表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

不穏な学術院のはじまり

学術院には先に通っていた優しい兄ウィリアムと兄付き乳兄弟のトムスにメイドのアリーの4人で通った。兄は魔力より剣術が優秀で今年が最終学年になる。


 普段、何故かとても忙しい兄と乳兄弟の二人は朝の場でのみ会うことが無くなったのがとても残念だった。一年だけの共通年だが良い思い出が出来ればと思う。


 馬車から降り兄とトムスと別れ暫く歩いていると最近仲良くなった一つ年上の伯爵家のマニラと伯爵家のダイアナが声を掛けてきた。


 同じ普通科と魔法学の専攻で穏やかな二人とすぐに意気投合して仲良くなった。

 学術院に通うことになり確かに友が増え自分の世界が広がった。



 しかし一つ二つと困ったこともある…


その一つが公爵家のソフィア様だ。本来なら卒業して然るべきなのに王妃教育が忙しいと言い一年休学。ハワード王太子様が休学するからとまた一年休学し結局二年間の休学後また通い始めたのだ。王太子ハワード様より一歳年上なのでなんとか同じ年に卒業されようと必死のようだ。


 廊下や庭園、食堂などで顔を合わそうものならドス黒いオーラを出して睨みつけてくる。また移動教室等で廊下や庭園で会おうものならこっそり足を引っ掛けては転びそうになるしクラスに戻ると私物が無くなったり壊されたりしていた。

 証拠が無いし爵位も上のソフィア様にこちらからお声をかける訳にもいかない。ソフィア様の取り巻き令嬢たちにも何度も口さががない悪口をコソコソと囁かれ良い気分ではいられなかった。


 また私のクラスにいる子爵家のロックフォロー様が何故か私に付き纏ってくる。

 教室を移動しようとするとやたらと声を掛けてきて道を塞ぐ。

 マニラとダイアナが庇ってくれてなんとか抜け出す。

 

そんなある日、一人で廊下を歩いているとロックフォロー様がまた声を掛けてきた。

「ジュリアン嬢、少し私に付き合ってくれないか?」と腕を掴んできた。

驚いた私は

「おやめください。今は急いでいるのでご容赦願います」と一生懸命に腕を離そうとするもビクともしない。


 ここで重量の加護を使おうか迷っていると


「やめたまえ!」と地を這うような冷えた声が聞こえてきた。

後ろを振り返るとハワード王太子様があからさまに不機嫌に眉を寄せロックフォロー様をにらみつけている。


「聞こえないのか?手を離したまえ」


「あっ!」そう言って驚き固まっていたロックフォロー様は後ずさりして急いで逃げ去って行った。



「大丈夫かい?やっぱり早々に学術院に来たのだね。貴族令嬢達は軒並み15歳まで領地を出られない方が多いからね。ジュリアン嬢なら早々にこの学術院に来るだろうと思っていたよ。昔から勉学が好きなようだったからね」


「ハイ。勉学と申しますか好奇心が勝ってしまうのです。それで学術院に入ることを楽しみにしておりました」


「そうか、王立図書館でも様々な分野の図書に学び新しい本を運び入れ古い本を入れ替える際には重量の加護で手伝ってくれたそうだな。また図書司書達から古書の一覧表がすんなり出来たと喜びの報告があった。本当に凄いことだよ」


(えっ?何で知っていらっしゃるのだろう?恥ずかしい)

私が顔を赤くしているとハワード王太子様は


「もう帰るのかな?馬車まで送ろう」と送ってくださった。

 

メイドのアリーもハワード王太子様を見てビックリしていたけど流石に顔には出さずそっと頭を下げた。



 深夜のヴァロス公爵家の屋敷ではソフィア様とロックフォロー様が小さなテーブルを挟んで話しをしている。

「どうしてジュリアン嬢を靡かせられないのかしら?学術院でも女たらしの名が泣きますわよ。子爵家が侯爵家の嫁を貰えば多少なり爵位も上がるのではなくて…ふふふ、次期王妃の私がのちのち爵位を上げるように口添えしてもよろしくてよ」


「僭越ながら子爵家風情では侯爵家に声をかけるのは大変なのです。何より王太子様が睨みを効かせておいてで…」


「あら、ふふふ、子爵家風情が公爵家の私に声をかけたのに何を躊躇うのです?」


「それは…田舎出の私が学術院に入りたてでソフィア様を存じ上げなかったからで!どうか私はこの話は降ろさせてもらいます!」


「・・・そう。良いわよ。フフフ・・・貴方の御家がどうなっても知らなくてよ」


 

長い沈黙の後、震える声で


「でも・・・しかし・・・やはりハワード王太子様を敵に回すのは私には無理です。どうかご勘弁を・・・」



「ふん、残念ね。覚悟なさい」ソフィア様の温度を感じない声が微かに聞こえた。



 その後、この判断が子爵家を救うことになるから運命は分からない。




 足早に公爵家を出たロックフォローの目前に黒尽くめの男二人が声をかけてきた。

小さな声で

「静かに。私たちについてきなさい」


 二人の顔を見て小さく息を呑んだロックフォロー。(二人の顔には見覚えがある…あっ!トロイオンス侯爵家の長男と確か乳兄弟だ…何故?)逃げる事もできず震える足に力を入れてなんとかついて行く。


 なんの紋章もない真っ黒な馬車の中に腹を決めて入るとハワード王太子様がいらした。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

とても嬉しいです。


よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(__)m。



そしてこれからの励みになりますので

面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して

いただければ幸いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ