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まずは10歳のこの子の世界に慣れようと思います!

大体6話程度になる予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。ゆるゆる設定ですが温かく見守っていただけると幸いです。

 

 目が覚めると景色の違いに声も出なかった。

(ここはどこ? 私は今ドコにいるの? )


 現代日本の小さなボロアパートで、半年間連続勤務の残業続きがたたりボロボロだった私は、気を失った様に寝入ったはず? それなのに目を覚ますと、大きなお部屋でキラキラした家具にふかふかのベッドの上だなんて…… 金色の髪がサラサラと肩を滑り、手で触れてみた。

(キレイ……

 ん?手が小さい!)


(私って今、子供なの? なんで!どうなっているの? )

 混乱から涙がじわじわと湧いてくるのを止められそうになかった…… でも声を出して泣いて良いの? 頭も次第にクラクラしてきた。


 そんな時、薄い天蓋のカーテンを開けてこちらを覗くメイドと目と目が合った。


「!!ジュリアン様、目が覚めたのですね!ご気分はいかがですか? 少し失礼いたします 」

 メイドの手がそっと、私の額に添えられ熱を測る。

「良かったですね…… 特に熱はありません。 もう大丈夫そうですが、どこか辛くありませんか? 」

 メイドはホッと安息をし

「今、お水をご用意し… 侯爵家の皆様やお医者様にお声をおかけしてまいりますね。 暫くお待ちくださいませ 」

 メイドが部屋から出るのを見送ると、まだ頭が混乱している私は、とうとう容量を超えてしまい目の前が真っ暗になった。



 さて、次の日になると、その後の話を聞く事ができた。 私が目覚めた事を家族中が喜び、お医者様からは完治したことが宣言されるや、屋敷中が歓喜に湧いていたそうだ。

 私は魔力暴走が起き、そのまま一生目が覚めないかもしれないとされていたのである。


(もしかしたら… 本当のこの子は死んでしまったのかな? 日本での私も… 死んでしまったとか? )


 心が押し潰されそうな気持ちになったが、とにかく状況を把握したかった。


 私はメイドのアリーに

「なんだか目が覚めて気付いたの…… 私… 色々忘れてしまったみたい… 」

(日本では研究開発がしたくて、理系の大学を出て就職。 重量計の会社でバリバリ働き28歳! 仕事が楽しくなって自分をどんどん追い込んでばかりだったあの時、知らぬ間に人生が終わってしまったなんて…… でも目が覚めて、どんどんこの子の今までの人生がフラッシュバックの様に見える。 まだ頭の中でうまく整理できないけど…… )


 混乱して、ソワソワする私に

「ジュリアン様。 実は、お嬢様が魔力暴走を起こしてから、 三ヶ月間も眠っておられました。 なので混乱するのも当たり前でございます。 なんなりとこのアリーに聞いてくださいませ 」


「アリー、私は何で魔力暴走が起きたの?」


「ハイ、ジュリアン様は10歳の魔力量測定と加護を調べる為に神殿に行かれました。そこで…このトロイオンス家の象徴である重量の加護をいただき…いよいよ魔力量測定装置の水晶に手を置いた瞬間、魔力暴走が起きてしまいました」

 そして苦しそうな顔をして下を向くアリー。


「そ…そうだった…の」


(私に重量の加護?前世で重量系の会社で働いていた因縁めいたものを感じると少し不貞腐れてしまいそうだ。それにしても10歳で死んでしまったこの子は可哀想に…)


「お父様とお母様は今どこにいるの?」


「ジュリアン様が眼を覚まされたことを神殿と王家に報告に参っております」


「そ…そう。私、どうなってしまうの?」


「ハッキリは分かりませんがジュリアン様は元々ハワード王太子様の婚約者となるはずでしたが長らく眼を覚まされなかったので・・・ヴァロス公爵令嬢のソフィア様が決まりました。侯爵様のお帰り次第にお話があると思いますのでどうぞお寛ぎくださいませ」

 そう言いながらアニーは香りの良い紅茶を私の前に置いて部屋の隅にそっと移った。



 夕方、王城から帰った両親に応接室に呼ばれこれからのことを聞いた。

「ジュリアン、まだ君は起きたばかりで体調も回復しきっていないね。王太子妃教育も難しいと思われ・・・王太子の婚約者は公爵令嬢のソフィア嬢に決まった。ジュリアンはまず体力気力の回復に努め14歳からの学術院へ進学しゆっくり婚約者を決めようではないか。兄のウィリアムも学術院に通い始め順調に通っているのだからジュリアンも楽しく通えるだろう。安心して良いのだよ」

 お父様の暖かい言葉に私はホッとした。


「ハイ、ゆっくり回復に努めいずれこの家のお役に立てる様励んでまいります」

 私は今世の家族の暖かさに恩返しが出来るよう頑張ろうと心に誓った。


 それから私は少しずつこの世界に慣れ、またこの子の中にあった記憶が合致することが多くなり違和感が無くなっていった。

 この3年、前世の知識と今世の知識に魔法の世界の楽しさ故どんどん私の中の好奇心や探究心が刺激され溢れそうになっていた。


 そんな時、王家から急な呼び出しが我がトロイオンス家にかかった。

 お父様ばかりが行くと思っていたら何故か私も一緒に呼ばれる。

 訊くところによると今、王領の西側ケールズ領に流行病が起きつつあった。

 早くに情報を得た王家は早々に薬の用意をするよう指示を出したが中々配分量が決まらない。

 また何が足りないのか何が悪いのかが分からない。

 困った王家は我がトロイオンス家の力が何か役に立つかと相談に来たのだ。また魔力暴走するほどの私の魔力量が何かの役に立つかもと一縷の望みと一緒に呼ばれた。


 私とお父様は今までの情報の束をマジマジと眺め上から手をつけていった。そこには失敗に次ぐ失敗の研究結果と失敗魔法の呪文を記した跡。


 お父様は

「ジュリアンは難しかろう。陛下も何故こんな小さな子まで呼ばれたのか。辛いようなら先に帰って良いのだよ」


 私は内心、前世の研究を思い出し心が浮き立っていた。

「お父様、私はこれまで密かに色々と勉強してまいりました。また魔力暴走しないよう魔力調整の方法も探ってまいりました。是非この貴重で大切なお仕事を共に臨ませてくださいませ」


「うっ!ジュリアンが尊い…」

 私はいつも『失敗は成功の母』と心から信じている。一つの失敗が成功の道標と思っているので何か失敗の原因だったのか…失敗の原因を羅列していく。

 また魔法の失敗も羅列していく。


 流行病にまだ変異がないかも同時に調べるため顕微鏡の中を覗くと精度が悪い。

 私は魔力で原病の状態が分かるよう顕微鏡マットをよりクリアーにしていった。


 良かった!今ならまだ間に合うわ!やはり止めるなら今だ!変異が起き始めると面倒だからだ。

 今進めている魔法の解析は私にはまだ早いのか手出しは出来なかった。

 しかしケールズ領から病気が出ないように魔法陣で覆ってもらう。

 また、今世にはないマスクの役割が出来るよう布で口と鼻を覆うことを伝える。

 私のような小さな子供の言うことを少しの望みがあるならと聞いてくだることに力をもらう。


 その間に薬の調整を試みる。

 我がトロイオンス家はほんの僅かの量も狂いが出ない。

 電子検査機並に全く同じ量の薬配分が出来るので実験に狂いが生じづらくなる。

 このおかげか少しずつ薬が出来つつあった。

 しかし何度試してもケールズ領に行くとうまくいかない。

 焦るお父様や王家の薬事部門の方々をみて私も模索する。

 そんな時に前世の仕事でセンサーマットや機材の改善がしいては薬品の向上に役に立つことを思い出した。薬だけではダメなのだ。

 出来た薬の管理や運ぶ時の安定性や維持までもがワンセットなのに・・・全てがぶつ切りのように繋がっていない。

 先ずはこの仕組みの改善も試みる必要がある。

 そんな時に14歳になり少しずつ王家の仕事を始めたハワード王太子様がこの一連の指揮をとってくださることになった。



 次の日には急ぎ現れた凛々しく黒髪に碧眼の王太子がいた。私の中に微かにトクンと胸が高鳴った。私の中のこの子の記憶かな?と思う。


「ジュリアン嬢、昔一度お会いしたことがあるのだが覚えているだろうか?」


「えっ?申し訳ありません。私は魔力暴走により幼い頃の記憶が曖昧でございます」


 ゴメンね、今世の私には王太子の記憶が無い。この子の記憶にもハッキリしたものが無い。でもモヤモヤと微かに何かあるのだけど…。


 少し寂しそうな顔をしたハワード王太子が

「そうか。此度はケールズ領のことに協力してくれて感謝する。ジュリアン嬢が言った連携が取れていないことと設備の不備について聞きたいのだが」


 そこで私は作らなくてはならないシステム構築を考え王太子様にお伝えしその他には重量の加護の応用で密着など駆使して金属同士やガラス製品、材質の違うものも強引に魔力の許す限り薬剤輸送のための温度管理や揺れに強い箱を作り上げていった。


 後はお父様や薬事部門、王太子様に任せて大丈夫なハズ。

 重量の加護で寸分の狂いもなく流行病に効く薬を揺れと温度管理の徹底した箱に入れ王太子様の指揮のもと必要な場所に必要な量が適切に運ばれ一つの流れがキチンと作られた。


 これがモデルケースになりどこの領地で流行病が発生しても大丈夫だろう。


 疲れた私は薬事部門のソファーで寝てしまった。そっとハワード王太子様が私の顔を見ているとも知らず。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

とても嬉しいです。



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そしてこれからの励みになりますので

面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して

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