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第123話 ご発声

「静粛に!では、隊長!ご発声を」

 

 ランの『空気を読んだ』その声に、周りのものが嵯峨のテーブルを見る。既に嵯峨は甲種焼酎のお湯割りにカボスの汁を垂らしたものを飲んでいるところだった。


「すまん。ラン頼むわ……おまえさん『偉大』だし」 


 やる気がなさそうに嵯峨はランに丸投げした。


「じゃあ失礼して」 


 ランが周りに普通の声で挨拶する。その態度はいつも繰り返されていることのようで初めての誠にもあまりに自然に見えた。


「総員注目!」 


 ランが座椅子からかわいらしく立ち上がるのを見ると島田が大声で叫んだ。土鍋を前にしてじゃれ付いていた『特殊な部隊』の隊員達は居住まいを正してランに向き直る。


「実働部隊隊員諸君!今回の作戦の終了を成功として迎える事ができたのは、貴君等の奮闘努力の賜物であると感じ入っている!決して安易とは言えない状況下にあって、常に最善を尽くした諸君等の働きは特筆に価するものである!私は諸君等の奮闘に敬意を、そして驚愕の念を禁じえない!」 


「いつもの事ながら上手いねえ」 


 はきはきとした口調で隊員に訓示するランを、かなめは感心した調子で眺める。


「西園寺さん。普通これは隊長の台詞じゃないんですか?」 


 ニヤつきながらビールをあおるかなめに誠は小声でささやいた。慣れた島田の段取りから見ても、この部隊の最高実力者がランであることは明らかで、こういった席でも仕切るのは彼女なんだと誠にもわかった。


「今回の作戦では『那珂』制圧作戦時に三名の負傷者が出たのが残念であったが。三人とも軽傷であったことは幸いであると言える。今後、予想されるさまざまな状況の変化に対応すべく諸君等は十分に……」 


「長えな」 


 鍋の水菜を食べながらぼそりと嵯峨が呟くのを見て、ランは手早く挨拶を切り上げる決意をした。


「実力を発揮して部隊の発展に寄与する事を期待する!では杯を掲げろ!」 


 誠、かなめ、カウラ、アメリア、サラ、島田が杯を掲げる。他のテーブルの面々もコップを掲げている。嵯峨もめんどくさそうにグラスを持ち上げる。


「乾杯!」 


『乾杯!』 


 全員がどっと沸いて酒をあおる。


 サラがテーブル全員のコップと乾杯をすると、さらに隣のテーブルに出かけていく。島田はタバコを吸いながらその後に続いた。


「乾杯!」


 サラは一人一人そばによっては乾杯をせがむ。


「元気だねえ……」


「隊長も!」


 猪口を軽く上げる嵯峨にサラはグラスを差し出して乾杯した。場は完全に宴会モード一色に染まった。



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