マリモ:本体
このお話は「冒険者ギルドの依頼人」なのでマリモにあまり冒険をさせたくないのですが、とにかく設定が多いので分かりやすくするために一旦旅をさせます。色々仕込みがあるんですけど、忘れても問題ないように書ければと思っています。
ガウルさんたちと昼食を楽しん……ガウルさんたちに報告を聞いてから、私はデーモンについて少し調べてみることにした。余剰のポーションをついでに売っておくと、ランクはCに認定された。お金もたんまり。解呪薬とかはなかなかに珍しいものだったようだ。そのお金でついでに様々なポーションの材料の採集依頼を出し、それぞれの採れる場所を教えておく。ギルド貢献度はものすごく高くなったらしいが、ギルト規約として他国での活躍が認められないとBランクにはなれないらしい。ギルドが大陸全土で共通して活動できるのもそういった規約があるためなのでこれは仕方がないだろう。
Cランクになり、さらに権限強化されたのでフォレスターギルドの資料室を目一杯漁れるらしい。まずはお肉の解体法は当然調べるよね。いつも持ってるバックに解体用ナイフは入れておこう。無理やり枝で斬れなくはないんだけど、ナイフの方がいいよね。
ちなみに私は自分が保持している物や根に吸収した物質を霊体として扱える。霊体には質量がないため、根の範囲内なら光速で移動することが可能だ。そのために根を広げる手段の一つが本体になる樹を作ることなのだが……、まずはデーモンについて調べよう。
デーモン。人間の怨念や怒り、嫉妬などの感情が魔力を反応させ変質することで、その感情を無理やり相手にもたらす「瘴気」と呼ばれるものになる。この瘴気は他の魔力や聖気によりいとも簡単に浄化できる(今の私の根もそんな感じだ)が、濃縮されることにより擬似的な残留思念となる。この残留思念が死体などにとりつくとアンデッドとなる。残留思念がさらに強まり人間の精神に取り入り、コントロールを始めるとデーモンとなる。この初期のデーモンはいわば悪霊にとりつかれた人間であり治癒も可能であるが、完全にデーモンに取り込まれるとグレーターデーモンと呼ばれる、より強力な悪魔となる。このグレーターデーモンは瘴気をコントロールし人間を苦しめ、または取り込み同胞としてしまう。この際対象に瘴気を生むような負の感情が少ない場合はレジストもできる。
デーモンはこの他にその瘴気で、魔力溜まりで発生する魔物と同じように発生するレッサーデーモンと呼ばれるものがいる。このレッサーデーモンはグレーターデーモンの傀儡であり、個人の意思を持たず、判断力も低い。このためレッサーデーモンは普通はしゃべることもない。レッサーデーモンから進化し、人にとりつきデーモン、グレーターデーモンと進化していく場合もある。グレーターデーモンはさらにアークデーモンへと進化し、アークデーモンの中から貴族、王が選ばれる。デーモンロード、デーモンエンペラーはSランク冒険者数人がパーティーを組んで挑まなければならないほどの難敵である。
……うーん、一口に言ってヤバそう。人間にとりついて最後はその人間をデーモン種という魔物にしてしまうらしい。精神に攻撃してきたり人を瘴気の毒性で弱らせたり、これが起こっていることから最低でもデーモンがこの町にいるらしい。
図鑑にはイラストもあるがレッサーデーモンは犬っぽい顔にコウモリみたいな耳と翼があり、全体的に禿げて痩せているものの、筋力は高いらしい。そして意識レベルが低いからしゃべらない。
デーモンは人間を素体にしているために回復の見込みがある。薬師の知識でもデーモン症というものがある。治せるんだ。
これが肉体まで作り替えられグレーターデーモンとなるともはや治す見込みは無くなる。浄化することで消し去ることはできるようだ。……ドーナツぶつけてみよう。
病であるなら私の敵だ。この世界のデーモンを倒すことも私の使命だろう。もちろん一人では無理だけど。そういえばギルドマスターのシカリクさんも悪魔退治をシータさんに依頼したがってたな。……あの人ひょっとして……。
他にも色々と興味をひかれる情報を集めておく。……戦いが近い。準備を整えないと。
私は根を通り神樹平原西に、本体を置くことにした。
植物の精霊である私は、半ば霊魂のような存在である。そのため実態部分を構築することで存在をより安定化させられるのだ。
この本体のメリットの一つは、この本体が自然に根を張り、活動領域を広げてくれる、これが大きい。
つまり私自身が根を広げなくても本体は勝手に根を広げ、私の活動範囲を広げてくれるのだ。
分かりやすく言えば拠点である。私は根の上しか行動できないと言うわりと大きな制約を負っている。なので一番大切なのは根界つまり根の範囲を広げることなのだ。それを自身で魔力を吸収し水や栄養素を吸収し、光合成を行い、勝手に根を広げてくれる。これが本体のメリットだ。
おなじ機能を持った分体も作れるので、それはいずれ増やしていき、この大陸全体に根を広げるのが、ひとまずの私の目的である。
その過程で救える人は救っていこう。初めからみんなを救うのは無理と分かっているのはわりと気楽な面もある。無理はしなくていい。ゆっくりと私の根を広げ、病を駆逐して行けばいいのだ。それが私の望み。
私の本体は五メートルくらいの高さで三メートルくらいの幅があるずんぐりむっくりした樹になった。キノコっぽい。この樹は中が明るい空洞になっている。私なら壁をすり抜けて中に入れるが、緊急避難用に扉を作ってもいいし、二階、三階と作って、そこに魔物を住まわせて防御拠点と言うか、ダンジョンにしてもいい。この樹も光合成したり魔力吸収したりできるので、私の体の余裕がかなり大きくなった感覚がある。これが本体を作った目的だ。神樹平原をいずれ根で覆ってもらおう。
このあと、森に入り、私はふかふかな魔物たちと出会ったり、お婆ちゃんに魔法の使い方やこの世界のお母さんについて教わり、そして、あの子との再会を果たすことになる。
五日後、私たちはフォレスターに帰り、本格的に冒険者ギルドの依頼人としての活動を始める。
マリモ「肉を食べたい」
すまん、もう少し待ってくれ。




