第四話 俺様な婚約者候補④
ちょっと内容が題から外れていると思われると思いますが、俺様はまだまだ出てきます。ちょっとだけお付き合いください
一応両親に確認を取っておこうと思う。本当に私が気に入っただけで婚約者にできるのか。まあ、両親が何か言ってきても勝手にやるだけなんだけど。
と、そう考えたときに、そう言えばと思い出した。
「ねえカイサ」
「はい、お嬢様」
傍らに立つカイサに話しかける。
「そう言えば、私が留学するときに母様は婚約者について何か言っていたよね?」
「・・・仰る通りです。お嬢様が留学で気に入った方が居たら、連れてきて紹介するようにと」
なぜか、カイサが警戒するような視線で見てくる。
「でも、母様の選定であのアランコ王国の第三王子が来たのよね?」
「・・・左様でございます」
露骨に警戒してる。
「なぜ?」
短く尋ねる。
「・・・と仰いますと?」
「私が殿方を連れて行かないと思っていたから、あのわけのわからない自己中心的な王子を最初から選んでおいたのではないの?」
私の言葉にカイサが少々困ったようになった。目尻が下がり、口の端も下がる。
「・・・そうかもしれません。報告書で、お嬢様が親しそうにしていたメルキオルニ侯国の第三王子についてご報告をさせていただきましたが、私宛の返信にはメルキオルニ侯国の第三王子ではお嬢様のご相手としては不足であるから、いろいろ見繕っておくと書かれておりました」
「・・・」
すまなさそうな表情をするカイサを見て、ふっとため息をつく。
「・・・確かに私のお相手の方は、立場が限られるものねえ・・・」
「・・・ご両親の選定の中には、ログネルの貴族も基準を満たす者として入っているとお伺いしております」
「あ、やっぱりそうなんだね」
「・・・恐れながら、私の不詳の息子であるランナルも一時期選定に上がっていたと言われております」
カイサの言葉が過去形なのでランナルは今は選定から外れているのだろうけど。とはいえ、そうかあ、あのランナルが私のお婿さんかあ、顔もいいし、性格も申し分ないし、何しろ私をたててくれるし。いいかもしれない。
「ランナルかあ・・・いい案だね、それ」
私が笑顔になると、ぴくっとカイサが反応した。母親の顔になってから、私をすまなさそうに見て遠慮がちに口を開く。
「・・・お嬢様には申し訳なく思いますが、あれは覚悟などできておりません。お嬢様の婿などとても勤まりません。それにわが家は確かにログネルに名を連ねてはおりますが、最初はログネルに敵対した家の流れでございます」
「・・・」
先祖がログネルに敵対したことを大仰に捉えていることはわかった。ログネル王国は周辺の民族が敵対したら次々屈服させて規模を拡大させてきた経緯がある。サリアン家はログネル王国が成立して初期のうちに対立して、打ち負かされて傘下に入ったという言うなれば譜代に当たり、今のログネルの中核を担う貴族の一つなのだが、ランナルが私の婿になることを、カイサが嫌がっているのはわかった。どういう理由で嫌がっているのかはわからないが・・・。まあ、ランナルはサリアン家の長子で後継ぎだものね。大事に思うのはわかる。
「・・・お許しくださいませ」
「はあ、わかりました。でも私の婿が決まらない時のために最後の選択肢として考えておきますから。だってランナルなら私のこともよく知ってるし、カイサに似て顔もいいじゃない?」
私が少しだけ譲歩したら、結局カイサが折れた。
「はあ、畏まりました。そうならないことを願いますが」
「・・・私が義娘になるのが嬉しくないの?」
「こんなに愛らしいお嬢様ですから、本当に嬉しいですけど、持て余しそうですからねえ。・・・それにお嬢様のお相手は、それなりのお方でなければならないと思います・・・」
後ろのところは声を潜めたためによく聞こえなかったが、まあイイでしょう。
私は話を終えて、本来の目的である母様に手紙を書くことにした。
次回からメインとなる候補の登場です。
ヒロインについての事情を現在はぼかしてありますが、もう少しお付き合いください。想像していると思いますが、その通りですよ。