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1-4章 プラスマイナスゼロ

「えーじゃあ今日のところはクラス委員を決めたいと思います。男女それぞれ一名ずつ選出してくれ。決め終わったら今日はもう下校してもらってOKだ。一応立候補という形で進めたいと思うが、やってみたいやついるかー?」

 生徒全員の名前も呼び終わり、自分の自己紹介も簡単に済ませたところで、いよいよ本日のHRにおける最大の議題である「クラス委員決め」に移る。

 普通の学校でもなかなか決まらない議題であり、ましてや目の前にいるのが異世界人たちであることを考慮すると、このクラス委員決めは間違いなく難航するだろう。

「もし、いきなりクラス委員と言うても、異界の人らには馴染みがないんじゃなかろうか。聞くところによると、わしらのクラスは学舎自体が初めてな者も多いんじゃろ?」

 和服を着た猫耳女もとい猫又女が、牽制するような空気感を見兼ねてそう提言した。

 ……猫又女の言う通りだな。

 このスーパーミラクル所沢学園では、入学する生徒と退学する生徒が目まぐるしく、学年を跨いで通う生徒がほとんどいないらしい。

 俺が担当するのは三年生のクラスではあるが、この三年A組には新規入学の生徒しかいないとのことだった。実質ピカピカの一年生ということだ。

 しかも小中と学校に通った経験がないこともあり、学校という場での共同生活自体が彼らにとっては未知のものということになる。

「それもそうだな、貴重な意見をありがとう」

「うむ、お主も新任ということじゃしな。それこそ猫の手も借りたい状態じゃろう。ククク、猫だけにのう。まぁ肩肘張らずに励むがよい」

「…………おう」

 年長者にその口の利き方はないだろう、と言おうと思ったのだが、彼女は御年七六八歳の人生の大大先輩だった。俺の三五倍は長く生きているわけで。

 亀の甲よりも年の功とも言うが……ちくしょう、めっちゃやりづれぇ……!

 あと、とりあえず猫又女のジョークに関しては軽くスルーしておく。

 まぁ仕方ない。簡単ではあるが、『クラス委員』について異世界人にも分かるように解説しようじゃないか。

「えー、クラス委員というのは端的に言えば『教師の雑用係』だな」

「お主!? もっと他に言いようがあるんじゃろ!?」

 猫又女からツッコミが。

 やばいやばい。いつもの癖で、つい本音で喋ってしまった。

「……というのは冗談で、クラス委員は『クラスのみんなをハッピーにする仕事』だ」

「それはそれで適当というか、大雑把すぎぬか!?」

 いやだって、正直に概要話したら立候補する人が減りそうじゃん。

 クラス委員ってのは決め事の取り仕切り、HRの司会進行、点呼や号令、それこそ教師からの雑用、教師と生徒の間にワンクッションを挟むような存在だ。

 教師が一方的に物事を進めると、生徒から反感を持たれやすいからな。

 言うなれば中間管理職。もっと悪く言えば人柱みたいなものだ(※個人の見解です)。

「みんなをハッピーにする仕事! わたしやってみたいでーす!!」

 お、バカが釣れた……じゃなくて、とてもやる気のある生徒が声を上げてくれた。

 声の主は出席番号一番のウルゥ。

 天真爛漫、好奇心旺盛、犬系美少女(マジで犬型の獣人だけど)。

 この学園の制服、デザイン性の高いセーラー服がよく似合っている。

 ワンピース型の……ロリータファッションというのか、意味もなくふわふわとした装飾が所々に散りばめられたセーラー服だ。

 理事長の久さんが、デザインにこだわって業者と何度も調整したものだとか。

 ……やっぱりあの人、ちょっとだけロリの気があると思うんだよな。

 ちなみに制服の着用は義務ではない。

 パッとクラスを見渡しても、ウルゥのように制服を着ている生徒もいれば、和服を着ている猫又女のように自由な普段着を着ている生徒もいる。

 まぁ、そんなことはどうよくて……やっと生贄が見つかったのだ。

 これから苦労をかける犬耳美少女に、ねぎらいの言葉をかけようでないか。

「よーし、えらいぞ。頭を撫でてやろう。ほら、ついでにお手……グべォエ!?」

 ウルゥの頭をよしよしと撫でていたら、実家で飼っている犬を思い出してしまい、ついお手を要求してしまう。

 そして、気づいた瞬間には思いっきり腹パンをされました。超いてぇ……。こんな可愛い見た目でも、獣人は並の成人男性より力が強いんですって。

「いきなり女の子の体に触るなんてどうかしてますよ!! そ、それに……芸みたいなことも要求してきて! こんなのセクハラです!」

「いいパンチだったぜ……。あとなんだ、セクハラなんて言葉よく知っているね……」

 今更だが、こうして異世界人と日本語で普通に会話ができているのは、そもそもこちらの世界で暮らす条件として、日本語の習得が必須となっているからだ。

 そのため、この教室にいる生徒とは当然のように会話をすることができる。

 だとしても、ウルゥのボキャブラリーや文化理解はかなり習熟されているように思う。こちらの世界に来るために、一朝一夕にはなし得ない努力の積み重ねがあったはずだ。

「ま、まぁ? それなりにこっちの言葉は勉強しましたからね!」

 ウルゥは得意気だった。誇らしげに鼻の下を擦っている。

「うん、本当にすごいぞぉ! いやぁ、こんなに聡明な生徒がクラス委員をやってくれると安心だなぁ!」

「えへへ、そうですかねぇー?」

 ウルゥは上機嫌だった。気恥ずかしそうに頬を掻いている。

 危ない危ない……これでセクハラの件は有耶無耶になったな。

 ウルゥ、意外とチョロい。

 しかし、改めて行動が軽率だった。下心がなくとも、相手が不快に思った時点でセクハラになるからな。

 教員一年目にてセクハラで訴えられでもしたら……もうお先真っ暗だ。

 視線を感じたのでそちらの方に顔を向けると、猫又女が「危ないところじゃったな」と口パクとアイコンタクトをしてきた。

 いやもうおっしゃる通りです。さすが年長者。

「……ということで、女子のクラス委員はウルゥに任せたいと思う。あとは男子で立候補したいやつはいるか?」

 しばし教室中に沈黙が流れる。

 まぁ、いきなり言われてもウルゥみたいには————————

「みんなをハッピーにする仕事、いいですね。俺、やってみたいです!」

 おっと、もう一人バカが釣れた……じゃなくて、いや、やっぱバカが釣れたでいいや。

 うん、その認識で間違いない。

 だって立候補したのは、金髪イケメンである勇者のカイム・スレイヤーだったから。

 俺もイケメンではあるものの、自分よりイケメンなやつは嫌いなんだ!

「お、じゃあ頑張れー」

「先生!? あまりに男女で対応が違くないですか!?」

「そんなことないぞー。なんだお前も頭を撫でてほしいのかー?」

「はい、ぜひ!」

 そこは断るところだろう。……随分、変わったやつだな。

 しかし、言われたらまぁ仕方ないか……?

 なんか調子が狂うなー、と思いつつもカイム・スレイヤーの頭を撫でる。

「あ、ありがたく、お、思えよー?」

「ありがとうございます!」

 なんでこんなに嬉しそうなんだよ! 

 そんな顔をされるとこっちも満更でもないというか。なんか不機嫌な女の子を撫でるより、嬉しそうなイケメン撫でる方が気分的にはいいな。

「守さん! 彼だけズルいです! ぜひ、この僕にも施しを!」

 カイム・スレイヤーを撫でていたら、セクシー男子ことインキュバスのレインも自分を撫でてほしいと名乗りを上げてきた。

 いやいやいやいやいや……このクラスどうなってるの!? 男が男に頭を撫でられたいっていうのは、そんなにありふれた欲求なのか? 

 何人かはそういう奴もいるかもしれんが、クラスに二人は多すぎると思う。

「お前は特に褒められることしてないだろ! ほら、スレイヤーもいつまで撫でられ続けてるんだ! ……もういいな? じゃあクラス委員頼むぞ」

「そ、そんな……! ご無体な!」

「はい! 不肖ながら、クラス委員の任を拝命させていただきます!」

 残念そうに項垂れるレインを横目に、カイム・スレイヤーはハイテンションだった。

 俺の頭なでなでってそんなにモチベーションに繋がります……?

 どうせなら女の子にこういう反応されたかった。

「じゃあ、クラス委員はウルゥとスレイヤーで決定だ。じゃあ、二人とも前に出て軽く意気込みでも発表してくれ」

 ウルゥは緊張しているのかおぼつかない足取りで、カイム・スレイヤーはさすが勇者というのか堂々とした歩き姿で、それぞれ教壇に上がってきた。

「え、えーとウルゥです。み、みんなをハッピーにするため……が、頑張ります!」

 なんだよ、みんなをハッピーにするって。新興宗教か(自分で言っておいて)。

 けど、苦手そうなのにみんなの前で喋れたのは偉いぞ。

 頭を撫でてやりたいと思ったが、セクハラ扱いされても困るので自重する。

「カイム・スレイヤーだ。俺がこのクラス……いや世界の平和を守る!」

 クラス委員が世界守っちゃうみたいですよ。何、勇者みたいなこと言っているんだとツッコミたくなるが、そういえば彼は勇者でした。

 いやでも本当にこんなところで油を売ってて大丈夫なの? 

 それこそ世界が滅ぶんじゃ……。

「ということで、二人にはクラスのまとめ役をお願いする。みんなもできる限りでいいから、二人のサポートをしてやってくれ。クラス委員に名乗り出てくれた二人に拍手!」

 パチパチパチ————————クラスの半数以上は手を叩いて応じてくれた。……裏を返せば全員が拍手をしたわけではないということだけど。

 うむ、なんとなくコイツは面倒くさそうだな、っていう生徒が分かり始めてきたぞ。

 ただまぁ、学級委員もすんなり決まったし、とりあえず出だしは好調なのかな……?


「中富さん、今日はいいですって。さすがに初日で疲れてるんで……」

「いーや、だめだ! 先輩の誘いを断るなんて社会人失格だぞ! ほら、いいから飲みに行こうぜ? 安心しろ、俺の奢りだから!」

「よし、中富さん。早く行きましょう。カバンをお持ちしましょうか?」

「いくらなんでも現金すぎるだろ! そういうとこだぞ、守が未だに他の先生たちと馴染めてないのは……」

「それは言わないでください……自覚あるんで」

 中富さんの歯に衣着せぬ言葉が胸に深く突き刺さる。

 いや、俺ってどんなコミュニティでも浮いてしまうというか……出る杭は打たれるってやつですよ。やれやれ、本当に日本というのは小さい島国だぜ。同調圧力にうんざりする。

 まぁそれも仕方ないか。

 それだけ、俺が輝いているってことだからな(この思考が原因)。

「初日から遅刻した上にこの性格だからな……」

「これ以上は俺のメンタルが! 職員室にいるのが嫌すぎて屋上で飯食ってるのとか、喫煙所で他の先生と一切会話がないこととか、挨拶すると気まずそうに目を逸らされるのとか、なんか色々と思い出して泣きたくなりました」

 改めて考えてみると、俺の現状って結構悲惨じゃね?

 けど、そんな俺にも懲りずに話しかけてくれるのが、目の前にいる中富さんだったりする。俺と同じく高等部で三年生の担任をしている。担当科目は化学。

 初日に遅刻したせいで、他の先生から煙たがられている俺に声を掛けてくれた。

 年齢は二つ上でこの学園では数少ない歳の近い同僚である。

 いやね、それこそ最初は雛鳥のように慕っていたんだけどね……。この人は話せば話すほど面倒な人だということに気がついてしまって……。

 なんだかんだ、この人も俺以外に話す先生がいないという……ね。

「ほら、このあと愚痴も聞いてやるからさ。————すみません、二人で!」

「はーい、奥のお座敷にどうぞ!」

 なんてことを話していたら、行きつけの居酒屋にたどり着く。

 居酒屋『千味』。繁華街の地下に位置する大衆居酒屋。

 特別行政区の居酒屋だけあって、店員にもお客さんにもちらほら異世界人がいる。

 しかし、この場所では種族なんて関係なく、皆が美味い酒と料理を嗜み、酔っ払って騒いで、そこら中で笑い声が聞こえてくるのだ。

 この雰囲気が好きで、つい仕事終わりに寄ってしまう。

「じゃあ、お姉さん。生二つ……守もいいよな?」

「大丈夫です。あと枝豆と揚げ出し豆腐、だし巻き卵、それとホッケもお願いします」

「はーい、少々お待ちください!」

 注文を取り終えて、猫型獣人の店員さんは忙しそうに厨房の方へ向かっていた。

 やっぱり繁盛してるな、この店。

「いやー、守のその注文のセンスは完璧だわ。酒飲みのツボを押さえてる」

「あざす。数少ない趣味が酒を飲むことなんで」

「それに関してはどうかと思うけどな!?」

 大学生の頃から酒は浴びるように飲んできた。

 こんなこと堂々と言うべきではないと思うが、俺は酒がないと生きていけない。酒は幸福への片道切符だ。

「明らかに教師になってから酒とタバコが増えました……。学校の先生ってこんなに忙しかったんだなーって、舞台の裏側を見てる感じですよ」

「まぁな。けど、うちの学校は生徒数も少ないからそこは他よりマシだと思うけどな」

「でも生徒が異世界人じゃないですか……」

「そこがいいんだろ、そこが! そういえばさっきの猫型獣人の店員さん可愛かったよな!? あの猫耳がたまらん! カチューシャのコスプレなんて目でもない。あの一体感が最高すぎるぜ! いや本当にこの特別行政区はマジで神! だけど、エルフの魅力には敵わんなぁ。パッと見た感じ、この店にはエルフはいないようだな。やっぱりエルフは排他的っていうし……。そういえば守のクラスにエルフの子がいたよな!? 可愛かったか!?」

「はぁ……また始まった……」

 とんでもないセリフ量で中富さんが熱弁を始める。これがこの人の最大の欠点だ。

 俺もこの異世界人愛を知るまではまともな人だと思っていた。

 中富さんは自他共に認めるオタクで、昔からゲームやアニメが大好きだったらしい。そういった嗜好もあって、冗談なく異世界に転生する方法はないかと模索していたとか。

 そんな最中に所沢と異世界が繋がった。

 その吉報を耳にした中富さんは迷わず地元新潟を飛び出し、このスーパーミラクル所沢学園に就職したのだ。

 考え直すように説得してきた両親を渾身のグーで殴った、というエピソードにはドン引きしました。

「ほらほら、酒もきたし今日は存分に語ろうぜ! ほら、プロージット!」

「なんでドイツ語……はい、カンパーイ」

 中富さんの話は基本面倒だが、奢ってもらえるのだから我慢をするしかない。よし今日はガンガン飲んでやろう。酔っ払えば中富さんの話ですら肴になる。


「おやおや、そこにおるのは担任殿じゃなかろうか」

 一杯、二杯、三杯と飲み進め、少し酔いが回ってきたところで聞き覚えのある声がする。

「……ッ! お、お前は猫又女! 他にも見覚えがあるやつがいるし! おいおい、ここは高校生が来ていい場所じゃないぞ!?」

 中富さんの話でも大笑いできるくらいには酔っ払ってきたというのに、隣の座席に腰を下ろした顔ぶれを見て一気に酔いが覚めた。

「もう酔っておるのか? 特別行政区での成人年齢は、各人が元いた世界の制度に従うと。ここにいる面子は身分こそ高校生じゃが、酒は飲める年齢じゃぞ」

「そういえば、そんなルールもあったな……。で、メンバーは……」

 猫又女、クイーン、エンジェ、ファーストの四名。

 猫又女は七六八歳。クイーンは五○○歳。エンジェとファーストは天使と神のため、年齢という概念が存在しない。

「お、これはこれは先生じゃないか! いいね、酒を飲めるメンバーでまずは親交を深めようって話だったけど、先生とも仲良くなれるなんて一石二鳥だな!」

 はちぎれんばかりの巨乳をぶら下げた竜人女、クイーンが豪快に笑っている。

「せんせーも結構出来上がってるじゃーん! よーし、エンジェもガンガン飲むぞー! 今日はゲロ吐くまで飲み続けるからねー!」

 絵画に描かれるような美しい天使、エンジェが下品な言葉を発しながらはしゃいでいる。

「ふっはっはは!! 神酒上がらぬ神はないとも言うしな!! それは教師でも酒を飲むか!! どうだ小手指守、楽しんでいるか!?」

 なぜか高校生をしている神様、ファーストは相変わらず大きな声を店内に響かせている。

「んーまぁ、四人とも酒を飲めるなら問題ないのか……。よっしゃー!! じゃあテメェら、とっととギア上げて俺について来い!! 店員さーん! こいつらに一番強い酒を!」

 酒は大勢で飲んだ方が楽しい。こいつらも言っている通り、教師と生徒が交流するはいいことじゃないか。

 飲みニケーションってやつだ。

「お、おい! 守!? いやそりゃ、彼らは酒が飲めるかもしれないが、教師と生徒が一緒に酒を飲んだなんて学園長に知られたら……」

「大丈夫ですって! ほらほら中富さんもグラス乾いてますよ! すみませーん! 同じ酒をもう一杯追加でお願いします!!」

「後悔しても知らんからな……」

 アルコールが入ってしまえば俺は無敵だ。アイキャンフライ!! いやっほぉー!

 ————————それから数時間後。

 なぜか俺は半裸になって、顔を左右からおっぱいに挟まれていた。

「おっぱい王に俺はなる!」

「ほらほら、先生? わっちと天使どっちの乳が好みかな?」

「そんなの言うまでもないっしょ! エンジェのおっぱいは、人間の理想がすべて反映されてるんだからね!」

 最高だぜ。右のおっぱいから左のおっぱいとはよく言ったものだ(言わない)。

 クイーンの圧倒的で暴力的な爆乳も最高だし、エンジェの形、柔らかさ、大きさ、全てが完璧なバランスおっぱいもこれまた趣がある。

「のう、中富とやら。この様子をSNSにアップしたらどうなると思うかの?」

「頼む、守の教師人生のためにもそれは勘弁してやってくれ!」

 視界の先では猫又女と中富さんが何やら話しているが、まぁ俺には関係ないことだろう。

「おい、小手指守! 女にばっかかまけておるせいで盃が乾いておるぞ! 神前で酒を乾かすとは罰当たりなやつめ! 天罰を下すぞ!!」

「なんだなんだ? さっき一緒に踊ってやっただろ? もう寂しいのか? まぁいいぜ。神だかなんだか知らねーが、生徒が教師に喧嘩売ったらどうなるか教えてやるよ。店員さーん、この店で一番強い酒をください!」

 もう自分でも何言っているのか分からないが、とにかく気分がいいことは確かだ。

「守! おい、バカ! 落ち着け! いつまで大学生みたいな飲み方してるんだよ!?」

「もうラストオーダー伺いましたよー。三○分後に閉店ですー」

「ほら、もう閉店だってよ、守!」

 よく分からないが、とりあえずここには酒はないってことだな。

「よし、お前ら! 俺の家で飲み直すぞ!」

「守!?」

「ククク、明日も授業なのにぶっ飛んでるのう、担任殿は」

「行く行く! エンジェ、イっちゃうぅうううう!!」

「よし! いいね、先生! 竜人にとってはこの量じゃ物足りなかったからな!」

「勝負はその場所で、ということだな! よし、早く行くぞ! 小手指守!」

「お前らよく言った! 中富さんも当然来ますよねぇ!?」

 最高に気分がいいぞ。なんてノリがいい生徒なんだ。

 こいつらとなら一年間上手くやっていけそうだぜ!! ヒャッハー!!

「行くわけないだろ!? 明日学校だぞ? もう俺は知らないからな……店員さーん、お勘定で——————高っ!? お前らどんだけ飲むんだよ……」

 気がついたら中富さんがいなくなっていた。

 今度お礼言っとかないと……まぁ、とにかく今は酒だ酒!

「お前らついて来い!」

『うぉー!!』

 俺たちは肩を組んで、フラフラになりながら教員寮まで歩いていった。

 それから……それから……それから……?

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