醜いと虐げられてきた令嬢は実は絶世の美女でした
初めての投稿です。。。
色々と拙い部分があると思いますが、お手柔らかにお願いします^^
幼い頃から、親兄弟から蔑まれていました。
服も食べ物もなぜか兄弟達とは異なり、、、
兄弟達は武術や刺繍を学ばされていましたが、私はその間、家の床を磨き、カーテンを洗い、家族が食したあとの皿洗いなどをしていました。
「カトリーナ、あまり屋敷をうろうろするな、お前の薄汚れた髪が目障りだ」
お父様は私の灰色の髪を好いてはくれません。
本当は灰色ではなく白なのですが、あまり髪を洗う機会がないため、汚れやほこりでかすんでしまいます。
お母様は私の白い髪と赤い目をとても嫌っています。
まるでウサギのようだと、、、
100年ほど前、国の行き過ぎた動物保護により大量発生したウサギが民を苦しめていたそうです。畑を食い荒らし、糞尿を撒き散らすだけではなく、他国で流行っていた病を国に持ち込んでしまい多くの国民の命が失われた歴史があります。
今ではウサギは悪魔の象徴、みつけたら殺せと国から命令されています。
私が家族から嫌われるのはこの髪と瞳の色のせい・・・だと思います。
でも、妹のカレンも同じ色なのですが、、、、彼女は絹のように美しい髪、バラのように燃える瞳と称されることが多いのは気のせいでしょうか?
私の兄弟は妹のカレンの他には兄が2人おりますが、兄達はカレンが大好きです。真綿に包むように大切にしているのが傍から見てもわかります。
「カレン、今日も本当にかわいいね、まるで光りの妖精のように輝いているよ」
「お兄様ったら、私は髪が白いことを気にしていますのに嫌ですわ」
「白い髪はとてもカレンに似合っているよ、まあ、例え黒でも金でもカレンの美しさが変わることはないのだけどね」
豪華な朝食を囲い、和気あいあいと話しをする兄弟を尻目に、私は2、3日経ってしまったカチコチのパンをどうにか噛みちぎれないかと四苦八苦しておりました。
家族から嫌われている私ですが、なぜか食事の時間だけは家族と共に取ることを許されております。
理由はカレンが「お姉さまだけのけ者なんて可愛そう!」と発言したからであります。食事の内容については特に言及して頂けませんでしたが、、、
カレンが私に対して同情を向けるたびに、家族のカレンに対する好感度は鰻上りです。そしてそれに比例するように私を見る視線は冷ややかになっていきました。
なぜカレンだけが愛されるのか、なぜ私は愛されないのか、理由もわからず両親に訴えた事もありました。
「カレンと比較するなんて、あなたはなんて不遜な人間なの?」
「お前とカレンを並べるなどとおこがましい。二度とくだらない質問をするな!」
父親にぶたれたのは初めてでしたので、衝撃を受けた私は二度と愚かな質問をすることをやめました。
「それでね、お城で舞踏会を開くそうなの、ぜひ私も王子様にお会いしたいわ」
カレンはきらきらと瞳を輝かせながらお父様におねだりしています。
舞踏会・・・私は行ったことがありませんが、カレンは15歳になってから社交界デビューをし、それから度々招待されているようです。
淑女たるもの舞踏会やお茶会へ積極的に参加し、家のため、そして自分の将来のために人脈を広げる必要があると聞いたことがあります。
私は18になりますが、そのような場所に行ったことも招かれたこともありません。
「カレンならきっと王子様に選ばれるわ、そうと決まればドレスをオーダーしなくちゃ、それと宝石も。。。忙しくなるわぁ」
うきうきと声を弾ませながらお母様はカレンをうっとりと見つめております。
「ふむ、カレンならきっとグレン王子に見初められるだろう」
この国の最高権力、王家の一人息子であるグレン王子、
彼の18歳の誕生日に許婚候補を決める舞踏会が開かれるようです。
招待されるのは王家にふさわしい地位を持った家のご令嬢たち。
招待されているということは、私の家もそれなりの地位があるのでしょう。お恥ずかしい話、まともな教育を受けていない私には自分の家の爵位すらわかりません。
まあ、舞踏会に一度も参加した事もない私には関係のない話なのでしょう・・・そう、思っていたのですが、
「どーして!?どーしてお姉様まで舞踏会へ行くの!?」
カレンが嫌々と可愛らしく首を振りながらお父様に抱きついております。
いつもは「お姉さま可哀想・・・」と同情をしてくれる妹でしたので、ここまであからさまに嫌がられると傷つきます。
「私も断ろうとしたのだが、陛下が公爵家のご令嬢は皆参加するようにとおっしゃるのだよ」
「お姉さまを舞踏会に連れて行ったら公爵家の品位を疑われてしまいますわ!」
私の爵位が公爵家だとわかりました。はい、そしてまた傷つきました。
「あ、あの・・・私は無理に参加しなくとも・・・」
恐る恐るお父様に提案してみましたが、「お前は話すな」とばかりにひと睨みされ黙りました。やはり情けないです。
「陛下の命令は絶対だ。私も本意ではないが、カトリーナは舞踏会に参加させる事にした」
「・・・っ!そんな」
「「カレン!!」」
二人のお兄様の腕の中で目を閉じるカレン・・・
気絶するほど私と舞踏会に行きたくないようです。
私も気絶するほど行きたくないのですが、床に頭を打ち付けるだけなので止めておきます。
「カトリーナ、お前には最低限のマナーを身につけさせる。公爵家に泥を塗るなよ。会場に着いたら最低限の挨拶をすませ、後は会が終わるまで誰とも口を利くな、いいな?」
「は、はい・・・」
どうやらお父様は私に付け焼刃を下さるようです。
「カトリーナ様は本当にお上品ですわ、動作も静かですし、無駄がありません、なによりも天使のように麗しい・・」
「ごほん!」
私にマナーを教えてくださるレイナ先生は少々天然でとても好感が持てる方でした。
カレンとお母様はなぜかレッスンがあるたびに私の元へきます。
一緒に学ぶわけでもなく、ただただ侮蔑の視線を浴びせ、先ほどのように咳払いをしてはレイナ先生の話を中断させます。
レイナ先生はとにかく私を褒め称えてくださいます。褒められることがあまりないので、(いえ、褒められたことがないので)なんと返事をすればよいかがわかりません。
容姿のことは社交辞令だとしても、動作に関しましては自信があります。
初めて知りましたがご令嬢は動作が静かで無駄がないことをよしとするようでした。
常日頃家族の目に触れぬようにと精進してきた私には静かに無駄のない動きは必須ですもの。
「ありがとうございます。レイナ先生・・・」
褒められたお礼に軽くお辞儀を致しました。
「まぁ、なんと優雅!こんな完璧なご令嬢がいらしたなんて!それに社交界にまだデビューしていないなんて信じられませんわ!!」
「カトリーナは病弱でして、皆様の前に出ることが容易くはないのです。レイナ先生、カトリーナのマナーは最低限身に付けられましたか?」
お母様がぴくぴくと青筋を立てながら先生に尋ねました。
「まぁ、お体が弱いのですね、まさに深窓のご令嬢、、、」
「ごほん!」
「ああ、申し訳ありません。はい、カトリーナ様のマナーは十分すぎるほど身についておりますわ。きっと皆様、羨望のまなざしでカトリーナ様を見つめることでしょう」
きらきらと瞳を輝かせながら語るレイナ先生を母の冷たい視線が突き刺します。
カレンはそんな母の後ろでぷるぷると肩を震わせながら私のことを睨みつけています。
やはり、カレンの目から見て私のマナーはまだまだなのでしょう。舞踏会で私が恥をさらすことを嫌がっていましたから。
それに、カレンの立ち居振る舞いはお世辞にも静かとはいえません。どちらかというと豪快です。
きっとレイナ先生は私がなかなかカレンの様なマナーを身に付けられなかったので匙を投げてしまったのかもしれませんね。
大丈夫ですよ、カレン・・・目立たず環境に溶け込むのは姉の得意技。恥をかくどころか、いるのかわからないほどに気配を消して見せますからね。
舞踏会当日はカレンと同じ馬車に乗り会場へ向かいました。
コルセットをしめ、きらびやかな服を着て、高いヒールの靴を履く。
世のご令嬢はこんな苦行を強いられているのですね。
体が締め付けられて、息が苦しいです。舞踏会には美食が沢山あると聞いているのに食べられるか心配です。
靴は不安定で歩きづらく、一歩歩くごとに精神を削られます。
「お姉さま、グレン王子へのご挨拶は私が致しますので、お姉さまは失礼のないよう、静かに横にいてくださいまし」
ピンクのドレスに身を包み、これでもかと言わんばかりに宝石に身を包んだ妹は、いつにもまして輝いて見えます。
それに比べて私は、白い髪に白いドレス、宝石は頭を結い上げ固定するために添えられたブルーの花の形をした髪留めが一つ。
圧倒的に地味です。
まぁ、これから気配を消すにはうってつけな姿ではありますね。
馬車がゆるやかに動きを止め、外から扉が開かれました。
馬車から降りる際は一人で降りてはいけないようで、男性の方が手を取って降ろしてくださいます。
「あ・・・」
カレンを降ろした後に私に手を差し伸べて下さったのですが、なぜかその方の動きが止まりました。
やはり、王族の舞踏会にこのような地味な格好はまずいのかもしれません。
「・・・あの?」
微動だにせず私の顔を真っ直ぐ見つめてくる男性におずおずと声をかけました。
「も、申し訳ありません・・・あまりにお美しいので、天使が舞い降りたのかと思いました・・・」
「はい?」
予想外の言葉にご令嬢らしからぬ返答をしてしまいました。
「も、申し訳ありません!さぁ、どうぞこちらへ!」
慌てて馬車から降ろされました。
馬車から降りるのを手こずり、先に降りたカレンを見失ってしまいました。これはまずいです。
とりあえず、皆様建物の奥へ向かっているようですし、私も流れに乗ることにしましょう。
それにしても王宮は煌びやかですね。天井にはきらきらと輝くシャンデリア、壁には品のいい絵画が飾られ、赤い薔薇を中心に沢山のお花で飾りつけられています。
花の香りに包まれた会場からは、もうひとつ気になる香りが・・・
ああ、この香りは焼きたてのパンの香りですね、こちらは鴨のソテー、なんと、この香り!!チョコレートまであります!
おいしそうな香りに誘われ、ご令嬢たちとは逆方向へ足を運ぼうとしたとき
「お姉さま!どちらに行かれますの!?」
怒気をあらわにした声色でカレンに呼び止められました。
「まずは王子様にご挨拶です、そんな事も知りませんの?」
恥ずかしいです、
舞踏会の出席が決まってからはスープと野菜クズしかご飯が与えられませんでした。
母が言うにはコルセットを付けるには減量が必要との事で、、、、、鶏がらのような私ですが、社交界のご令嬢と比べればふくよかなのでしょう。
カレンは私よりふっくらとしていますが、母曰く「カレンはふっくらしている方が可愛らしい、お前みたいなダラしない体と比べること自体おぞましいわ!!」との事でした。
「さぁ、他の人たちに先を越されちゃうじゃない!早く行きましょう!」
声を荒げながら私の手をぐいぐいとひっぱていくカレン。
私は歩きなれていない靴なのでヨタヨタと引きづられるように付いていきました。
そんな私たちを他のご令嬢は一瞬ぎょっとした目で見てから、ほぉっと頬を赤らめ潤んだ瞳で見つめております。
すごいですカレン、ご令嬢達を一瞬で惹きつけています。
こんなこと考えては失礼ですが、この会場でカレン以上に美しい方が見当たりません。お兄様たちが溺愛してしまうのもわかります。
「この度はお招き頂きありがとうございますグレン王子。エスタール家のカレン・エスタールです。こちらは姉のカトリーナです。」
赤いじゅうたんが敷かれた階段を上がるとカレンはマナーどおりの礼をしてご挨拶をしていました。
私も慌ててカレンにならい礼を取りましたが、慣れない靴で階段を上がってすぐの事でしたので目の前の人物のお顔を見ることが出来ません。
「エスタール公爵のご令嬢、どうぞ顔をお上げください」
凛としていてよく透る声に促され顔を上げると、そこには金髪碧眼の男性が柔らかな笑みをこちらに向けておりました。
とてもお優しそうな方です。佇まいがとてもお上品でありながら、力強い印象も受けます・・・ですが・・・
「本日は王家の舞踏会へようこそいらっしゃいました。どうぞ優雅なひと時をお楽しみください」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」
カレンはそう言うとさっとお辞儀をしてさっさとその場を後にしました。挨拶とは本当に簡単なのですね。
カレンに従い私も階段を下りようとしたところ
「カトリーナ嬢」
「・・・!は、い」
グレン王子に呼び止められました。なにか粗相でもありましたでしょうか・・・
「君を社交界で見るのは初めてだね、よろしければ、もう少しだけ僕とお話していかない?」
驚きましたわ、私のような地味女を初見だと認識できる王家の記憶力!さすがですグレン王子!
「はい、私などでよろしければ・・・」
「ありがとう!ではこちらは少々騒がしいから場所を移そう、君は甘いものは好き?」
「とっても!・・・あ、はい、好きです」
会場に入ってからチョコレートの事が頭から離れなかったため、思わずくい気味に答えてしまいました。
「ふふ、では侍女にいくつかスイーツを用意させるよ、さぁこちらへおいで」
そう言うと王子はなんともスムーズにそして上品に私の手を腕にのせエスコートしてくださいました。
こけない様に注意しなくては・・・・
招かれたのは王家の管理する温室で、昼のように明るい室内で夜空を堪能できるなんとも贅沢な空間です。
二人きりのお茶会では、侍女が用意してくれた色とりどりのスイーツとそれに併せたお茶を堪能させていただきました。
繊細なデザインが施されたチョコレートに舌鼓を打ちながら、私たちは沢山のお話をしました。
好きな花のこと、好きな食べ物のこと、物語や歌、その中でも一番興味を引かれたものは「魔法」でした。
「魔法を使える者はごく少数だけれど、存在しているのだよ」
「物語の中だけなのかと思いましたわ」
王子が言うには魔法使いは発見され次第王家の保護下に置かれる。そのため魔法を使えるものが一人でも生まれればその家は王家から経済的な支援と爵位の授与がなされる。
「この話は平民でも知っていると思うのだけれど、カトリーナは初めて聞いたの?」
「は、はい・・・お恥ずかしいです」
王子は博識、それに比べて私の知識の少ないこと・・・・そのためお話はほとんど王子がしてくださり、私は聞き役に徹していました。
でも本当に楽しい時間でした。王子は一晩で沢山の知識を与えてくださいました。
「カトリーナ嬢、もし、僕がまた君をお茶に誘ったら、来てくれる?」
「はい!とても楽しみにしております!」
そう王子と約束したのですが・・・どうやら果たせそうにありません。
「お前程度の女が王子の許婚になれると思ったか!!?」
怒り大爆発です。
舞踏会の後、家帰ったカレンはお父様に泣きつき、王子との仲を私に邪魔されたと伝えたようです。
「自分の身の程を自覚するまでそこから出ることは許さん!!」
お父様がこんなにお怒りになったのは私がカレンと自分を比べたとき・・・いえ、それ以上にお怒りですね。だってここ・・・・
「牢屋・・・ですね」
この屋敷にまさか牢屋があったなんて驚きです。
しかも壁や床には血なまぐさい後が残っています。使用済みということですか・・・
まさかあんな煌びやかな温室から、薄暗くじめじめした地下へ叩き落されるとは思いませんでした。
地下なので窓はなく、外の冷気は入ってはこないのですが、石造りに鉄格子は寒々しいものがあります。
「はぁ・・・」
私は少しでも暖を取るため体を折り曲げ両膝を囲い丸くなっていました。
ズ、、、ズズズズ、、、
牢屋の門は重く、開閉のたびに引きずる様な音が聞こえます。
「だれ?」
暗闇の中現れたのはカレンです。
舞踏会の衣装から部屋着に着替え、どうやら入浴も済ませているようですね、髪が少しぬれています。
「カレン!ごめんなさい・・・あなたと王子様の仲を邪魔するつもりはなかったの、王子は私が初見だったからお声を掛けてくれただけで、、、、」
っがしゃん!!
「・・・っ!!」
「・・・うるさい」
本当に目の前にいるのはあの可愛らしい妹でしょうか?
鉄格子に蹴りを入れ、男性のような、まさにお父様のような低い声で睨みつけてきます。
「お姉さま。わかっていないのね。お姉さまはとっても醜い容姿と心をお持ちだわ、まぁ醜い同士お似合いではあるのだけど・・・でも彼は王子よ!!お姉さまみたいな地味な女に王妃なんて似合わないわ!」
喚くように発せられる言葉は私の心にザクザクと刺さります。
私のことはいい、私のことはいいけど・・・王子は!!
「カレン!王子は醜くなんてないわ、とってもお優しい方よ、こんな私に沢山のことを教えてくださいましたわ、私が知らないことも優しく説明してくださいました!あんなに心の美しい方はいません!」
「心なんて目に見えないわよ!!ああ!むかつく!むかつく!理想に描いてた王子とは全然違うじゃない!なにあの不細工!!王子って肩書きがなければ私だってお断りよ!!」
そう・・・・王子はとても優しい方、博識で慈悲深い・・・が、容姿が優れているとはお世辞にもいえませんでした。
「なんであれが王子なのよ!!醜い醜い!言葉を交わしただけでも吐き気がしたわ!!・・・でも、仕方がないわね、王子だもの、私が王妃になるにはあれを我慢しなくてはいけないのね、ああ、私かわいそう!!」
えんえんっと泣きまねをするカレンはどこかネジが吹っ飛んでしまったような凶器を感じます。やけくそです。
「お姉さま、王子のお茶会に呼ばれたのでしょう?」
「・・・っなぜそれを!?」
「王家の従者が招待状を持ってきたのよ、さっき別れたばかりなのに必死ね・・・ああ、気持ち悪い、あの王子の必死な顔を想像したら吐き気が・・・」
想像だけで失礼なこと言うのはやめてほしいです。
「ふー・・・このお茶会は私が出席するから」
どうにか気を持ち直したかカレンが招待状をひらひらさせながら薄ら笑いを浮かべています。
「そんなこと・・・出来るわけありません!」
「出来るわよ、『姉は体調が優れないようで・・・でも王家の誘い無碍にすることは出来ないってお父様が・・・だから、私が変わりに参りました。王子と同じ時間が過ごせるなんて、私嬉しくて・・・』」
甘ったるい声色に赤く染まる頬、まさに迫真の演技です。先程まで吐き気を催していた対象とは思えない対応です。
「あのブサイク王子はカレンに任せて、お姉さまは精々ここで『身の程を自覚する』ことを学んでください。」
とうとう言いましたわね!王家侮辱罪です!死刑執行ですよ!!
やたら豹変する妹に恐怖を感じた私は心の中で言い返すことしか出来ません。
情けないです・・・。
あれからどれくらいの時間がたったのでしょう。
地下だと日の光りが入らず、時間の感覚がわかりません。
たまに侍女が怯えながら入ってきて食事を置いていくのですが、両親から命じられているためか一切言葉を交わしてはくれません。
まぁ、牢に入る前から使用人たちは私を見てみぬふりをしていたのですが。
今頃王子はどうしているのでしょう。
カレンとお茶会をしたのでしょうか?
王子は聡明な方なので、カレンの裏の顔を見破ることが出来るかもしれません。
王子に会いたい。
一度会っただけですが、あんなに人に優しくされたことは初めてです。
柔らかな物腰、優しい瞳、じっと見つめると照れたように頬をかく愛らしい仕草、
なによりも王家の血筋がもつ太陽のような黄金の髪、温かいあなたにぴったり・・・
そう、何日も見られていないけれど、あの太陽のように、美しい・・・あれ?眩しいな・・・
「・・・ッナ!・・・カトリーナ!!」
「・・グレ、ンおう、じ?」
目の前には燦燦と輝く太陽のような金髪が・・・夢でしょうか?
「カトリーナ嬢を発見したぞ!」
「早く救護をよこせ!!」
自分のまわりの喧騒を不思議に思いながら、私は暖かい王子の腕の中で安心して眠ってしまいました。
目が覚めるとジメジメした牢屋とは比べようがないほど広く豪華な部屋で寝かされていました。
驚いた顔であたりを見渡していると、さらに驚いた顔をした侍女と目が合いました。
「カトリーナ嬢が目を覚ましましたぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・」
侍女は叫びながらどこかへ行ってしまいました。
あっけに取られ呆然としていると、
ドタドタドタ・・・・・・・・
今度はすごい勢いで走ってくる足音が聞こえ身構えます。
「カトリーナ!!」
息を切らしながら入ってきたのはグレン王子・・・・ああなんて美しい・・・あれ??
「カトリーナ、気分はどう?どこか痛いところはない?」
「は、はい・・・痛いところはないのですが・・・・」
「ですが!?もしかして吐き気?それとも、体の一部が動かないとか!?あの豚ども!!やはり殺すしかない!!」
「おおおお、落ち着いてください、体調はすこぶるよいのです!!では、なくて・・・あの王子が、なんだか違う気が・・・」
「僕が?ああ!目かい?目が霞むの?それとも耳!?あの豚野郎ども・・・」
「王子落ち着いて下さい。カトリーナ嬢は魔法が解けたのです」
こちらを心配しながらも時々妹なみの豹変を見せる王子を初老の男性が諌めています。
「ああ、そうだったね。僕はてっきり幽閉の障害かと思ってしまったよ」
ほっと一息つく王子・・・その息が表情が仕草がなんとも甘く美しい、ご令嬢が卒倒するほどの破壊力があります。
「あの、魔法とはなんのことでしょう?」
王子にうっとり見とれておりましたが、我に返り先程の初老の男性に尋ねました。
「ご説明をさせて頂いても?」
「ああ、頼むよ」
初老の男性は王子の許可を取ると、一度咳払いをしてから話し始めました。
「エスタール家はここ100年ほど魔女の魔法にかかっておりました」
魔法というよりも呪いに近いそうです。
エスタール家は代々容姿端麗で、自らの美しさを大変気に入っていたそうです。
そして、容姿が醜いものを嫌い、それを理由に何人もの人間を処罰していたとか、あの牢屋の血痕はその痕ですね。
また人間だけには飽き足らず、美しい動物の保護を徹底し、それを民に強要、特に自分達と同じ白い毛に赤い瞳のウサギを異常なほど可愛がり、ウサギを無碍に扱った者の中には死刑に処された者もいるそうです。
ウサギが処罰対象になったのは我が家のとち狂った策によるものとは驚きです。
現状を重く見た王家はただちにウサギを処罰の対象にし、エスタール家にも何かしらの罰を与えようと考えました。
しかしエスタール家は公爵という高い地位を持った家である事、そしてその美しさから社交界では大変人気があった事から表立った処罰が下しづらい状態でした。
そこで当時の王は魔法を使って秘密裏に処罰を下しました。
使われた魔法が『魅了』と『幻覚』の魔法です。
幻覚の魔法はないものをある様に、あるものをない様に見せることの出来る魔法で、敵国に多くの軍隊が存在する様に見せたり、またはこちらの城を隠したりと戦に使われることが多い魔法でした。
この幻覚の魔法に、相手を好ましく思うようになる魅了の魔法を組み合わせ、エスタール家の美醜の感覚を反転させました。
そう、美しいものは醜く、醜いものは美しく感じるように。
自分の容姿が醜くなればきっと容姿にとらわれず、人の心を見る努力をするのではないかという王家の策のようです。
「でも王の本当の目的は100年の間に醜い遺伝子をエスタール家に混血させる事だと僕は思う。美醜を重要視するエスタール家のことだ、きっと美しい者を跡継ぎにと躍起になっただろう、そうして醜い遺伝子を繋ぎ続ければ100年後魔法が解けた頃には社交界での人気なんて落ちているだろうからね」
確かに、カレン同様、両親や兄弟は容姿に強いこだわりがありました。王子をぶさいく呼ばわりするほど・・・・根本とは100年たっても変わらないのですね。
「ですから、カトリーナ様が舞踏会にいらしたとき、背筋が凍りました」
初老の方が申し訳なさそうに眉を八の字にしている。
「それは、どういう事でしょうか?」
「カトリーナは以前のエスタール家の血を強く引いているからね、100年もかけてエスタール家の没落を企ててきたのに君のような美しい娘が生まれてしまったらまた惨劇が繰り返されるのではないかと思った、だから・・・・」
「私をお茶会に招いた・・・」
気まずそうに語るグレン王子の言葉を私が引き継ぎました。苦笑いを浮かべながら困った顔をしている王子・・・美しい!!
「でも、杞憂だった、君はとても謙虚で慈悲深い。最初僕にあったとき、君の妹はひどい顔をしていたよ」
「ひどい顔?」
あの美しいカレンが?
「ああ、まるでゴキブリでも見るような、不快感を前面に出した顔をね、まぁ魔法に掛っていたから僕がガマガエルにでも見えたのかな」
はい、妹はそれに近い表現をしていました。
「でも、君は違った、僕が声を掛ける度に柔らかい笑みを浮かべてくれた、僕が話す話を熱心に聴いてくれた、君とあの日お茶会をしたときに確信したよ、『ああ、王家は100年の企てを成功させた』って」
達成感に満ちた王子の横顔はとても美しく、またもや見とれてしまう。
「・・・っは!あの、王子、カレンは、私の家族はどうしているのでしょうか?」
壮大な王家の計画はまるで物語のようで、それが自らの家族に関係していることを今更ながら自覚しました。
「彼らはカトリーナを牢へ入れた罪で処罰を予定している・・・のだが、もうその必要もないのかもしれない」
「どういうことでしょう?」
「・・・もう少し体を休めたら一度エスタール公爵に会いに行こう、そしたらわかるから」
王子は言葉を濁し、家族の状況を教えていただけませんでした。
数日たち、お医者様から外出の許可を頂いたため私は王子と共にエスタール家へ向かいました。
「カトリーナ、今日の君は・・・天使のようだ」
侍女に用意して頂いた上質な生地の淡いブルーのドレス、軽く結い上げられた白い髪には美しく磨かれたシルバーの髪飾りを添えてもらいました。
「あ、ありがとうございます」
落ち着きなさい私!!これから両親に会うのです。王子の過度な褒め言葉に浮き足立ってしまいそうな気持ちを抑えなくてわ。
王家から馬車で揺られること1時間ほどで見慣れた風景が見えてまいりました。でも様子が少し変ですね。
あんなに整えられていたバラ園は草が伸び放題で花も枯れています。
石垣は土で汚れているし、何よりも使用人の姿が見えません。
「さぁ、中へ入ろう」
馬車の移動中、散々『天使だ、麗しい、神々しい!!』っと沢山のお褒めの言葉を口にされていた王子でしたが、馬車が止まった途端に顔を引き締め緊迫した様子で家まで手を引いてくださいました。
キイィィィィ・・・
護衛の方が扉を開けると、油を指していない扉が音を立てています。
「これは・・・一体」
はい、大変な状態です。
壁にかけてあった絵画はずりさがり、カーテンも裂けています。ワインをこぼしたのか床には赤いシミが所々に広がり、食器やらグラスやらが割れた状態で散乱しています。
私があっけに取られていると、
「誰ですか?」
「王家の者だ、エスタール公爵に会いに来た」
その声に強く反応した声の主は、この部屋には似使わない陽気な声で駆け寄ってきました。
「王子~、グレン王子~!私に会いに来てくださったのね、ああ、麗しの王子にまた会えるなんて・・・カレンは幸せ者ですわ」
カレンです、カレンがなぜか舞踏会のときに私が着ていたドレスを身にまとい、ワルツでも踊るような足取りで出てきました。
「カレン・・・・」
「・・・お前!!!」
私が目に入った途端、カレンは獰猛な獣のように襲いかかろうとしますが、王家の護衛の手によって捕らえられました。
「お前!!お前!私たちに呪いをかけたのはお前か!!醜い女が!私たちの美しさを奪った!!王子!騙されてはいけません!そのものは正体は醜い豚です!本当の王妃は私です!どうか目を覚まして!!」
涙ながらに意味のわからない事を口走る妹は、以前の美しい妹とは別人でした。
容姿が変わったわけではありません・・・ただ、醜いと感じてしまうのです。
あんなに可愛らしいと思っていた丸い団子鼻、がちゃがちゃとした歯、重たいまぶたに、熊を思わせるようなずんぐりとした体。
無理やり押し込んだドレスは今にも破裂しそうなほどぱんぱんです。
「あの可愛いカレンが・・・」
「魔法が解けたのです、そして彼らの魔法も、彼らは自分が醜く、そして自分が醜いと思っていたものが美しいと自覚した。使用人がいないのも、おそらく容姿で採用していたからでしょう、醜いとわかった途端に解雇した・・・といったところか、」
だからこんなにも屋敷が荒れているのですね。
「カレンはどうして私のドレスを着ているのでしょうか」
「おそらく自分の持ち物が醜いと感じたのでしょう、舞踏会で着ていたピンクのドレスは、、、なんとも悪趣味でしたから」
物さえもその美醜が反転してしまうなんて・・・恐ろしい魔法です。
「彼女はまだ元気なほうです、他の方々は自分の姿を誰にも見られたくないと引きこもっています。互いに顔を合わせれば醜いと罵り合いをはじめます、公爵家の誰かを目にすればあなたに魔法のことを信じて頂けると思いここまで来ましたが・・・報告以上に荒れているようです」
私を除いて円満だった家族が、一瞬で崩壊してしまうなんて、
「さぁ、もう行きましょう。なにより彼らは美しい者に惹かれる、あなたの姿を捉えればきっと強引にでも奪いに来るはずです。」
「そ、そんな・・・」
反論しようと思ったが、さぁさぁと王子にせかされ私たちは足早にエスタール家を後にしました。
「私の王子様よ!私は未来の王妃なんだから、こんな扱いしたら全員死刑よ!!あの豚女を渡しなさいよぉぉぉぉ!!」
馬車が発進するまで獣のような声で私を罵る妹の声が屋敷中に響き渡っていました。
「エスタール家はもう終わりです。あの様な状態では公務もままなりません、陛下も爵位の剥奪を強行せざるをえなくなります」
あまりの惨状に放心していた私に王子はさらなる追い討ちをかけます。
家がなくなれば私は平民です。しかも鶏がら・・・明日にも野たれ死ぬでしょう。
私が顔面蒼白になるのを見て王子はくすりと笑います。
「カトリーナ、あなたを一人にはしません。させません。天使のようなあなたを、慈悲に満ちたあなたを、謙虚なあなたを、僕以外の誰にも渡すつもりはありません」
「王子・・・・」
「グレンと、そう呼んで、ずっと、、、、一生、、永遠に、僕だけの名を呼び続けて」
甘い言葉を発する魅惑的な王子の唇が、私の唇に重なる。
ああ、なんて甘い口付け。チョコレートよりももっと甘い。
「グレン・・・どうか、どうか私を放さないでください、好きよ・・・・」
そう告げるとグレンは優しく微笑み愛おしそうに私を見つめる。
夕焼けに照らされたグレンの姿は、まさに物語に出てくる王子様そのもの。
甘く、美しく、令嬢を卒倒させるほどの破壊力を持つ王子様。
グレンの美しさを初めて目の当たりにした時、私は思ってしまった。
・・・・誰にも渡さない・・・・
エスタール家の血は中々濃いようです。