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第四話 俺様な婚約者候補⑨

申し訳ありません。今回も話が進みませんでした。


 「・・・王女殿下はアランコの王子を、王配として迎えるつもりはないと言うことでよろしいですな」


 侯爵がきらりと目を光らせる。


 「はい、まったく人の言うことを聞かない方は、私には無理です」


 「・・・そう言うことなら結構です。飛んで来た甲斐があったというモノです」


 うん。ログネル王国の恩寵をより多く受けられるのはどちらか、というところだろうか。ルンダール王国の思惑としては、アランコ王国の下になるのは受け入れられないというところかな。ログネルより国力が劣る国々の一つであるルンダール王国は次期の王と確約されている私の後見になることで、今代と次代の国の安定を望んだということだ。


 「よろしゅうございました」


 侯爵夫妻が安堵の笑みを浮かべる。まあ、夫人も貴族だから、夫である侯爵の思惑についてはわかっていそうだ。


 「・・・ただ、エディット陛下は悪戯好きですからなあ。今回の子倅のことも裏で糸を引いていないとは限りませんしな」


 侯爵の言葉に、私はふとにこにこと無邪気な様子を装って笑う母様の姿を想像した。さすがに女王であるエディット・グリングヴァルとてあの王子を歓迎するとは思えないのだが、何かの人柱として使うつもりなのだろうか・・・。


 アランコ王国の国力はログネルの十二分の一もないし、有力な持ち駒は大型船が何艘も接岸できる港だけ。そのような小国の王子が大陸の三分の二を有する王国の王女である私を望んでいるということなら、属国となることなく、ログネルの後見を引き出そうとしているとしか思えない。


 人物でというには、あのアランコのエルネスティ王子は国際的に評価が低くて、国防の王太子、貿易の第二王子のような実績はない。今までは公務というものはせず、ただ遊んでいただけ。どこかの夢物語のように書かれているような、汚れ仕事を引き受けているとかは、そもそもアランコ王国に暗部はないためにないと断言できるだろう。


 それならどうして女王である母様が私の相手の一人にアランコの王子を選定したかだが、時間稼ぎなんじゃないだろうか。・・・いや、違うか。顔が好みとかもないはずだ。万が一娘の私が気に入って、一緒になればいつも見ることが出来そうとか考えたとか・・・。


 いやいや、母様があんな自分一番の王子など気にいるはずはない。顔だって、良い言い方をすれば野性味あふれたお顔だから気に入る人はいるだろうけど、少なくとも私は好みではないし、母様の好みだって、私と同じ冷酷さの漂う切れ長の目を持った方なのだから。


 物思いに沈む私を見ていた侯爵がにんまりして口を開く。


 「殿下、陛下がどうして婚約者候補にあの子倅を入れたのか気になっておられるようですが、案外簡単なことかもしれませんよ」


 「・・・どういうことでしょう?」


 考えのまとまらない私が物思いから戻る。


 「・・・陛下のお考えはいい機会だからアランコを手に入れようとかではないでしょうか」


 「・・・」


 「つまりは、殿下と一緒になられればアランコに後見をする程度でしょう。ですからあの失礼な子倅をたきつけて、殿下に対する無礼を咎めて巨額な制裁金でも課すとかはどうです?まあ、ログネルの次期女王とは知らなかったとほざくでしょうが、そんなことはどうでもよい。アランコはどう落とし前を付けるつもりかとか陛下が言いだせば、結局アランコ側が折れるしかないのです」


 「・・・はああ」


 私のため息に気が付いただろうが、侯爵はそれに気が付かないふりで話を続ける。


 「あとは、アランコ側が我慢できなくなって何かしてくれれば、というところでしょうか。

 ・・・とにかく切欠は何でもよろしい。アランコに言いがかりをつけられれば良いのですよ」


 「・・・あまり褒められたことではないのでないですか?」


 「最初からアランコ側には選択肢はない。ログネル王国の強大さに我らのような小国では対抗できません。我がルンダールはログネルと血を同じくする国ですから今はまだ国を保てておりますが、そのうちにログネルに吸収されて無くなるでしょうな」


 侯爵がそれほど悲壮感もなく、淡々と話していたが、途中から夫人が侯爵の手を握ると、表情が崩れ、複雑な表情になった。


 「・・・女王陛下はルンダール王国を侵略をするつもりはないと思います」


 「・・・そうですな。打算的な話で申し訳ないのですが、殿下の留学の後見を引き受けたとき、我が家を残したい気持ちもありましたので。この留学を通じて、少しでもグリングヴァル家が恩義を感じてくれればと考えました」


 私が王位に就く暁には、ルンダールのフルトグレーン侯爵家は優先で考えるようにと命を下そう。


 侯爵夫妻は駆けつけてくださったその日は、私の侍女であり、食事担当のエレンの豪華ディナーをごちそうし、宿舎にお泊りいただいた。ただ、数日滞在していただくつもりだったのだが、仕事を放り出してきたということで、丸一日の道のりのため、帰途に着かれた。ちなみにこっそり買いに行かせた甘味の菓子をお土産にしたところ、上機嫌になられた。学園で学んだ時によく食べたらしい。ニコニコ顔が侯爵という貴族の方とは思えなかったぐらいだ。


 だが、アランコ王国のエルネスティ王子の扱いはどうしようか・・・。

 留学前には私の相手を、私自身が見つけられなかったら、親が用意すると言われていたが、あのアランコの王子では少々酷すぎる。



 そう思っていたところ、事件が起こった。

 



ちょっと大国のエゴを書きたくて出した第三王子でしたが、残すところあと一話で退場です。次話では静かにしていてくれるとよいのですが・・・。

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