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第十七話 なぜ第二王子の周りが騒がしい①

だんだん周りが騒がしくなってくるのです・・・。


 ざっと音がするほど綺麗に、そして一糸乱れぬ一礼を披露した護衛達。


 「・・・何のおつもりでしょう?」


 傍らのカイサが一歩進み出ると、静かに言い放った。


 その姿の先には、冴えない表情のフェリクス殿下が護衛たちの前に立ち、曖昧な笑い顔をしていた。


 「・・・い、いや、何ね・・・、最近またアランコの第三王子が令嬢の周りをうろつき始めたと聞いて・・・」


 「・・・それだけのために、このような大人数の方々で、私どものお嬢様を囲おうと?・・・少々妙な下心でもお持ちなのではありませんか?」


 「・・・そこらでやめておきなさい、カイサ」


 カイサに声を掛けて、私はまだ得体のしれない笑顔のままでいるフェリクス殿下に軽く一礼をする。


 「・・・それでどうだろうか・・・?」


 引き下がらないフェリクス殿下の様子に戸惑いを感じる。


 「・・・何がです?」


 「・・・私の用意した護衛を傍につけさせて欲しい」


 私は相も変らぬフェリクス殿下の様子にため息をつく。ちらりと肩越しに後ろに立つ護衛を見やる。するっと三人の護衛が近寄ってきた。一人は元々から私についているヴィルマルだが、後の二人は新たに国元の命を受けて急ぎやってきた護衛だ。カール・ストール準男爵とモルテン・オロフ準男爵は元々私付きの護衛だったが、私の家を守るために国に残った護衛だった。


 二人とも美男なのだが、カールは華のある美男、そしてモルテンは陰のある美男だ。もちろん見た目が派手なカールの方が行動も目立つ。国元でもカールは見かける度に違う女性と連れ立っており、護衛隊隊長であるロヴィーサも侍女頭のカイサも、浮つくなと戒めてはいたのだが結局直ることなくどうやら今でもとっかえひっかえの女性遍歴のようだ。ちなみに雇用主である私も時折苦言を呈しているが、護衛の腕も問題はなく、結局うやむやのままになってしまっている。・・・といって・・・、ん?・・・モルテンっていつもは何してたっけ・・・?


 『モルテンって、いつもは何してる人?』


 ぼそりと呟く私に、カイサがきっと睨んでくる。


 『お嬢様!ご自分の護衛のことを知らなくて命を下せますか!』


 『・・・知らなくても命は下せると思う・・・が』


 前を向いたまま小声で言い合っていると、フェリクス殿下が怪しい笑顔のまま首を傾げる。


 「・・・何かございました・・・か?」


 その王子に笑顔で返す。


 「・・・何もございません・・・よ」


 つぃっとカイサが傍に戻ってくる。声を潜める。


 「・・・特技は影ひそみだそうで」


 「・・・んな、アホな」


 私とカイサのやり取りに、フェリクス殿下が口を挟んでくる。


 「・・・やはり何がございましたよね?」


 「気のせいでしょう」


 納得できないと言う顔だが、笑顔だけは絶やさないフェリクス殿下。さすがナンパな人だ。


 「いえ、私の護衛はそれぞれが特技を持っておりますので、ご心配はいりません」


 「・・・ほ、ほっほう・・・」


 変な声を上げる方だな。そう考えると、きまり悪げにフェリクス殿下が視線を逸らす。


 「も、申し訳ない、思わず奇声を上げてしまった」


 「・・・少々目を見張ったぐらいですから、お気になさらず」


 そう答えはしたが、あんな声を上げる人だったのかなと、ちょっと間違えたかと思わないでもない。なんせ子のフェリクス殿下は私がほとんど興味を持っていない男性の一人だ。・・・興味がないと思ってしまった・・・。ちょっと失礼過ぎるかもしれない。とはいえ、フェリクス殿下は確かに私が了承した婚約者なのだが、経緯が経緯だけに私の方があまり熱心ではないことも確かだ。・・・フェリクス殿下は案外まめに書で近況を書いてきたり、遠出のお誘いやらが頻繁に来るのだが、私が筆まめではなく、戴いた書の返事をと思っている間に、遠出のお誘いを受けたりする。・・・いや、フェリクス殿下を嫌っているわけではないのだが、関心はフェリクス殿下が私に向けているものに比べて相当低いものだとわかっているのだ。


 そもそもこの婚約は国の母の要請によっての顔見せから始まっている。私としては次期王配となる男性に過度の期待はしておらず、無難に次期王を私が産めれば良いのだから、さほど外見などは重要視していない。出身国からの過度の要求が為され、それに便乗して何かと色々な無理を言わなければよい。それに自国の母が顔見せしろと言うぐらいだから、自国の不利になる人物を紹介するはずがない。要するに今の時点では問題視するほどの人物ではないはずなのだ・・・。


 しかし、この有様はなんだ?やけに何度も護衛を増やしたいとか、話してくる。私が今の護衛が優秀なので必要ないと断っても、何度も繰り返す。ついには今日のように、護衛を連れて来たとか。何か下心がありそうだ。


 今の私には、女性にしか興味がないと言う美男と、一向に色が増さない影の薄い美男というわけのわからない私付きの護衛が増えたのだ。今までの護衛の面々に、新たに加わった護衛が居れば襲撃にも対応できるはずだし、女性からの情報が必要ならカールに任せればよいはずだ・・・。あ、言葉が足りなかった。若い女性の情報を知りたければカールを使えばよい、のだ。


 私はこっそり傍らのカールを見る。・・・こいつ、私に向けてウィンクしよった!イラっとした私は思わず、カールを袈裟懸けで斬ることを想像して憂さを晴らす。・・・カールがたじろぐのを見てとった私は、そこで留飲を下げるのだった。


結局のところ、自分の婿様は誰でもいいかなと開き直っているのですが、本心は・・・と言うところでしょうか。

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