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第31話 誠の持つ『力』について

「それにしてもかなめちゃん」


「なんだよアメリア」


 細い目をさらに細めてアメリアがかなめに顔を近づける。間に挟まった誠は二人の胸に体を当てまいとジョッキを持ったままのけぞるように反り返った。


「勤務中は誠ちゃんと野球のことで盛り上がってたじゃない……いろいろ調べたんじゃないの?誠ちゃんのこと」


 イヤらしい笑みを浮かべつつアメリアはビールを飲み干してジョッキをカウンターに叩きつけた。


「なんだよ……調べちゃ悪いのかよ」


 ラムのグラスを傾けてかなめがアメリアをにらみつける。


「模擬戦だって負けてあげたんじゃないの?実は」


「馬鹿言ってんじゃねえよ。アタシはマジだった。こいつが格闘戦以外は並み以下ってのは知ってたけどあれほどとは思わなかった。そんだけだ」


 アメリアの勘ぐりを迷惑だというようにかなめはそう言って目を逸らした。


「あの不思議な板みたいなのが無ければ僕は負けてたと思うんですけど……。アメリアさん、教えてください。あれは何なんですか?」


 誠は真剣な顔をしてアメリアを見つめた。


「あれねえ……誠ちゃんの私生活が監視されていたことと関係があるのは分かるわよね」


 少しまじめな表情を作っているアメリアの言葉に誠は静かにうなづいた。


「つまり、誠ちゃんには普通と違う力があるのよ……詳しくは言えない。それを誠ちゃんが知ればこのままうちを出て同じように監視される生活に戻った時に命取りになるかもしれない。そんなの私は嫌だもの」


 そう言うとアメリアはビールをあおった。


「やっぱりこいつは……『法術師』なのか?」


「『法術師』?なんですそれ?」


 かなめが突然言い出した『法術師』と言う言葉に誠は戸惑いつつアメリアを見つめた。


「クバルカ中佐。なんであんなにちっちゃいのに『人類最強』なのかわかる?」


「なんでそこでクバルカ中佐が出てくるんですか?」


 話題を逸らされたと思った誠がそうアメリアに詰め寄るが、彼女の顔は真剣だった。


「そりゃあ……天才的な勘とか、反射神経とか、力でなくてなにか凄いところがあって……いや、クバルカ中佐が『法術師』だから……ですか?」


 誠はそう言ってアメリアの顔を覗き見た。


「そう。中佐には『身体強化』と言う力が常に発動しているの。だから速さだけでなく力も『人類最強』。プロレスラーだって中佐と腕相撲したら完敗するわよ。まあ、中佐はちっちゃいから握り合うことができないでしょうけどね」


 そう言ってアメリアはビールのジョッキを手に持った。


 誠は周りを見回した。


 店内は『特殊な部隊』の隊員達ばかりで占められている。秘密が漏れる心配が無いので誠に真実を話しているんだろう。


「でも……そんな力があるならなんで発表されないんですか?遼南内戦ではクバルカ中佐はエースとして活躍していますよ。それが『法術師』としての力によるものだとわかったら……」


「分かったら何なの?地球人に利用されるだけよ。地球人は遼州人の『力』を利用しようとしている。遼州にしても、地球圏と距離を保つには『法術』があるのかないのかはっきりしない状態の方が都合がいいの。だから誰も発表しない……まあ、誠ちゃんはあまりに『法術』が普通の環境で育ったからよくわからないかもしれないけど」


 アメリアはそう言うと口の渇きをいやすべくビールを飲み始めた。


「それってどういう意味なんですか?」


 目の前の糸目の大女が言う『法術が普通の環境』の意味が分からず、誠はそう聞き返した。


「いずれ、貴様も知ることになる。だが、酒に酔って聞くような話では無いんだ」


 それまで黙っていたカウラがそう言って焼き鳥の並んでいる皿を誠に差し出した。


「確かに……そうですよね。いつか教えてくださいますよね」


「約束する」


 誠はカウラの差し出した皿から砂肝を取ると口にくわえた。



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