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第四話 俺様な婚約者候補②

例の肺の病気のワクチン接種で、熱が出ました。変な言葉使いをしているとかありましたらご連絡をお願いいたします。

さて少々変な人との婚約を親から打診されたわけですが、この変な俺様さんは本命じゃないです。親もヒロインも、そして作者も。


 「・・・控えなさい。お客様に失礼ですよ」


 動き出す気配がしたところで、私が声をかける。


 今日の護衛は私の専属護衛隊隊長のロヴィーサではない。ロヴィーサなら今の言葉に反応することはなかっただろう。エミリ・クルームはロヴィーサの弟子で、私の姉弟子になる顔立ちの華やかな美人だが、護衛対象である私のことになると我を忘れるところがあり、そのため思わずあの王子の言葉に反応したようだ。


 ぱたりと動きが止まる。


 「・・・申し訳ありません」


 しばらくして不承不承だとありありとわかる謝罪の言葉が聞こえる。私の乳母のカイサも我慢しているのだから、あなたも我慢してくれないと困るんだけどな、エミリ。でもカイサの顔は今見たくない。多分、相当恐ろしい表情をしているだろうと思う。地獄の獄卒もかくやという顔だろう。


 ログネルの民はすべてが、戦士となれる訓練を受けている。そのため、私の専属侍女と侍従たちはすべて戦える。だから今日の訓練の想定相手は、このアランコ王国の第三王子となるに違いない。『エルネスティ死ねや!』とか『許さんぞ!アランコの王子』とかの声がこだまするんだろうな・・・。思わず遠い目になる。


 「はっ、主人も田舎者なら護衛も田舎者だな!高貴な身分であるこの私に向かって詰め寄ろうとするとはな!」


 薄ら笑いで私と私の後ろに控えるエミリ、そしてカイサを流し見るエルネスティ王子の姿に相当の嫌らしさを感じる。


 「高貴さは感じられんが、ログネルという田舎から出てきたにしては、お前の容貌は私好みで合格だ。私と一緒になるというなら、そこの護衛も、ちょっと歳はいってるがそこの侍女もお前についてくるのだろう?なかなか見栄えの良い女たちが居るということになるな」


 こいつ下衆だな。カイサは旦那様居るっての。というか、カイサもサカリ王子のお相手にしたいわけ?

 確かにカイサも若い時の容貌は相当なもので、貴婦人と呼ばれていた時期に私の乳母になったが、その時は私を抱きながら粉をかけてくる、カイサのことをよく知らない外国出身の騎士を相当邪険にあしらっていたと聞いている。まあ、今も宮廷貴族の旦那様と離れているけど、国防を担う辺境騎士団の騎士団に入った息子さんとは子離れしているし、旦那様と息子さんとは文を欠かしたことはないらしいし。

 よく考えてみたら私の周りの顔面偏差値高くない?


 「・・・謹んでお断り申し上げます・・・」


 「・・・キモ・・・」


 あ、思わず二人とも漏らしちゃったようね。後で叱らないと・・・、いや叱らなくていいや。今の発言私も含まれてるみたいだし。あ、私の気持ちは後のエミリの言葉とまったく同じ。キモい。この王子キモいわ、だった。


 だが、この目の前に座る王子は、これが通常運転なのだろうか、私に向けた嫌らしい視線のままでさすがの私も腹が立ってくる物言いをしてくる。


 「なんだ、なんだというのだ、その無反応は!この地位も顔もアルトマイアー一のアランコ王国の第三王子エルネスティの嫁になれる栄誉に頭が付いて行かないとかか?まったくしっかりしてほしいものだな!」


 それから視線を私の後ろのカイサとエミリに向け、脂下がった表情のまま言ってのける。


 「そちらの二人もこの娘と一緒になった折には可愛がってやる」


 ん?カイサとエミリが気に入ったってことよね?さすが、私の専属侍女と専属護衛、美人揃いなのはわかってた。


 「・・・遠慮致します・・・」


 「・・・無理・・・」


 あ、私もこの性格と顔は好みじゃないわ・・・。


 そのあと、少々むかついた私は、終始ログネルの田舎に行かなければならない可哀そうな僕ちゃん、アランコ王国は大陸一を連発した、この第三王子を適当にあしらい、早々に切り上げてお帰りいただくことになった。ただ、第三王子は私の婚約者となったと思い込んでいるらしく、サロンから追い出そうとしたときに、私になぜか高級布地を送れと無心して去って行った。


 空気と化していた王子の侍従がしきりに汗を拭っていたことを私は知っていたが、去り際に一人だけ戻ってきて、腰をほぼ九十度に曲げて、謝罪していた。本人に初めて来た婚約の打診なので、舞い上がっておりました、元々あまり考えもしない性格なので、失礼を申し上げました、ログネルとの友好がこのことで無くならなければ良いのですが、もしよろしければ、また会うことをお許しください・・・、云々。曖昧な表現で何も言質も与えないで帰すことに。


 いや、この第三王子と一緒になる未来はないから、謹んでお断りするけどね。両親からは私が気に入ったら婚約者にすると手紙に書いて寄こしてるし、私の専属侍女頭であるカイサに届いた書状にもそう書いてあることを私も確認してるし、ね。


 あの侍従は、何度も何度も九十度に頭を下げて謝罪していたが、終始アランコ王国の港の存在を笠に着て、ログネルとの間の友好がなくなると、港使わせないよという優越感が垣間見えていた。

 だけど、アランコ王国の港など別に使えなくてもいいのじゃない、北の大公の領地にある港は雪に閉ざされる冬以外なら水深が深い港だしね、いざとなれば拡張工事なんかしちゃえばさ、アランコ王国なんかに頭下げなくても良いのじゃない、なんて思ったのは秘密。どうせ貿易なんて、東北の皇国との間のことなんだから。




如何でしょうか。俺様さんはまだまだ登場する予定ですが、この人、質が悪いんです。会ってみて思いのほか見た目が良く、気に入って欲しくなりまして付き纏おうと考えました。

読んでもらいまして、誠にありがとうございます。変な表現などありましたら、ご連絡ください。

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