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ジュリアンの善行とハワードの暗躍

「こんばんは。ロックフォロー君。それで君の判断を訊こうかな?君はどうするの?」


「!!」

 ロックフォローはすべてを知るハワード王太子に驚愕した。そしてどうするべきか考えをめぐらせている。


 返事を待つふとした間に何の前触れもなく昔の思い出がハワードに蘇った。


 

まだ・・・僕が7歳の時、色々な座学や剣術やダンス等を本格的に習い始めてパンク寸前だったあの頃。


「ハワード様、どちらにいらっしゃるの?」乳母が必死に探してくれて悪いと思っても庭園の池の側から離れられずにいた。

 もう愛想笑いも良い子でいるのも全て疲れて池をボーとただ見つめていた時に隣に気配を感じた。

 何も話しかけてこず、ただ隣で一緒に座ってくれてそっと暖かさを分けてくれた人。

 それがジュリアン嬢だった。

 まだ僕より幼いのにジュリアン嬢は何か話しかけてくる訳でもなく穏やかな池の水面のように凪いだ雰囲気を醸していた。

 僕は心が落ち着いて気がつくと浅い眠りについていた。

 ハッと目を覚まして隣を見たらジュリアン嬢の美しい緑の瞳と目が合った。恥ずかしく落ち着かない気持ちになった僕を察したようにジュリアン嬢は「疲れていたのですね。もう眠らなくて良いですか?休める時は休んだ方が良いです」と優しく微笑んでくれた。後にして思うとアレが幼い心に恋が落ちた瞬間なのだろう。


 狭く薄暗い馬車の中、小さく大切な思い出に浸っている間はあまり無く目の前でうつむくロックフォローがおもむろに顔をあげ声を上げた。 


「わ・・・私は公爵家令嬢のソ、ソフィア様にジュリアン嬢のことを誘惑するよう言われ・・・恥ずかしくも脅されておりました。学術院初日に世間知らずな私の元に公爵家のソフィア様が近づいて来られました。そこでつい軽くお声をかけてしまいました。すると無礼を働いたからと・・・公爵家より抗議が我が子爵家にくると脅され・・・でももう今宵、王太子様に逆らうことが出来ないと申したところ・・・子爵家に脅しが入るかと思います。どうか助けていただけませんか?」

 随分心に重荷を背負っていたのだろう。すべてを話したロックフォローは小さく安堵の息を吐き放心して座っていた。


 ほー随分あっさりと証言が得られたか。   

 さて大分証拠が集まってきた。

 

 

 ジュリアン嬢との婚約者内定が私希望で内々に決まりかけた時、あの魔力量と加護の認定式があった。

 本来なら魔力量の水晶はいかに膨大な力を流しても暴走することは無い。それにも関わらずジュリアン嬢の魔力暴走の後に砕けた水晶に細工を見つけることは出来なかった。

 いつ目覚めるか分からないジュリアン嬢を婚約者にすることは叶わなくなり公爵家令嬢がねじ込んでくる形で収まった。

 私は到底許すことが出来ず父王の陛下に本格的な婚約は今暫く待ってもらい仮としたのにも関わらず強引に王妃教育も始めてしまった。


 疑いが確信に変わることが幾度とあったが巧妙に証拠が出てこない。

 公爵家の膨大な資金で中々に尻尾を出すことがないので私はソフィア嬢に狙いを変えていった。


 あからさまにソフィア嬢にマークをする訳にもいかないので泳がす形で王家の影をつけていたらある日から子爵家のロックフォローに接触するのが分かった。

 そしてその日からロックフォローのジュリアン嬢追いかけが始まった。

 私は腹の底から不快感に苛まれたが公爵家の縁をキッパリと断ち切るために完全証拠となる証言を得て…また芋づる式に他の証拠が出てきた。ソフィア嬢は公爵家と次期王妃の権威をチラつかせ地位の低い貴族や平民を虐げていたのだ。

 私の休学中に見つけた証人と証言にだいぶ駒は揃っていった。



 そして一番ビックリしたことといえばジュリアン嬢が過去にした善行が返ってきたことだろう。


 ジュリアン嬢が過去にケールズ領の治療薬や安全に薬を運ぶ装置を作り色々手を尽くしたあの日。


 そのすぐ後にある者が己の罪に苦しむことになった。


 加護の認定式の前日夜遅く。神殿の中の水晶を弄る神官が一人。水晶には巧妙に反発魔法と亀裂を入れる。そして後から魔法の痕跡が消えるような古代魔法を二重にかける。

 本来ならこの優秀な神官は明日のジュリアン嬢の魔力暴走をさせるために公爵家が何年も前から遣わせていた。

 ヴァロス公爵家は自身の娘ソフィアを王太子妃にしようと企んでいたがトロイオンス侯爵家のジュリアンという優秀な娘の存在をいち早く聞きつけ排除を目論んでいたのだ。


 神官には体の弱い息子がいてケールズ領で療養をしていたが治療費が賄えず公爵家の言いなりとなり水晶に細工をした。


 しかしその後ケールズ領で流行病が起こりそれをジュリアン嬢が助けたことを知った神官は大きな過ちに気づき激しく後悔することとなった。

 公爵家からの縁を切り神官もやめケールズ領にて息子と暮らしながら日々後悔をしている時にハワード王太子様が訪ねてきた。


 何故、王太子様がこの地に来たのかは分からなかったが罪悪感に苛まれていた神官は

「私は・・・このケールズの地と大切な息子を助けてくださったジュリアン様に酷いことをしてしまいました!私はどうなっても構いません!どうか息子だけはお守りください」

と懇願し全てを打ち明けた。


 もう王太子ハワードの前には公爵家の暗躍する証拠や証言が全て揃った。


 ふーと静かに息を吐き晴天の空を見上げたハワードは心の中で思う。



・・・さて、婚約破棄?いや公爵家有責の婚約白紙といたそうか。

ハワード王太子は黒い笑みを零した。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

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