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冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
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マリモ:森で2

 光速で書いてるつもりなのにマリモが森から抜け出せない。



 さて、お婆ちゃんの魔法の授業である。


 この後は南下して吸血鬼の娘を探さないと駄目なので一日くらいだけど、寝る必要もないので夜通しやることにする。


「魔法の基本は魔力のコントロールだよ。魔力をコントロールして蓄積する、魔力をコントロールして固める、魔力をコントロールして放出する。全部コントロールする力が大事なのさ」


 お婆ちゃんは美人だがしゃべり方はお婆ちゃんだ。ちょっといちいち気になってしまう。話を聞かないとね。……魔力のコントロール力が基本なんだね。


 ちなみに私の場合は世界最大の生物の孫なので、平たく根や木に魔力を込めているので、総魔力量は絶大だがコントロールはできない。簡単に言うと魔力が十万あるけど一回の魔法で使えるのは二まで、みたいな状況だ。魔法威力がしょっぱいので魔力量は強さに結びつかない。今は。ちなみに地球上の最大の生物はオニナラタケというキノコである。見た目は十から十五センチくらい。親近感がわくね。


 それは置いといて、お婆ちゃんには植物属性の各種魔法の使い方を教わる。


「この世界の全てのものは魔力と術式でできているんだよ。術式はものすごく細かく複雑なんでそれをいちいち記述するのはほぼ不可能だし無意味さ。大事なのは自分がその術式を体に染み込ませることなんだねぇ。私らは植物だから植物の術式は考えなくても扱えるんだよ。人間の魔法使いは修行として火に焼かれたり極寒の土地で過ごしたりして精霊と仲良くなって基礎の術式記述を肩代わりしてもらうのが一般的さ」


 要するに原子とかそれ以下の世界のものを記述しないと魔法が物理的影響力を持てないらしい。そんなのは普通に無理なので精霊の手が必要になるのだ。ちなみに私も精霊なので魔法の補助とかしてあげられる。


 まずは魔力を固めたり魔力を伸ばしたり相手にぶつけて、そのあと属性に変換して打ち出す。変換が遅いと、かわされる。


 この世界には立派にこの世界の物理学が存在しているようだ。魔力総量を裏切るような魔法は存在しない。スキルにはあたかも魔力を無視したような大規模な術が存在するけど、そこにも明確な理屈が存在する。蓄積魔力や周辺魔力の利用などだ。


 ……思ったよりガチな魔法授業で少し知恵熱が……。


 この辺りは後に魔法使いの先生にも聞くことになるので今日はこれまでである。魔法使いは職業としては魔術師と呼ばれているそうだ。職業スキルとかステータスとか、いろいろ複雑な世界である。そのうち全容が分かるだろうか。


 お婆ちゃんには他にもいろいろなハイドリアードならではのテクニックを教わって世界樹の枝をもらってから別れる。この枝は杖として使えるように磨かれていたのでお婆ちゃんは前から用意していたようだ。私の足から首元までの長さがあるその杖、神樹の杖と名付けられたそれがこれからの私の主力武器となるのだろう。


 その後も色々お婆ちゃんと緑竜さんに話を聞いた。とてもためになったが、またいつでも話せるので今日はここまでである。色々予定を積んでるしね。フォレスターに早く帰りたい。


 さて、南へ向かう。吸血鬼の女の子にすごく興味がある。この世界の吸血鬼ってどんな生体してるんだろうか。にんにく食べられるのかな?


 まあフカフカ主(神樹大森狼)に呪いの魔眼を使っていたので危険な可能性はあるけれど、呪い対策はもちろんバッチリである。好奇心に負ける。


 やがて小川に差し掛かり、南下する。生物は水がなければ生きられないからね。水際を探せば誰か見つかるはずである。知的生物じゃない可能性もあるから危険ではあるが。


 やがて火の気配を見つける。煙が上がってるね。救援を求める烽火(のろし)とかではなくて生活感のある白い煙だ。


 私はとりあえずドーナツを飛ばしてみる。撒き餌だね。怖いのがいたら逃げる。


 ドーナツに食いついたのは見覚えのある胸がこんちくしょうな……エルフ?


 いきなり空中に飛んできたドーナツに食らいつくとか少し警戒心緩すぎない? まあ香りが甘いのは間違いないんだけどね。


「近所のドーナツ屋の味! これはマリ姉!」


「え、それで分かるの?」


 確かに彼女とはこのお店のドーナツを持っていってよくお茶をしたのだが……従姉妹(いとこ)だし近所だからね。……ええ……。来ちゃったの?


「ゆっちゃん……? なんでエルフ?」


「おがががが! マリ姉! これは勝てる!」


「意味が分からない」


 昔からゆずちゃんには謎の崇拝をされている。ゆっちゃんと呼ぶのは久々に感じるな。……面会謝絶って精神的に病むからね……。会えたのは本当に何年ぶりだろうか。……憎い。


「エルフに転生したのにまだIカップはある。憎い。許すまじ」


「出会い頭に揉むなー! 再会の感動はー!?」


 私もう人間じゃないし。人でなし。憎い肉揉む。


「機械的に揉むなー!?」


 はっ!? どうやら懐かしさと感動のあまり意識が飛んでいたようだ。何があったのかゆっちゃんが転がって喘いでいる。……相変わらず変な子ね。


「マリ姉、入院して大人しくなったと思ったのに変わってないね……」


「変わった。動いたり喋ったりが面倒くさい」


「……そうだね」


 ゆずちゃんは寂しげに笑う。私の病は避けられる運命ではなかったのだから、気に病むだけ無駄だ。……病は治さないとね。


「ゆっちゃん。私はドーナツを出せるんだよ。またお茶を飲みながら、話ながら、たくさん一緒に食べようね」


「マリ姉……」


 ゆっちゃんは今も泣き虫らしい。顔が凄いことになってるぞ。まあ、いきなりドーナツを出せると言われても意味が分からないとは思うけど。


「……いきなりなんなのよ……。誰……ってかドリアード?」


「ん?」


 なにか黒髪の可愛い女の子がいた。ゆずちゃんの友達?


 なにか目がカシャカシャと音を立てて色を変えている。赤青黄色に緑白と。……魔眼? 私がドリアードと見抜いたその女の子の目は、強い魔力を持っていた。


 この子か。バンパイアさん。






 キノコ嫌いなんですけど話し出すと一日語れます。


 ついに再会。揉むな。マリモの暴走は止められないですね。



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