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マリモ:フォレスターの町

 さて、フォレスターの町である。とても大きな町のようで、五メートルくらいの高い壁がどこまでも続いている。長さは一辺十キロくらいあるの? 果てが見えない。


 ちなみにこの世界の言葉は翻訳されているのだが、時々日本語っぽいところがある。あの女神様が元日本人だったりするんだろうか?


 まあゲームみたいな世界を作ろうとしているんだもんね。言語とかもそのまま地球から取り込んでいたりするのかも。長い時間で変わったとかかもね。時間軸とかどうなってるのかな。メートル原器とかはないのでたぶん正確な数字は違うんだろうけどメートルとかグラムとかの単位は使われてるみたいだね。ヤードとか貫目とかは知らないけど、ことわざとかは似た物があるかも。いろいろ見て回らないと、かな。あ、温度も摂氏(℃)だね。こっちは水の沸点を百度に置いてるから正確に近そう。沸点は気圧とかで変わるから完全に正確とは言えない。そもそも地球の水の沸点も百℃じゃないんだっけ。


 シータさんの拠点だというフォレスターの町の中はわりと近代的で、魔道具のランプとかあるし看板が横にくるくる回ってたりする。ちょっと俗っぽいけど、石畳だし壁も石を積み上げて漆喰? のようなものを塗り込んであるようだ。この辺りはゲーム的。


 クリーニングの魔法があるみたいで町中はわりと清潔。私もそういった魔法は使えるらしい。すべては魔力でできているそうで、この世界には魔法を使えない人はいないようだ。魔力以外の物理法則はそんなに違わない。


 そういえば壁は立派なのに町に入るのにチェックもなければ税金も取られなかった。衛兵はいたけど。冒険者が多いからかな?


 この町には女神様の作ったダンジョンもあるらしいし、おおらかなのかもしれない。魔物とか入っても結界に阻まれるとかしそう。私は入れた。


 さて、一度シータさんは拠点にしている宿に帰るらしいので、私だけ一人で冒険者ギルドに行くことにする。わくわく。楽しみにしていたんだよね。


 シータさんに教えてもらった道、大通りを通り、中央辺りの広場に出ると、その一角に冒険者ギルドの建物が見える。看板は剣を振るう姿の女の子だ。この看板は動かないのかな。


 冒険者ギルドって言えばむさ苦しそうなのに看板は可愛い。ちょっと想像と違った。表玄関だけかも知れないけど。


 三階建ての清潔な白い建物に、重そうな扉がついている。酒場とかにあるスイングドアじゃないのか。まあ寒そうだよね、あれ。


 よっこいしょ、と大きな重い扉を引っ張り開けて中に入る。私が中に入ると、中で渦巻いていたすごい喧騒がピタリと止まった。やっぱりお酒臭い。換気しよ?


 ちなみに少しお金をもらってポーションを入れる瓶を買いたいので薬草を、シータさんに聞いた高いのを持ってきた。ギルドに登録したら売れるらしい。バッグは枝で作ったよ。この枝の糸の編み物は簡単で楽しいや。地面からはい出した糸がシュルシュルと形を作っていく過程はまさに魔法だ。


 シータさんに聞いたところ、ギルドカードとか冒険者タグとかもダンジョン産の魔道具なんだって。女神様、気合い入ってるね。タグっていうのは軍隊とかで個人を認識するための(しるし)をネックレスにして着けたものだね。死んだ人がどんな人かわかるから遺族に知らせられる意味があるそうだ。あとカード出すより簡単な身分証明になるしね。カードとか落としそうだもんね。


 と、どうやら虎柄の獣人さんが私にからんでくるようだ。ドカドカと大股で私に近づいてくるとその大きな体をさらに大きくして、おもいっきり上から睨んでくる。身長二メートル越えてそう。筋肉質な逆三角形の肉体。そして全身が毛皮でもふもふだ。……とっても柔らかあったかそうなもふもふだ。清潔でふかふか感がある。態度は悪いけど……。


「なんだあ? ここはガキの遊び場じゃねえぞ?」


「もふもふ」


「ちょっ、おまっ、やめ、やめろや! なにしてんの?!」


 たぶん脅しつけて帰らせる程度のつもりなのだろう虎さん。お腹の白い毛皮のモフモフぶりがとてつもなく気持ちよさそうだったので思わずもふった。病気になる前は犬猫大好きでよく知らない家の犬猫をモフっていたものだ(迷惑)。私のモフりテクニックに(よそ様の)番犬のシェパードとかもクンクンとなついたものである。耳の後ろとか擦り付けてくるよね。匂いをつけてるらしいけど。背中がいいのんか。顎か? ぎゅーってするか?


 虎獣人さんをモフり倒して、彼が幸せそうな顔になったその隙にカウンターへ移動。窓口は依頼人用の場所にした。後ろからざわり、と話し声がする。


「おい、あんな貧乏くさそうなガキが依頼人だと? モフりは上手そうだったけど貴族の変装?」


「かか、貧乏くさそうでも依頼人ならからんじゃだめだよな。逆にモフられてたけど」


「見てよ、ガウルのやつ呆然としてるわよ。ちょっと気持ち良さそうな顔だけど。怖い」


「早く謝った方がよくね? てかモフられて止まってる?」


「依頼人が望んだら仕事を受ける冒険者を絞れるんだっけ? あとモフりうらやましい」


「護衛とか信頼できない冒険者に頼めないもんな。獣人をモフれたらいいって依頼人とかいるの?」


「とりあえず獣人になりたいモフられたいぎゅってされたいモフる方でもいい」


「変態がいる!?」


 うん、シータさんに聞いたとおり、依頼人の権限は強そうである。あとなんか変な人いる。


 目を丸くしてる、普通の人間の女性に見えるけど、青い髪に青い目のファンタジーなカラーの受付の娘さんにギルドへの登録と薬草の販売、ポーション瓶の購入と、お肉を獲ってきてもらえるように依頼を出す方法などを聞いていく。受付さんは十代に見えるね。若いなあ。威圧感なくて依頼人向けなのかも。


 持ってきた薬草がかなりいいものだったらしく、十分なお金がもらえた、らしい。価値はまだイマイチわからないが小さな金貨で二枚だ。一枚でポーション瓶を買うと五十本くらいもらえたのですぐに別の薬草をポーションにして瓶に移してそのまま売る。ちょっと数が多かった。なんか注ぎ口のついたボウルみたいな鍋を借りてそこにポーションを作り入れ、瓶に分けた。


 それを瓶ごとポーション鑑定機とかいう板に乗せ、その品質にまたびっくりされたが金貨は十倍の大きな金貨二枚に変わる。女神様のスキルが優秀なだけだけど有り難い。


 ポーション瓶は四角い香水の瓶みたいなものだね。投げつけたら武器になりそうなくらい硬そう。ごつん、って。ドーナツに乗せて爆撃できないものか。飛べ、ヘルシー米粉ドーナツ爆弾ポーショントッピング、とか。ヘルシーなのか?


 薬師のスキルが珍しいようで騒ぎ声がいっそう大きくなり、腕を組んで見ていたさっきの虎さんがガクガク震えだした。そして駆け寄ってきたかと思うとものすごい綺麗に土下座してきた。土下座文化あるのね。でもいきなり態度が変わったね?


「すんませんしたーっ!!」


「……依頼停止とかできるの?」


「はい!」


 虎さんは無視して受付さんに聞いたらいい笑顔で返事がきた。私は意地は悪いのだ。この子もなかなかだけど。


 じゃあ……といいかけたところで虎さんがガンガン頭を地面に打ち付けだしたので許してあげることにした。怖いし。恥ずかしいし。


 そんなに薬師の依頼人は貴重らしい。大量の薬草を買うし怪我まで癒えるポーションを売ってくれる薬師は冒険者の大事な味方。


 受付さんはモモノさんという名前だそうで、嬉々として説明してくれた。依頼人として貴重なポーションも売ってお肉や薬草採取の依頼もさらに出したので最初から冒険者権限はDランクの扱いになるらしい。一人前のレベルである。まあ依頼人としては普通?


 地図なんかの資料の閲覧制限解除とか、重要な場所への通行許可とか、商業ギルドなどでの保証など、いろいろ権限があるようだ。カードの色が白で、普通の冒険者権限とは違うっぽい。冒険者カードは金属の色で分けられてて鮮やかだ。鉄とか銅とか、錆止めの魔法もあるのね。


 依頼人用ランクとかあるのか。依頼人も信用が大事だしね。


 まあ神樹の森やダンジョンもある、ここ、フォレスターでは冒険者が多くてポーションの需要も極めて高く、薬草は採取する人が多いので供給は多いけど、辺境だから薬師さんはまだ少ないので、とても助かるんだとか。


 虎さんが躊躇せずに土下座をしたのはポーションの販売を止められたら冒険者は命に関わるからだ。そこまで強権を振るうつもりないんだけど。私の一番の敵は病や痛みだもの。


 この虎さんはガウルさんというDランクの冒険者らしい。私にからんだのはかなりまずかったようだ。私がまあ貧乏くさい見た目で貧弱そうなのも間違いないんだけどね。


 痩せた力のなさそうな子供が、薬師で依頼人とは思わなかったというのは頷ける。貧乏臭い灰色のローブに折れたとんがり帽子、魔法使い志望の初心者冒険者に見えるよね。冒険者は命がけの仕事だから死にそうな私を止めようとして威嚇したらしい。優しい人じゃん。


 常世の果実が見えないように深く帽子をかぶってたのも根暗そうに見えたに違いない。ごめんね。


 冒険者として戦うのはちょっと怖いので、依頼人として活動していくとモモノさんには伝えておいた。お金を出したら肉や薬草の採取だけじゃなくてモンスターの巣を壊したりもしてもらえるらしい。お仕事をたくさん出したら喜ばれるんだろう。考えておこうかな。


 モンスターが減れば当然採取の人も楽になる。薬師にもメリットはあるようだ。


 巣の討伐の相場はモンスターの種類次第で、まずは偵察任務、次に討伐任務と二段階で依頼を出さないとダメらしい。そのうち出すこともあるのかな。


 まあ偵察はギルドの方が独断ですることも多いらしい。モンスターの巣からスタンピードといって魔物が溢れて集団で襲ってきたりすることもあるので、領主様や国から依頼が出ることもあるようだ。騎士ももちろん定期的に巡回してる。そこは個人が絡まなくてもいいんだろうね。報酬が増えるから個人依頼を追加しても冒険者は嬉しいらしいけど。


 まずは私がお金を稼がないとね。植物魔法で胡椒とか出せるらしいのでやってみてもいいかも? ポーション売る方が早いかな? ギルドの診療所もあるから臨時でやってもいいらしい。それもいつかやってみたい。病気の人、治したい。


 偵察任務は小金貨一枚で贅沢しなければ一人が一ヶ月はのんびり生活できるらしいので、近場の偵察ならそれくらいが相場なんだとか。斥候は一番に命が危ない仕事だもんね。ただしパーティーで受けても全員でその値段。


 討伐任務は敵によって頼る冒険者のランクが変わるのでそれによって相場も変わるのだとか。ゴブリンでも巣の殲滅となるとDランク任務はまずないのでCランクから、小金貨で二枚から五枚で討伐してもらえるそうだ。普通のドラゴン、レッサードラゴンとかレックスとかドレイクとかいうらしい、とかなら大金貨で数枚から数十枚とか。だいたい十から百倍。まあ普通はいくつかのチームでやるので個人収入じゃない。税金は依頼人が源泉徴収の形で払う。


 ギルド、国、領主に払うので全部で二割。依頼料が大金貨一枚ならさらに小金貨を二枚払う。


 緑竜さんとかをいざ倒そうとしたら依頼料はさらに百倍くらいは必要だけど、普通はレアなモンスターは保護されてるのでそんな依頼は出ないようだ。シータさんも倒すつもりなかったみたいだしね。そういう依頼はもし出たら百人とか千人とか単位でやるらしい。軍隊だね。それは動かすのに大金が必要になるわけだね。つかシータさんつよっ。


 ダンジョンやスタンピードではまれにある依頼だそうだ。ダンジョン、私は根が伸ばせないから入れないけど、どんなとこなんだろう? 千人とかで戦闘できるならすごく広そうだよね。


 依頼人としていろいろ覚えておかないとダメなこと、いっぱいあるっぽい。情報は大事だよね。






 主人公(マリモ)とともにゆっくりのんびりがんばります。応援よろしくお願いします。



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