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腐敗

「やはり奸智がまわるといっても、孫請けの傭兵ふぜいでは限界があったか」

アノウはふとつぶやく。

傭兵というのはしょせん、雇い主にとっては便利な使い捨てのコマにすぎない。

いつでもどこでも、不要と判断されればすぐにポイ捨てされる。

その現実は、フリーランスのアノウ自身がもっともしんじつ実感していた。

「あのパンク(ヘッド)の雇い主はたしか……」

ベクレル共和国軍少将ドルクス・クロベキア。

階級は低いが、共和国軍の大将で財務長官と癒着しているポラノス・オクシェルヘイムの寵愛で第3軍の実質的指揮官になっているような奴だ。

共和国軍の惨憺たる腐敗の一角を占める奴で、さきほどのパンク(ヘッド)のような連中を私兵として暴力的ビジネスを展開している。

このたびの金塊邸の襲撃も、おそらくその所有者のバクスター藩主フロクス・ダーザインとクロベキアとの対立抗争に端を発しているのだろう。

すくなくとも、表向きは。

「そんな単純な世界だったらまだよかっただろうな」

アノウは、その世間の評判を信じていなかった。

悲しいことに、アノウのそれまでの経験は、人間というものはまったく信用に値しないという虚無主義に彼を追い込むものであった。

とくに、金や女や権力を手にした者は、ウソをホントのように見せかける世界で生きているんだと、強く信じていた。

そう信じなければ、この戦場で生き残れなかった。

しかし、だからといって生きることに絶望まではしていなかった。

いや、生きているかぎり、絶望などしている暇も余裕もない。

敵はすぐそこまでせまっているのだ。

政治的・哲学的思索をわきにおいておいて、とにかく目前の状況に集中する。

「セーマンド、機体の損傷を報告せよ」

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