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第126話 ぶっ壊れた人造人間

「そりゃあ、愛って奴じゃねーの?」 


 ボソッとランがつぶやいた。


 その場にいた誰もがランの顔を見る。


 ランは自分でもつまらない事を言ったなあと言う表情を作る。隣でクエの身を頬張っていた軍医は彼女にかかわるまいと他人の振りをする。そして、また直立不動の姿でかかとを鳴らして敬礼したカウラに全員の視線が集中した。


「サラ!サラ・グリファン少尉!」 


「ハイ!大尉殿!」 


 その場にいた誰もがカウラに絡まれることが決定したサラに哀れみの視線を投げた。特に島田は彼女を助けに行けない自分の非才を嘆いているような顔をした。


「愛とはなんなろれす?サラ。おしえれもらうしか、ないのれす?」 


「教えろったって……ねえ……ひよこちゃんに聞けばいいんじゃない……あの子のポエムの題材とかに有りそうだし」


 サラの表情は明らかに危険を感じており、すぐにでも逃げだしたいように見えた。ただ、誠は彼女と島田の日常を知っていたので、二人の意見が全く参考にならないということを知っていたので力を込めて立ち上がった。


「カウラさん休みましょう!さあこっちに来て」 


 誠はサラに絡もうとするカウラを両腕で抱え込んだ。


「もっとするのら!もっとするのら!」 


 次第にアルコールのめぐりが良くなったようで、全身の関節をしならせながらカウラが叫んだ。


「こりゃ駄目だ。神前、ベルガーを部屋まで送ってやんなよ」 


 クエのだしの効いた鍋でうどんを茹でながら嵯峨がそう言った。


「奴隷が変な気起こすと面倒だからな……アタシが運ぼうか?」


 そう言いながらかなめが自分を見る瞳に殺意がこもっていることを誠は理解していた。


「そうよね私も手伝うわ。それとそこの林軍曹!福島伍長!」 


 巻き込まれたアメリアがゆっくりと動き出す。島田の兵隊では体格がいい林と福島は素早くカウラのそばに立った。


「クラウゼ少佐……本当に自分達でよろしいんでしょうか?」


 二人の目がカウラの細身の(からだ)を舐めまわすように見ているのに気が付いた誠は、この二人を指名したことがアメリアのカウラへの嫌がらせであることをなんとなく察した。


 二人は誠の両脇に走り寄って自分の『女神』であるカウラに手を伸ばそうとする。


「林!福島!目が邪悪すぎる!神前!オメーは体力あんだから一人でなんとかしろ!」 


 隊を知り尽くす『偉大なる中佐殿』の一言に二人はひるんで立ち尽くした。


「そうなのら!タレ目おっぱいとつまらない奴はひっこんれるのな!誠!いくろな!」 


 そう言うと壊れたようにカウラは笑い始める。


 誠は彼女を背負って、そのまま宴会場であるハンガーを後にした。

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