楽しそうな表情の裏で寂しいって思っているはずだと妄想するしかなくて、あれだけ優しいフリしたくせに、自分だけ傷ついている事に憤っているのが恥ずかしくなった。


 そう気付いているのに妄想は止められなくて、想いが納まる事もなくて、笑い話も出来ないくせに君に連絡してしまう。


 『久しぶり』のメッセージに意外と早く返信が来る。


 返信すら来ないかもと思っていたから浮かれたけど、そんなもの直ぐに撃ち落されてしまい、ご飯を誘った瞬間から返信の歯切れが悪くなったのを感じる。


 返信の内容に気を遣われている事を重々承知で、それでも言うしかなかった。


『復縁したい』


 振られてから二か月経った。何か変わった訳ではない。ただ自分の妄想を押し付けたくて、無理矢理でも現実にしたくて、苦しみから抜け出したくて。


『彼氏がいる』


 スマホを振り被って投げる事も出来ず、力なく降りてきたスマホで返信をした。


 そんなもの。結局、そんなもの。それだけのもの。


 寂しさを抱えているのも傷付いているのも自分だけ。


 やっと、そこで初めて僕は【失恋】を感じる事が出来た。


『お互い幸せになろうね』


 なんて言うから


『お幸せに』


 と無感情で送るしかなかった。


 別に僕が幸せになりたい訳じゃなくて、僕が君を幸せにしたいだけであって、それが僕の幸せになるんであって、でもそれは他の人の役目になっていて、君にしてあげられる事はもう僕にはないようで。


 もう僕が連絡をしない事が君に取って一番の幸せだって気付いちゃったもんだから、履歴を消去してスマホを置いた。

 


 それから忘れようとしてもSNSとは残酷なもので、フォローしている限りは彼女の今を見せつけられる。


 消してしまえば解決出来るのに、藁のように細い最後の縁を離せないからだった。


 とは言え時間が経てば薄れていく。想いだって色褪せていく。


 それでも一度、君の顔を見れば全てを思い出してしまう。


 笑っている写真を見つけては、あー幸せそうで良かったなんて大人ぶって思ったフリをしても、そんなメッキ細工の鎧じゃ心は守れなくて、ドロドロで愚かな眷恋に飲み込まれてしまう。


 そんな中でも抗えず薄くなっていく君との記憶。


 もう一緒に何をしたかも、どこが好きだったのかも、顔ですら写真を見ないと曖昧になって、それでも君を忘れられないって時にようやく気付けた。


 僕は恋なんてとっくに終わっていて、ただ幸せになった君に嫉妬しているだけだって。


 思い返せば振られた時からそうだったのかもしれない。


 僕だけ傷ついて、君だけ先へ行って。


 そんなのズルいって言いたいだけ。


 もっと傷ついて、寂しがって、後悔してくれないと納得がいかないという事なのだろう。


 あーそんな事だったのかと、スマホを取り出して君にメッセージを送る。


『久しぶり、幸せにしてる?』


 その返事はいくら待っても来ることはない。


 僕はようやく解放された気がした。


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