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マリモ:楽しいかも

ドーナツ「打ち上げ……。活躍チャンス!」

 さて、五つのパーティーとギルドで打ち上げである。


 今回のゴブリンの巣はできたての小さなものだったらしく、被害も少なかったということでみんな明るい。


 実際にゴブリンの巣の討伐は何人かの被害者がいたり、ゴブリンの数が百は下らず、下手したら数千とかいて仲間から怪我人が出たり毒で死んでしまったり食べられたりすることもあるそうで、本当に今回は小さかったようである。


 ゴブリンも怖いなあ。これでさらにオークとかオーガとかデーモン種とか死霊が率いた魔物の群れが出たりとかしたらもっと大変らしい。


 デーモン種は人間の他者を恨む感情が凝固した幽霊のような存在が実体を持ったものだそうだ。幽霊とおんなじシステムだけど、実体化するほどだから相当に濃い怨念の塊らしい。もちろん慈悲を持った生き物ではない。慈悲に当てられたら消えるそうだ。聖女様とか聖人様と呼ばれるような人たちはそういう方法でデーモン退治ができるとか。いつか会ってみたいね。


 結局魔力が思念に反応した魔法世界特有の現象のひとつなんだろうね。当然生命とは違うし魂もない。デーモンが魂を持ったらグレーターデーモンとかアークデーモンとかいう悪辣な犯罪者みたいな化け物に変わるらしい。これが本当に厄介なんだって。人に乗り移ったり人間の善意とかを利用してくるとか、厄介そう。


 怖いなあ、やっぱり。そういう相手にはたぶん私もダメージを受けるはずだし。


 他には魔剣や妖剣とか魔眼とかもダメージを受けるし、呪いも駄目でしょ。魔法もダメージを受けるし。私も意外と脆いかも。魔法を使わない相手には負けないんだけども。


 シータさんによると聖女様の国がこのオーシマ大陸にはあるそうだ。この大陸には六つの国がある。


 聖女の国ホシトミツキ、獣人とエルフやドワーフの国アフレバー、人族だけの国タイトーン、バンパイアや魔人の国クーバク、中立の国がフォレスターのあるソーゲン王国。もうひとつ中立の共和国ウリドメがある。


 聖女の国ホシトミツキには妖精や小人もいるんだけど、魔人の国クーバクの吸血鬼に襲われて今、大変なのだそうだ。魔人の国クーバクや人族の国タイトーンはまとまりがなく内戦も含め戦争ばっかりで、それに比べればこのソーゲン王国はかなり平和だ。でもタイトーンもクーバクも隣接してるからこの国もひとつ間違えたら危険なんだって。


 やだなあ、戦争は。怪我や病気の元だもん。


 ちなみに魔人とデーモンは違うので一緒にしたら怒られるそうだ。善良な魔人やバンパイアもいるらしい。バンパイアはもちろんアンデッドだけどこの世界では認められたひとつの種族みたいだ。魔法で殺した人を使役したりしていた歴史もあるけど、今はほとんど伝わってない。戦争はしてるけど種族としては倫理がないわけでもないそうで。ただやっぱり人による。他人を見下す人なんて人間にもいるもんね。


 デーモンは本質的な悪意の塊だ。恨む、怒る、呪う、蔑む、殺す、侵すとかの悪感情しかないようだ。慈悲や愛情で弱まり、消える。完全に悪の塊だね。まあ生き物と言っていいのかも不明。私たち精霊も似たようなものだけど。いつか戦うことになるよねぇ。


 さて、依頼していたお肉が届いているというので、酒場のおかみさんに頼んでみんなにふるまってもらう。お酒も出すと言えばみんな大喜びだ。うん、この雰囲気は楽しいかも。


 被害の少ない任務ばかりとはいかないだろうけど、最後はみんなで笑っていたいなあ。


 ちなみに常世の果実を売ったお金で白金貨という大金貨の上の金貨と出会うことになった。その上に女神貨というのがあるんだけど、これはダンジョンで採れる宝石のようなものでオークションとかでしか値がつかないらしい。


 で、もらえたのが白金貨七枚。七百万グリン……二億円相当……。ああ、マリモ狩り隊の足音が聞こえるぅ……。四つあるから八億円、とはならないけど。やっぱりオークションで値がつくから数が増えると安くなるらしい。レアなだけに需要も少ないんだね。


 今回はすぐに買い取ってもらったから安くなったそうだけどその値段。オークション開く余裕なかったからね、最低買い取り額で仮契約とか言ってたよ。


 ん、つまりシータさんも二億円持ってるのか。おごっておごってー。駄目か。私の方が持ってるし……。本当に洒落にならないよマリモ狩り。


 ちなみに後日、お婆ちゃんの果実の方が高いことが分かった。大きさが違うからなぁ。


 おっと今回仕入れたお肉は土竜鳥(どりゅうどり)という巨体で飛べないウズラのような形の、鳥のお肉らしい。とても美味しいし大量に手に入るのでDランクくらいの冒険者がお小遣い稼ぎに捕まえる。家畜化もされてる比較的大人しい鳥なんだとか。


 体高が三メートルくらいあって飛べなくて人懐っこいので捕まえやすいらしい。大きなあほうどりみたいな鳥? 肉質は柔らかいみたいだね。魔力の高いこの世界の生物は筋力じゃなくて魔力で体を支えるから柔らかい、とは女神様から伝わっている話なんだとか。女神様の趣味の魔物シリーズか。


 まあ美味しいなら。


 今回はソテーや煮込みや唐揚げやカツまであるよ。料理は発展してるなあ。これも女神様の趣味だろうな、たぶん。本とかダンジョンに落ちてるらしいし。小金貨とかで売れるからわりといいお宝なんだって。


 ソテーは胡椒を利かせたタイプだ。うん、香ばしく焼けた皮と挽きたての黒胡椒の香り、岩塩の複雑な塩気でまとめてある。肉は柔らかくジューシー。噛めば口の中に鳥肉の、旨味のジュースが溢れかえる。


 んまーっ!


 えへへ、久しぶりのお肉が大当たりだよぉ。次は唐揚げね。


 塩ダレに漬け込み粗挽きガーリックをまぶした後で片栗粉をまぶし、低温からじわじわ揚げてさっぱりと油を切ったあとに特製のシーズニングスパイスをかけてある、カリカリかつジューシーな唐揚げである。ガーリックが粉末でもすり下ろしでもなく食感を微妙に残しひと噛みごとにその香ばしい香りを鼻腔に広げ、食べれば食べるほど食欲が爆発しそうな美味さ!


 レモンをかけても美味い! さっぱりしていくらでも食べられる!!


 カツも卵液に香辛料が入っているらしく、かりっとしたパン粉の衣をかじると香りがぶわりとたちのぼる。これもまた食欲をそそる香りだ。うんまあーーーい!! ビーム出そう。ソースもついててこれもまたフルーティーで、飽きそうなフライの味にアクセントがつく。


 おっと、煮込み煮込み。これ、醤油と砂糖? で煮付けて唐辛子でピリ辛にしてある! 醤油あるの?! また女神様かグッジョブ!


 ヤバい、懐かしさと少し硬めに煮込んだ鳥肉の食感が口内を満足感で満たして、これまでの料理とは別の世界に変えていく……! うわー、泣けてくる! ピリ辛だからご飯とか欲しくなる! ちなみにご飯もあるらしい!


 そして口の中に肉の脂が溜まってきたので初めてのビール、魔道具でキンキンに冷えたのをいただきます!


 ドキドキ……。ん、苦味がさっぱりと口の中の脂を押し流し、スッキリとしたフレーバーが更なる肉の旅へと向かう気力を与えてくれるようである!


 んへへー、いいじゃんいいじゃん。お酒いいねー。ちなみに私は霊酒とか神酒だと酔うけど普通のお酒で酔うのには浄化能力を抑えたりしないとダメらしい。お婆ちゃんに聞いた。


 さて、またソテーを……。ん?


「うまっそうに食うなぁ先生は」


「ぷくっくく……わ、私も食べるぞ!」


 なんか、ガウルさんとシータさんに食べるとこを見られてた。みんなも一緒に食べようよ?


 ぱくっ、もぐもぐ、ぷはー。


 うん、これは楽しい。


 また、たくさん食べられるようになれて、良かった。






ドーナツ「さあお酒のあとはドーナツですぞ!」


土竜鳥「クッキリポーン!」


ドーナツ「お酒には唐揚げ? ぐぬぬ、揚げ物の癖に!」


マリモ「ドーナツも揚げ物」


ドーナツ「グハッ!?」


マリモ「ドーナツの頭をした人が血を吐いた」


シータ「ドーナツの血は何色だ……?」


ヨクタ「きっと美しく鮮やかに輝く虹色よ」


ドーナツ「もっと吐けと?」







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― 新着の感想 ―
[良い点] 飯テロだぁー!! [一言] 夜中に読んじゃダメな回でした… 他の作品もそうですが、居茅先生の料理描写は本当にお腹が減ります。 そして食べたい。できれば今日中に食べたい。 ドーナツの出番、…
[良い点] お腹が空いてしまう。 [気になる点] 24時間営業のスーパー、自粛営業で閉まってました。 [一言] 油断した~! 飯テロだ~!!
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