マリモ:対峙4
数日は治療院とスラムを行き来した。ソロムルさんたちは元気そうだが、スラム全体ではデーモンの影響か病人は増えていく。こっそり治してしまえ。病は私の敵だ。対価は治ってから働いてもらおう。
何日か神殿で働いたのでそろそろとだけど名前を知られ始めている。町中で声をかけてもらえる。
根っこはフォレスター全体にとりあえず伸ばした感じ。網の目のように広げないと不安だけど行けない場所はなくなってる。まあいろいろ盗聴とかして悪い人がいっぱいいるのも分かってきた。いつか捕まえよう。証拠も取り放題だし。精霊便利。
中位や下位の精霊は私の支配下なのでガウルさんたちに植物魔法を使えるようにしてあげたり、精霊としても活動している。まあ植物魔法は回復とか使えるので便利だよ。枝とかも出せる。相手を捕まえられるのでとっても便利らしい。メームーさんとかには喜ばれている。
メームーさんは魔力が多いから上位精霊と契約してもらった。彼女に呼ばれたら私も行かないとね。精霊って忙しくない?
北の森ではレッサーデーモンがたびたび見つかっている。……うーん、これグレーターデーモン以上の悪魔が絶対にいるよ。ヤバイかも。
とにかくお金が入ったら大規模レイドで北の森に探索をかけるつもりだ。それまで名声を高めていく。シータさんがいつも側にいてくれるので注目は集まってるのを感じる。弟子はまだマナちゃんだけだけど。増えないね。
さて、今日もスラムに向かう。ドーナツをばらまいて病を癒していく。お代は薬草採取で。……他に出せるものがないんだから仕方ないけど奴隷にするわけじゃないしいいよね。労働の対価にお金払うし。好きな仕事していいし。
ソロムルさんの家に来たが今日も留守のようだ。薬草採取頑張ってるのかな、と、思ったのだが。
「あんたが薬師の先生かい」
「ちょっとツラ貸してくれや」
「ん?」
なんかアホっぽいおっさんが六人ほどスラムの奥から歩いてきた。……今日に限ってシータさんは出かけてる。うーん、これは私が相手するしかないね。こっそり魔力の枝を伸ばしていく。
「おととい来てね」
「断れると思ってんのか?」
「あの三人は人質にもらってるぜ」
「そう。……命がいらないのね」
どうやらソロムルさんたちを人質に取っているらしい。バカだな。私の怒りを買うのがどういう意味かも分からないらしい。
「人質、私は六人取った」
「は?」
「ん?」
「な、なに?!」
すでに魔力の枝は彼らの足を掴んでいる。一息に逆さに吊り上げてやる。
「て、てめ、人質がどうなっても」
「人質どうしよう。とりあえず全員脚の一本はもらっておこう」
ばきゃぱきっと。脚を一本ずつスイカ割り殺法でへし折っておく。枝を二十本くらい巻き付けてへし折るよ。
「私は毒も作れる。全員飲んでもらおうかな? 大丈夫、痛いだけで死ねない毒だから」
「ひえっ!?」
「おまっ、人質……」
「あなたたちが人質なの。ちょっと頭を働かせなさい。……一人か二人殺した方が分かるのかな?」
「ひいっ?!」
うーん、馬鹿ばっかりだ。自分達の状況が分からないらしい。シータさんがいたらすんなりゲロしそうなんだけど今日は私しかいない。しっかりといたぶってゲロゲロ情報を吐いてもらおう。……無関係なはずがない。デーモンが背後にいるはずだ。
思ったより早く釣れたな。
「さっさと吐かないと指が一本ずつ無くなっていくよ。はい、ポキッとな」
「ぎゃあああああああああ!!」
全員髭もボサボサの筋肉質なおっさんだが、さすがに骨が折れると痛いらしい。アジトまで案内してもらわないとね。何本目に吐くかな~?
「アジトどこ? 本当に何人か頭を砕いちゃう?」
「吐く、吐くから!」
この期に及んで上から目線とか信用おけないな。もう一本指折っておく?
「はきます! はかせて! お願い!」
「弱いなー」
魔法も使えない一般市民ではさすがに私の驚異にはなり得ない。お婆ちゃんにいろいろ教わったからわりと戦えるようになったのよ。
六人を縛って歩かせる。睡眠薬も作ってあるからアジトに着いたらお休みしてもらおう。……私凶悪じゃない?
デーモンの親玉はたぶん北の森にいるので町中で活動してるのは雑魚だろうけど、足掛かりになればいいな。とにかくソロムルさんたちの身柄は確保しないとね。……えーと、麻酔薬もあるね。森に入った時にさまざまな毒薬も用意してある。シータさんとかは毒耐性持ってたりするから効かないけど大抵の人間は私の毒で動けなくなる。薬師はわりと戦闘できるね。
さて、どうやらアジトに着いたみたいだ。六人は骨が折れて痛いらしく騒がしいので眠らせておく。衛兵さんに渡しておけばいいのかな? 面倒くさいからギルドに渡しちゃおうかな?
魔力枝を建物の中に伸ばす。すぐにソロムルさんたちが部屋に閉じ込められてるのを見つけたので見張りを眠らせる。気体にした睡眠薬を廊下に満たせばすぐに寝てしまう。うーん、私チート。枝で縛っておく。
手前の部屋に集まってる破落戸も眠らせよう。なんで私を呼び出したのかは分からないけど強引な手段を取る相手の一切の希望を聞くつもりがない。衛兵さんにでも話しておけ。
……んん、やっぱりデーモンいるな? 一人だけ眠らないやつがいる。全員バタバタ眠りに落ちたから慌ててはいるけど、こいつはデーモンだね。薬師鑑定ではデーモン症となっている。体を作り替えられたグレーターデーモンじゃないので治療が可能だ。
お、さすがになにがあったのか分かったらしい。こっちに出てくるぞ。扉を蹴破り、男が出てきた。うーん、筋肉。色黒で無精髭伸ばしてるマッチョメンが出てきた。
「デーモン?」
「き、貴様……精霊か!」
うん、分かってて呼んだんじゃないの? まあいいや、治療しちゃおうね。




