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お気に入り小説3

- 約 束 - 愛しい人の為に私はその女に復讐する。

作者: ユミヨシ

愛しい方と約束した。


必ず君と幸せになりたい。

だから、信じて待っていて欲しいと。


だけどその約束は破られた。


愛しい人は死んでしまった。

だから私はその女に復讐する。



ミレーヌは7歳の時に、両親を夜盗に殺された。

そんなミレーヌを神殿が引き取ってくれた事にはとても感謝をしている。


一人の少女が孤児になって行きつく先なんて知れている。

引き取り手がいなければ、身体を売って暮らすか、物乞いをするか。

だから、神殿から迎えが来てミレーヌを引き取ってくれると言った時には幼心にも嬉しかったものだ。


ミレーヌは神殿に引き取られて、神殿にいらっしゃる聖女様のお世話係の一人となった。

聖女様は朝昼晩と一時間ずつ祈りを捧げる。神殿で一番偉い教皇様の教えによれば、このカレント王国の平和を願って祈っているそうだ。


聖女様はとても優しい。歳は自分の亡くなった母親位の歳だ。

銀の髪を長く伸ばして、とても美しい容姿をしていた。


「ミレーヌ。美味しいお菓子を頂いたの。一緒に食べましょう」


「有難うございます。聖女様」


他の聖女様をお世話する人は、ミレーヌより年上ばかりだ。

だからだろうか。聖女様はミレーヌを特に可愛がってくれた。


聖女様は一緒にお菓子を食べながら、


「私に子がいれば貴方位の歳でしょうけどねぇ。本当に貴方は可愛いわ」


「私なんて。有難うございます」


聖女様は穏やかに微笑んでくれて、聖女様と一緒にいられる時間がとても幸せだった。

聖女様の祈りにも付き添わせて下さって。

聖女様が祈ると美しい光が祈りの間から空へ向かって放たれる。

その美しい光を見ることがとても幸せに感じた。


そんなミレーヌも10年経って、17歳になった頃、恋をした。


神殿の聖騎士リレイドである。


リレイドは金の髪のとても美しい青年で、24歳。白銀の鎧を着て、神殿を警護する姿は他の聖騎士と比べて、とても目立って美しかった。


地方の神殿からこちらへ来たというリレイド。

その美しいリレイドに恋をしたミレーヌ。

彼の警護姿を見るだけでとても幸せな気分になる毎日。


聖女様も応援するように、


「リレイドは貴方に気があるみたいよ」


「えっ?私なんてそんな」


平凡な容姿で茶の長い髪のミレーヌ。決して美人の部類でないことは解っている。

何より身寄りのない平民だ。


リレイドは伯爵家の次男である。とてもではないが身分違いて。

孤児の自分なんて不釣り合い。警護する姿を見るだけで幸せで。


聖女様は微笑んで、


「私から貴方の気持ちを話してあげましょうか?」


「え?何故、とんでもないっ。そんなリレイド様の事を好きだなんて私っ恐れ多いっ」


何故、ばれたのだろう。赤面するミレーヌ。


「話してあげるわね。若いっていいわね」


聖女様が話をしてくれたのか、翌日、リレイドから話しかけてきた。


「ミレーヌ。君が私の事を好きだなんて、私も実は君の事、気になっていたんだ。よかったら今度非番の時に一緒に街を歩かないか?」


「えええっ?私なんて身分違いでっ」


「身分なんて関係ない。私は今や、神殿に仕える身。貴族のしがらみなんて関係ない。一生、聖騎士として神殿に仕える気だ。幸い、結婚は禁止されていない職業だ。君さえよければ、結婚を前提に付き合わないか?」


嬉しかった。本当にとても嬉しかった。


真っ赤になって。


「ええ、私でよければ」


それからの日々は、お互いに休みを合わせて、街へ行き、デートを楽しんだ。

手を繋ぎ、色々なお店を見て。


リレイドは綺麗な腕輪や首飾りを買ってくれた。


「あまり高い物でなくてすまない。聖騎士はそれ程、給金も高い訳ではないし、私は家から出ている身だから」


「いいのです。こうして私の為にプレゼントしてくれただけで」



綺麗な赤い石が複数はまった腕輪。キラキラした同じく大きな赤い石が一つついた首飾り。

透き通っていてとても綺麗て。


木の影にミレーヌは連れ込まれて、リレイドに口づけされた。

恥ずかしい。でも、初めての口づけ。

とろけるような口づけにミレーヌの心は幸せではちきれそうだった。



こんなに幸せでいいの?

本当にいいの?




しかし、その幸せは三か月と続かなかった。


リレイドの態度がだんだん冷たくなった。


デートにも誘ってくれなくなった。


聖女様に悩みを打ち明けると、聖女様は暗い顔をして、


「リレイドは男爵家の令嬢とお付き合いしているそうよ。ごめんなさいね。あんな男だとは思わなくて」


「男爵家の令嬢?」


「ルリリア・マリンという男爵令嬢よ」


いつの間にその令嬢と知り合ったのだろう。

本当に自分の事が嫌いになったの?


聖女様の部屋を出て、外の廊下で警護をしているリレイドに向かって、ミレーヌは話しかけた。


「男爵令嬢様とお付き合いしているって本当なの?」


「すまない。ちょっと話をしていいか?」


もう一人警護をしている聖騎士に聞かれたくないだろう。

柱の陰に場所を移して、リレイドは頭を下げた。


「男爵令嬢に借金があるんだ。聖騎士だけの給料だけじゃ足りなくて、変な儲け話に手を出して借金をしてしまった。その利子代わりに、男爵令嬢が自分と付き合って欲しいと、私は君を幸せにする資格がない。本当に申し訳ない」


「そんな……わ、私、男爵令嬢様にお願いしてみます。どうか、リレイド様を自由にしてほしいと」


「無理だ。男爵令嬢は私の事を気に入っている」


「そんな……」


「私は君の事を愛している。だから、君と離れるしかないんだ」


「離れたくはありません。一緒に借金を返して行きましょう。そのためにも男爵令嬢様にお願いしにいきましょう」


リレイドは首を振って、


「君を巻き込みたくないんだ。いいね? ああ、でも私は君の事を諦めきれない。父上に頼んでみようか。お金を融通してくれるかもしれない」


「リレイド様」


「それが上手くいったら、君と結婚出来る。信じて待っていて欲しい。家を出て聖騎士になった私にお金を貸してくれないかもしれない。それでも父上に頼むつもりだ。男爵令嬢から離れるのに時間がかかるかもしれないけれども。」


悲しかった。でも、リレイドを愛していたから、ミレーヌは頷いた。


「約束致しますわ。私、貴方様の事を待っております。愛しております。リレイド様」


リレイドに抱きしめられて、互いにむさぼるように口づけをした。


リレイドは熱く耳元に囁いて来た。


「君と幸せになりたい。だから信じて待っていてほしい」


「待っております。リレイド様っ」



それから、更に二週間経ったとある日の夜だった。


ミレーヌは神殿の5階にある屋上に呼び出された。

リレイドにである。


「リレイド様。どうだったのです?」


「すまない。父上がどうしても許さないって。お金を貸して貰えなかった。私はあの男爵令嬢が嫌いだ。私の事を顎で使って、更に借金を増やそうとする。あああ、約束を守れなかった。申し訳ない」


そう言うと、屋上の柵に手をかけて、


「だから、私は死ぬことにした。ミレーヌ。愛していたよ」


「死ぬだなんてっ。リレイド様っーーー」


リレイドは柵を乗り越えて、姿を消した。


「リレイド様ぁーーー」


柵に駆け寄ろうとして、ふと、ぐらりと眩暈を覚えた。

そのまま、ミレーヌは意識を失った。


目が覚めた時に、聖女様が心配そうにのぞき込んでいた。


「ああ、よかった。ミレーヌの目が覚めた」


「聖女様っ。リレイド様が……」


「彼はもう……」


「リレイド様っ。最後のお別れをっ」


「彼の死骸は伯爵家に引き取られたわ。伯爵家でお葬式をすませたそうよ。貴方は3日間意識を失っていたのですもの」


「あああっーーリレイド様っ」


愛しい人は死んでしまった。

待っていたのに。


涙が止まらない。


聖女様はミレーヌに向かって、


「ルリリア・マリン男爵令嬢の事で悩んでいた。死ぬ前日に私に悩みを話に来ていたわ。彼女に騙されて借金を背負わされた。儲け話を持ち掛けたのは彼女だって。悪い女に騙されたものね」


「ルリリア・マリン……あああ、酷い人」


でも、男爵令嬢だから、下位貴族だが、貴族は貴族。ミレーヌにとってどうすることも出来ない。


本当に好きだった。

愛していた。


ミレーヌは悲しみに涙を流すのであった。



それからは魂が抜けたように過ごしていたミレーヌ。

何をしても悲しくて悲しくて。

そんなミレーヌを慰めてくれる聖女様。母親のような聖女様のお陰で、なんとか生きていられる日々。


そして、一年程経ったとある日、ミレーヌは聖女様に大事な話があると言われ呼ばれた。


「大事な話とは?」


「このカレント王国は、私の祈りによる結界で魔物から守られているのですよ」


「えええ?初めて聞きました。でも、何故、その事を今、私に?」


「私の役割はもうすぐ終わります。私は結界を張っているとはいえ、魔力を供給しているのはカレント王国の王妃様なのです。その強力な魔力を受け取って、結界を張っているだけの器。今の王妃様は大分弱っておいでです。そして私も疲れました。次代王妃様がもうすぐ誕生します。ですから、今度は貴方が器になりなさい。魔力を受け取って結界を張るのです」


「器なんて。私に出来るのでしょうか?」


「神殿が何故、貴方を引き取ったのか。貴方には器になる力があるから。私が傍に置いたのは私の祈りを貴方に見せる為に。王妃になるお人は魔力がとても高い。その魔力を受け取るのが貴方の仕事。そして覚えておきなさい。王妃は生贄。王宮の奥深くで、入れ物に入って死ぬまで魔力を搾り取られるだけの生活。今の王妃様もとても辛い。苦しいと私にいつも訴えておいででした。でも、私はあの王妃様は悪い女だと聞かされているから、カレント王国の為に心を鬼にして、聖女としての役目を果たしてきたのよ。だから貴方も心を鬼にして聖女としての役目を果たしなさい」


一人の女性の犠牲のもとで結界が張られ、カレント王国の平和が守られているだなんて。


聖女様はミレーヌに囁くように、


「ルリリア・マリン。今度、王妃になる女の名前よ」


愛するリレイドを破滅させたルリリア・マリン。


許せなかった。その女を地獄に落とせるのなら。


ミレーヌは頷いた。


「聖女様。私が立派に貴方様の後をお継ぎします。王妃となるルリリア・マリンから魔力を貰って、結界を張り、カレント王国の為に祈りますわ」


「有難う。ミレーヌ。これで安心して私は役目を終えることが出来るわ」



こうして、ミレーヌは新たなる聖女となった。


新しい王妃の誕生と共に、


王妃は訴えて来る。


― 苦しい。助けて。ここから出してっ ―


ミレーヌはルリリアに向かって、映像を流す。


そう、国王陛下と側妃様が幸せに暮らす姿を。


この女はリレイドを破滅させたのだ。

だから、復讐する。


魔力を絞りに搾り取って。


このカレント王国の為に。


リレイド様。約束したわね。

約束は破られて悲しかった。


あの世に行っても貴方には会えないわね。

きっと私の行くところは地獄だから。

でも、私は後悔なんてしない。


貴方の事を愛しているわ。

だから私は復讐し続ける。

あの女を苦しめる為に。











「これでカレント王国も安泰だな。元聖女よ。そしてリレイド。よくやった」


「教皇様。本当に貴方という人は……でも、カレント王国を守る為なら、仕方ないですわね。あの娘の両親を殺し、リレイドの自殺を偽装し、ルリリアという女へ憎しみを向けるように仕向けた」


「私は心苦しかったですよ。ルリリアという女、私と何の関係もなかったのですから。でも、これがカレント王国の為ならば、喜んで私は死人になりましょう。私達は地獄に落ちるでしょうねぇ」


「ハハハ。地獄に落ちるのも皆、一緒ならばそれ又、楽しいのではないか?リディウス国王陛下もお喜びだ。このカレント王国の為ならば、鬼にも悪魔にもなろう」


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― 新着の感想 ―
[一言] >>地獄に落ちるのも悪くない 神「ふーんじゃあ君達とイチャイチャばっかで解決策を探してない王子と一緒に歴代王妃の生涯を全部体験してもらおうか? 針山に一億年とかより優しいよね?」 なんと…
2024/01/22 18:41 退会済み
管理
[良い点] おお、これは前の続き。 美談な流れと思ったら雲行きが怪しい! なにやらキナ臭いですな~。 リレイドはどこいった?
[一言] 前のー約束ーの物語の同じような時期に、こんなことも起きていたのですね。 最初のころは聖女様が怪しいのかと思っていたら、なんと教皇様が黒幕! ビックリ! なにも知らないミレーヌ、両親は殺されリ…
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