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第十二話 貴族子女の語る王国史①

今回の話は王国ができるまでのお話となります。本当は最初のころに投稿しようとしていたのですが、あまり読みたくない人のほうが多いのではないかと思って没にしていたのですが、なぜか、王国が成立するまでの前覇者となっていた帝国の話を投稿したくなったので、少しだけ手直ししたら前後編になってしまいました。


 私の祖国ログネル王国は、ログネルと呼ばれた種族の建てた国だ。ログネルは大陸の南西部の高原に居住した種族だった。実のところ、確かに子供から大人に至るまで、ほぼ全員、男女の区別なく剣を学ぶ。それは、ログネルの生い立ちに関係がある。


 ログネルという種族は、本来は穏健な考え方を持つ非定住の種族だった。家畜を育てながら大陸を巡る遊牧民だったが、ログネルの一家族が大陸の南西部にある切り立った崖を登ったところに広大な高地を見つけ、その高地で定住した。その話を聞いた他に流浪していたログネル達も合流し、定住を始めた。


 住む人数が増えてくると、穏健な異種族とはいえ、諍いが増えてくる。高地を見つけて最初に定住したログネルの一家族は、定住する土地を見出したことから別格な存在となっていた。さらには資質も高く、争い事を良く調停したことから、指導者としての役割が定着していった。指導者が決まると揉め事は少なくなり、ログネルは安心して住むことができるかに見えた。


 高地でのログネルの生活は定住とともに変わっていった。遊牧が主だったが、牧場を主とした酪農に変わっていき、さらには野菜などを生産する農業も行われるようになった。ログネルは遊牧をしていた頃よりも食に充足することができ、飢えに苦しむなどなくなった。

 ログネルは産めば育てることができるようになり、悪しき慣習となっていた間引きという忌まわしい所業もしなくてよくなったのだった。


 生まれてくる子を全部育てることができたため、種としては強くない子も育てるようになる。さらには外敵の存在もあり、ログネルは穏健な路線をとることが難しくなったのだった。


 外敵とは、この地方に住むログネルとは違う種族だった。彼らは高地が住むに適した土地と知ってしまい、短絡思考を繰り返した挙句、この高地を奪おうとして戦を仕掛けてくるようになった。敵対する種族は一つだけではなく、五種族もあった。せっかく手に入れた生活を手放せなくなっていたログネルは、これらの種族に対抗するため、戦えるものは女子供も武器を取り、戦に参加するようになった。三年ほどかかって五種族をすべて平らげたログネルは、五種族のいた土地も手に入れ、種族として隆盛していった。


 この五種族との争いはログネルの考え方を根本から変えた。女性も戦えることが分かり、男女の区別なくログネルの政治に参加することになっていく。区別がなくなったことで、兄弟間の諍いを収めるため、長子に家を継がせることにした。次子以降が別に家を建て、別の名を名乗るようになり、ログネルは種族として増えていった。


 こうしてログネルは「ログネル」と国の名を名乗り、高地を見つけたのち指導者となった家族を頂点に据えた国を建国することになったのだった。そして指導者以外のログネルは政治を司る貴族となった。


 ログネルの建国は征服された五種族の待遇も必然的に引き上げていくことになる。ログネルに忠誠を誓うものはログネルの元、重職を任されるようにもなり、国としての体裁も整っていく。

 最初に発見された高地に宮殿が作られ、戦に挑んで負けた種族を取り込むため、ログネルの貴族がその地に派遣され、国の規模は拡大していった。




 ログネルの噂を聞きつけて、いろいろな思惑の者が訪れた。友好的なもの、そして敵対的なもの。敵対するものは一方的な戦を仕掛け、そして負けて征服されていく。ログネルの版図は広がっていき、大陸の南西部の大半がログネルの勢力圏となっていった。そして友好的なものは、ログネルの庇護を受けたと願い、宮殿に詣でるようになっていった。その中に大陸の征服を目指す帝国があった。


 当時、大陸はログネルの民の間では「陸」と簡素に言っていたのだが、帝国は大陸を「アルトマイアー大陸」と名付けて呼び始めていた。最初は帝国から商人がやってきた程度だった。だが、それは商人かつ諜報を担うものだったのだろう。


 帝国はログネルと交易を開始した。当初は帝国側の一方的な商人の押しかけ商売だった。ログネルは帝国の思惑については関知せずだったが、組することも少なかった。


 そしてある時、ついに帝国から高官がやってきた。外務大臣と呼ばれるものだった。


 外務大臣は帝国を「わがシュタイン帝国は・・・」と初めて自国の名をつけて呼び、ログネルに大々的な交流を申し出た。だがシュタイン帝国にきな臭いものを感じたログネルの指導者は、種族間の交流は断った。だが何度も懇願する帝国側の使者に対し、根負けした指導者が何を欲しいかを尋ねたところ、使者は嬉々として話し始めた。


 当時のシュタイン帝国は領土を広げ始めたところで、他国への侵略を開始していた。侵略を急いでいるため、軍事力の不足を感じ、常に兵士を欲していたシュタイン帝国は、ログネルの噂を聞きつけて、敵対をしたくはないと考えていた。ログネルと敵対すれば、強大な力を持つ国の相手をしなければならない。そしてログネルは侵略を行いながら片手間に相手できるほど弱小国ではなかった。


 ところで兵としてのログネルは男女の差もなく戦に出るため、幼いころから剣を取り、戦について学び、さらには従軍するように今ではなっている。戦慣れしているものが多く、決して無理をしない。

 侵略戦争で慢性的な兵力不足に悩んでいた帝国は、このような種族ほぼ全員が戦うことのできるログネルを傭兵として利用し始め、大いにログネルの力をもって大陸の征服を果たした。


 ログネルは大陸の南西部を与えられ、制度の改革をし、「ログネル王国」と名乗り、王制を引くことになった。もちろん王はあの高地を見出した一家族の出身者だ。ログネル種族は領地持ちの高位貴族となり、公爵、侯爵、伯爵という爵位を与えられた。被征服民の中で際立ったものは下位貴族となった。子爵、男爵、そして騎士爵だった。

 高位貴族の領地は広く、下位貴族は広くはない領地を与えられた。ログネル王はログネル族に関しては家の長子相続を徹底したが、被征服民に関してはその家の裁量に任せていた。


 こうしてアルトマイアー大陸につかの間の戦のない平和な時代が訪れたのだった。




次回は王国史の後編です。

これが終わったら、第二王子の決意と婚約者令嬢の決心のお話・・・にできるでしょうかねえ。

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