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第十八話 貴族子女への襲撃②

大陸に戦乱が訪れます。知ってる人も知らない人も、名前だけの人も、モブも戦に巻き込まれていきます・・・。


 『・・・何か、私に対して良からぬことを企てる者たちが居るようなのですが、それが誰で何をしようとしているのか、いつ起こすつもりなのかわからなくて』


 お茶の席で義母にそう伝える。


 『・・・あなたに対してねえ・・・』


 しばらく義母は考え込む。


 カチャカチャとその間に、義母の世話をする侍女が手早く冷めかけたお茶を淹れ替えた。


 夏に向かいかけるアルトマイアー大陸は今が一番荒れる時期だが、その日は珍しく穏やかな日だった。お茶の席は、私が暮らす宿舎と、義父母が暮らす屋敷の中間にある東屋に用意されていた。その東屋の中をさやさやと優しい風が流れていく。


 『・・・まあ、考えれば、あなたに対しては拉致でもしたいとかじゃない?』


 『・・・』


 『あなたは、まずログネル王国の女王陛下の縁故に連なる方だから、拉致すればログネル王国に強気に出れると言うものよね?』


 『・・・そうですね』


 義母はお茶を入れ替えたカップを持ち上げる。


 『・・・さらにはあなたは今はルンダール王国の外務大臣である侯爵家の令嬢でもあるわよねえ』


 『・・・それもその通りです』


 義母はお茶を一口含む。慎重に手に持ったままのカップを置きながら、義母が私を見つめる。


 『両国に影響を与えられるあなたの存在は格好の取引材料なのじゃない?』


 『私は・・・どんな相手なのかを知りたいのです』


 義母の言うことはわかっていたのだが、そのようなことを考える相手が誰なのかを知りたいと思っていた。私に護衛を付けたがるフェリクス殿下の行いが、やけに引っ掛かる。そうまでして護衛を付けたがるのは、襲撃とかについて何か知っていることがあるのではないかと、私には思えるのだった。・・・それか、考えたくはないがフェリクス殿下は襲撃者側なのかも知れない・・・。


 『・・・あなたがそう思うってことは、あのエルベンの王子も何か裏がありそうよねえ・・・』


 肯定はせず、私は目を伏せる。


 『・・・情報がないことが不安なのです』


 『・・・あなたを拉致できなくても、生命を獲れれば、それはログネル王国に対して優位に立てるとか、皇国なら考えそうよねえ。・・・まあ、そんなことをすればどうなるか。・・・どう考えてもログネル側が激怒して、弔い合戦とかしそうだけれどねえ』


 『・・・拉致しても生かしておかないと価値がないと思います』


 私の言葉に義母がふふふと笑う。


 『・・・当事者の客観的視点が面白いわねえ』


 『そうでしょうか?あの女王陛下は私の死を交渉の材料として領土を守るために行動すると思います。下手をすれば、激怒という芝居をして軍を動かすかもしれません。しかし少なくとも私の死を契機として行動を起こすはず。・・・その点から、私は今現在、希望的な観測ですが、自分の死を望んでいない。決して死を恐れているのではなく、私の死によって引き起こされる軍事行動が皇国との戦となり、それが大陸全体の戦乱に発展して欲しくはないからです』


 私はそこで淹れ替えられたお茶を飲んだ。


 『私は、ログネルの野心を刺激しないようにしたい。そのためには私は拉致されることもなく、ログネルに帰ることが大事だと思っていますよ、母上』


 『・・・女王陛下も必要以上に悪くとられてしまったようねえ。不憫だわ』


 『・・・恐れながら、陛下のお心はお嬢様には届いておりません。フルトグレーン侯爵夫人の仰る通り、陛下はお嬢様への接し方を相当間違えたと思われます』


 『・・・私は母様の仰る通り、学園で顔見せをして婚約者を決めた。母様はそれを望んだのでしょう?婚約を決めなければ、学園で学ばせないと、そう仰ったはず』


 義母は私の言葉を聞き終わると、ため息をつきながらカイサを見た。カイサもため息をつきながら義母を見返す。軽く首を振ると、義母が口を開く。


 『・・・話は分かったわ。女王陛下のお考えについては私から話すことはありませんから。

 それで危険を無くすために、どんなことでもいいから情報が欲しいと考えているわけね?そう言うことなら旦那様にお話しするから、ルンダール側でも確認してみます』


 先日のお茶はそれで終わったのだが、今だ疑わしい所について何も判明していない。


 講座の講師が現れ、私は手にしていた資料から顔を上げる。講師の話が始まった・・・。


 講座が終わると、今日も相当疲れた。しばらく椅子に座ったまま、ぼんやりとしていると、近づいてくる足音を聞く。


 顔を上げると、ニコライ某だ。


 「・・・少しいいか?」


 「話す時間はないと答えたら?」


 「・・・」


 何の感情も籠らない彼の目に初めて何かの色が現れる。


 「あのメルキオルニ侯国の王子様の動向について聞きたくないか?」


 ああ、そう言えばお友達だったか。


 「別に、と答えたらどうするつもり?」


 ちらっと眼の色が動いた気がする。


 「・・・ご挨拶だな・・・。まあいい、聞かないと言っても聞いてもらうからな」


 「・・・それなら勝手に話せば?」


 ふうっと息を吐き額を押さえて軽く頭を振る。それからおもむろに口を開くニコライ某。


 「・・・メルキオルニ侯国の王子はあのアランコの王子と共謀して、あなたを襲撃するようだ」


 「!」


 私が機敏に振り向くと、ニコライはにやりと笑った。


 「ようやく聞く気になったか」


 「・・・馬鹿なことを!メルキオルニ侯国もアランコもログネルと境を接している国でしょう?そんなことをすれば報復されるでしょ!」


 目を見開き、私はニコライを睨みつけていた。


今はまだ戦ではないのですが、卒業も待たず、戦乱に巻き込まれて帰国することになりそうです。まあ、拉致されそうになって国に帰ろうと言う気になります。

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