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第九話 カフェでの出来事①

申し訳ありませんでした。

少々環境の変化があり、話の内容を読み直して何か違うような気がしましてこの話を何度も書き直しました。大筋には関わらないところでしたが、令嬢が可哀そうになりまして。令嬢は被害者になるのです。なので、最終的には助けたくなりまして、五回も書き直したのでこのほうが良いのではと言うところに落ち着きました。


 私はカップを手に持ち、飲む態勢になったままで、目の前に座る令嬢に視線を向けた。


 適切な呼び方がわからないので本人に知れたら怒られるかもしれないが、くすんだ色合いの金髪を軽く持ち上げるように後で造花を取り付けた髪留めで結わえ、そのまま先を背中に流したハーフアップの髪型。少々青くなった白い肌。あまりに目尻に向かって上向きの鋭く青い目。背はあまり高くなく、高めのヒールを履いて私の肩の上に頭が出るぐらいだった。


 あの声が聞こえた時、武器店の外に、第二王子殿下と、私、カイサと護衛のヴィルマルとでとりあえず出てみた。第二王子殿下の侍従だけは、気がかりになっているだろうが、武器店の者と贈り物のことを詰めるため残っている。


 外には若くて貴族らしい女性とその女性の侍女らしき二名、そして三名の女性の護衛らしい男性、さらに私の護衛が一人、第二王子殿下の護衛騎士一人が立っていた。その第二王子殿下の護衛騎士に向けて、一番高級そうなドレスを身にまとった若くて貴族らしい女性が、何事か早口な命令口調で話している。

 様子をちらりと見た限りでは、第二王子殿下の護衛が青い顔でしどろもどろに抗弁していた。


 『・・・イルムヒルデ・キルシュネライト伯爵令嬢・・・』


 思わずという形で第二王子殿下が呟く。


 『どちらの方です?』


 私は第二王子殿下と令嬢とに交互に視線を向けながら尋ねた。


 『・・・い、いや・・・、学友なんですが・・・、同郷の、エルベンの内務大臣キルシュネライト伯爵の娘です』


 予期しないことだったのだろう。いつもの丁寧な言葉遣いが崩れた第二王子殿下が答えたところで、件の令嬢がこちらに気が付いたのか、怒りの表情のまま近づこうとした。

 慌てた第二王子殿下の護衛騎士が動き、前に立ちはだかれた令嬢は、更に興奮が増して喚き始める。


 おや、貴族の令嬢の言葉とも思えない言葉が・・・。


 『あれが、殿下に色目を使ったログネルの下級貴族ですか!あんな女狐、排除します!』


 女狐か。一応女性と認識されているのは、単純に言うと嬉しい。これも第二王子殿下と街に出るとのことで、専属侍女全員があれこれ騒ぎながら選んでくれた衣装のおかげだ。まあ、いつもは仕事柄男性と見紛うような恰好をしているため、離れてみると男性に見えるらしい。ただ一応髪は長くしているから、男性に見えるとは思えないのだが。思い込みというものなのかもしれない。


 『お、お止め下さい!』


 護衛騎士が両手を前に出し、だが令嬢の体に触れないように手のひらを令嬢に向けて押しとどめている。


 ため息を漏らすと、第二王子殿下が令嬢に向け歩き出した。何とはなしに私もそのあとについて行く。


 『フェリクス殿下!どうしてなのです!わたくしと言うものがありながら、なぜそのような女狐と会っているのです!』


 『・・・やめてもらえないか?』


 護衛の横に立ち、第二王子殿下が口を開く。


 『・・・な、何を言われるのです!国ではいつもわたくしの傍に居て下さったのに、アリオスト王国に来てからはわたくしを邪険にして、こ、こんなめぎつね・・・』


 言い募る途中で私を見た令嬢の言葉が途中で消える。私を見た令嬢は息を呑んでいた。


 うん・・・?私のことを知っているとか?


 私が首をかしげると、後ろのカイサが咳払いする。


 『お嬢様、私が愚考いたしますが、お嬢様のご身分のことは、あのご令嬢がご存じのはずはないかと』


 ああ、そう・・・?じゃあ、なぜ途中で言葉を?


 令嬢の視線を追う形で私を見ていた第二王子殿下が、口籠りながら提案をしている。やはり少々動揺しているようだ。


 『・・・と、とりあえずここではなんだから、近くのカフェで話しましょう』


 この言葉に私達は近くの喫茶室に場所を移すことにして、冒頭部分に戻る。


 相手を観察しているのは令嬢も同じで、じろじろと言う言葉が似合いそうに私の全身を見ている。ひとしきり見終わると、最後は私の顔を穴のあくほど見た後、なぜか悔しそうに視線を逸らした。


 たぶん怒りのせいなのだろう、震える指でカップを持ち上げ、何とか貴族子女という優雅さを失わないギリギリの早さでカップを口に運び、お茶を口に含む。さすが貴族の令嬢、礼儀は弁えているようだ。


 「・・・」


 ちらっと見ると、第二王子殿下が何が気に食わないのか、眉をしかめて何か言いたそうにしている。


 令嬢がカップを戻した。怒りが抑えきれなかったのだろうか、カップとソーサーが触れて微かな音がした。


 令嬢が、カップから指を話すのが待ちきれないとでも言うように、第二王子殿下が口を開いた。


 「キルシュネライト伯爵令嬢。申し訳ないのだが、あなたの行為に今私は非常に迷惑をしている。私はご覧のように、アーグ・ヘルナル嬢に付き合ってもらい、私の新しい家族あての贈答品を選んでもらっていたところだ。

 あなたを立たせたままで話すのは失礼かと思ったので、このカフェにお連れしたが、ヘルナル嬢にはこれからお礼をしなければならない。そのため、あなたにはこのままお帰りいただきたい」


 「・・・」


 私が口を出すことではないので、私は黙ったまま口を開かなかった。しかし、本当は私はこの令嬢と同席することに同意したわけではない。


 令嬢は第二王子殿下をわけがわからないとでも言うように見つめた。


 「フェリクス殿下、わたくしは今の状態を理解しておりません。わたくしに何も話すことなく、こんなところで不貞をしておられるのですか!」


 「不貞?何を言うのだね?不貞とはどういうことだ?私には妻や婚約者は居ないのだが?」


 「・・・フェリクス殿下はわたくしと婚約したはずです?そのわたくしの傍に居ず、そこの女狐と一緒に居られれば、それはもう立派な不貞行為なのではないですか!」


 憤然たる表情で、令嬢が私を睨みつけながら叫ぶ。


 「・・・」


 何かわからないのだけれど、婚約しているとかの件は本当だろうか・・・。私はため息をつきながら、飲もうとして持ち上げたままのカップをそのままテーブルに戻す。


 「・・・何か激しく誤解しているようだが、私とあなたと、キルシュネライト伯爵令嬢との間には何もないのだがわかっているかい?」


 訝し気になった第二王子殿下は、心底わけがわからないという表情をしている。


 その第二王子殿下の表情を見ていないのか、無視しようとしたのか、令嬢が叫ぶ。


 「何を言われるのです!私は王家よりフェリクス殿下の婚約者に定められています!」


 はい?婚約者に定められた・・・?


被害者の令嬢はこの後、学園を辞め、国に帰ることにする、学園を辞めて、とある国の貴族を紹介されてそちらと婚約、学園を辞めず、とある貴族と婚約という大筋には関わることのないどれかの道を行くことになる予定です。

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