デアリング隊
「融合炉、異状なし。
センサー、異状なし。
オーグメント……左右ともに作動不良。
兵装、異状なし。
装甲……背部に小規模の損傷あり。
システム、戦闘可能です、マスター」
「背後から撃たれたか」
「いえ、ミサイルの爆風による損傷です」
「さきの通信で襲われたと聞いたが」
「当テリオンへの襲撃は正体不明のテリオン3機で行われましたが、
当テリオンはその攻撃をすべて回避、
27秒の戦闘ののち、敵テリオン3機は離脱、
最後の攻撃で敵テリオン1機が中距離ミサイルを発射、
その直撃は回避しましたが、爆風によりさきに報告した損傷を受けました」
「その敵テリオン3機の映像を見せろ」
情報表示装置のわきに映されるその被襲撃映像。
たしかに全体に黒の塗装──おそらくステルス迷彩──が施されており、識別用のマークなどもない。
センサーなどの機器を使用しても機体の所属情報は得られなかったようだ。
セーマンドは正体不明と判断したが、アノウは直感的にそれがバクスター藩主直属のある諜報部隊とみた。
「デアリング隊かもしれん」
「デアリング隊──しかし、その存在はたしかな証拠で確認されていません」
「そりゃそうだ。そのためのテクニックに長けたプロの集団だからな」
デアリング隊が出てきたとなると、かなり厄介──
そのとき、アノウは、警告されるより、本能的な直感で敵の狙撃を察知して、たちまち機体を後方に機動させる。
直撃は避けられたが、それでも狙撃レーザーの余波で装甲を削る。
オーグメントがあれば、もっとよかったのだが──。
「狙撃されています!」
「探知妨害装置起動! おそいぞ、セーマンド!」
アノウはただちに近くのビル廃墟のかげにかくれる。
敵の腕は悪くない。
被襲撃映像に気をとられていたのはうかつだった。
やはりここはまだ戦場なのだ。
「射線から推測して、あのビルの屋上か……?」
見当をつけたのは、今隠れているところから見て2時の方向にある、8階ほどの高さのもの。
このあたりは都市部ながらたびたび戦闘があったために、ビルの廃墟が数多くある。
遮蔽が多いのは願ったりだが、それは敵にとっても同様である。
探知妨害装置を起動しているかぎり、こちらからの探知は直接の目視や聴覚でしかできない。
「ならば狙撃兵の行き先は──」