ワナ
「隠れ場はなくなったなァ、ネズミちゃん。
おとなしくホリョになるんだなァ……」
パンキーの目の前にひとりで立ったアノウは、ふっと鼻で笑った。
「捕虜? お前が捕虜などとったことはないだろう。
いつも戦争法違反の処遇しかしていない。
そもそも戦争法がわかる頭すら──」
「そうだよ、オメーの頭だよ、頭!
オメーの頭がありゃオレも上級国民の仲間入りだぜェ」
アノウはまた、つい失笑してしまった。
「なーに笑ってんの?
ここがテメーの墓なんだぜェ?」
「そりゃ笑うさ。
お前はハメられたんだよ。
お前のボス──ベクレル共和国軍のあいつなんだろ?
アレはな、そういう奴なんだよ。昔から──」
「はっ? 何を──」
そのパンキーのテリオンは、突如として爆発した。
アノウはとっさに身を伏せて爆風をかわし、残骸となったテリオンに伸びる光の筋が消える前に、身を低くする姿勢で立ち上がってかけていき、AIのいるテリオンのもとへと帰ろうとする。
「そこの不審者、待て!」
サーチライトがアノウの付近を照らす。
アノウもこのような状況は慣れている。
ライトからうまく逃れつづけて、自分のテリオンに乗り込むことができた。
「AI、逃げるぞ。少し陽動をかける」
「AIではありません、セ……」
「セーマンド! 2時の方向! チャフを射て!」
「イエス、マスター」