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冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
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マリモ:神秘

 次の日、シータさんと一旦お別れをしてギルドで何件か依頼を出すことにする。シータさんには街で何か起きてることを説明した。あ、早朝登山(もみもみ)はしておいた。相変わらず険しい(ちち)だった。


「しばらく残ろうか?」


「大丈夫だよ。みんなに依頼を出す」


「まあ依頼人が出ばることはないか……。先生は出ていきそうだけどな」


「大丈夫。遠くからポーション投げる。ゴツンって」


「かけてやってくれ」


 あはは、と、二人で笑いあった。


「この街の冒険者は軟弱なヤツが少ない。依頼金も先生なら問題ない。安心か」


「うん」


 さすがにSランクは今は他にいないけど。いざとなれば指名依頼で呼び出せるらしいし、私はしばらくは森にこもるつもりだ。


「じゃあまた。なに、飛竜も復活してるから一週間ほどで帰ってくる」


「そういってシータさんは帰ってこなかった」


「死亡フラグだな」


 死亡フラグで通じるんだ? 女神様の聖典に載ってたり? なにやってんだろあの女神様。いいけど。


「じゃあちょっと行ってくる」


「うん、またね。私もしばらく森にこもる」


「そうか。また会おう、偉大なる先生」


「偉大ではないね。またね!」


「また!」


 シータさんは飛竜にまたがって飛んでいった。出会ってからちょうど一週間か。この世界の初めての友達だ。やっぱり少し切ない。


 さて、冒険者ギルドに行こう。まずはモモノさんに依頼を出さないとね。髪も目も青いのにモモノさん。王道ならピンクじゃないのか。


 お馴染みの清潔な三階建ての白い建物に着いた。中からいつもの喧騒が聞こえてくる。まずは根を這わせて中を確認する。結界とかあると侵入できないんだけど、どうやらそういうものは無いようだ。さすがにギルド長の部屋には……そういえば無かったな。いいのかな、こんな無防備で。


 中にはガウルさんたちモフられし者のメンバーがいるね。まずは話を通しておこうか。絡んできそうな人がいないかと思って調べたんだけどガウルさんたちがいたら安心だ。


 ガウルさんたちは先日の緊急依頼でCランクに上がったらしい。Cの条件に緊急依頼、もしくは指名依頼の達成、が、あるらしい。依頼のお金は弾んだ方がいいかな。


 とりあえず扉を引き、中に入る。騒がしさが増し、お酒の臭いが溢れる。……なんかワクワクするな。


「お、先生、おはよう」


「おはよう、ガウルさんモフモフモフモフ……」


「ちょま、先生!?」


「……先生、お仕事は?」


 虎獣人のガウルさんにモフりかかると、メームーさんに止められた。そだね。


「少し調べてもらいたいことがある。期間は一週間で」


「く、詳しく聞こう……はぁ……」


「こ、怖い任務ですか?」


 身長二メートルの狼獣人ムーグルさん。怖がりすぎだと思うよ?


 私はモフられし者たちに昨日のスラムの様子を伝え、病因を探ってほしいことなどを伝えた。


「……呪術の臭いがする」


「メームーさんはそういうの詳しいの?」


「こいつはなかなかの魔術師ですよ、先生」


「デーモンの基本的な災厄系の魔法。瘴気を広げてみんなから体力を奪う」


「デーモン……、あんまり戦いたくない相手」


「ふ、二人の話し方、淡々としてますね」


「ムーグルさんはデーモン得意?」


「い、一応魔法剣持ってます」


「すごい」


 狼ムーグルさんにその剣を見せてもらう。うん、なんか魔力をまとってるのが分かる。指で触ってみるとあっさり指が落ちた。


「ひやああああああっ!? すみませんすみません先生!!」


「大丈夫」


 私は植物なので、人の姿なので血は出るが多少枝が切れたくらいの話だ。さらに精霊なので自動的に傷は治る。私の頭に生ってるのは常世の果実なのだから、その元になるものは私の中を流れているのだ。


「……実は先生って不死身?」


「そうでもない」


 言わないけど、根ごと焼き払われたら即死する。まあその前に逃げるけどね。攻撃力もほぼ無いし。


 そんなやりとりをしている間にネズミ獣人のキックルさんはガウルさんの横にちょこんと座っていて、可愛かったのでモフった。っ、ふわふわっ! お風呂にちゃんと入ってるからかネズミなのにいい香りでふわふわ!


「……きー」


「ないた」


「も、もう、それくらい」


「じゃあ終わり」


「ふー」


 可愛い。小さいし子供のようだしふわふわだし。身長一メートルと少ししかないよ。


 堪能したので受付に。依頼人受付に座ると私を初めて見た冒険者たちが騒いでいる。


 Cランクのガウルさんたちはもうそこそこの有名人だから、彼らと絡んでる見知らぬ見窄らしい女冒険者と思ってみんな不思議がっていたようだ。それが依頼人となると「どこかの貴族のお忍び」と考える人が多いようだ。まあ正体をいちいち明かす必要はないか。


「おはようモモノさん」


「おはようございますマリモ先生。ご依頼でしょうか?」


 まずはガウルさんたちに調査依頼を出す。期間は一週間で一人小金貨一枚(一万グリン、三十万円相当)なので四人パーティーだから四枚、税金に大銀貨八枚を出す。白金貨七枚(七百万グリン、二億円相当)もらってるから全然減らないな。ちなみにオークションにかけられているのでまた少し増える可能性がある。その際税金は取られるけど。


 冒険者ギルドの税金は、ギルド、領主、国に対して納められるが、それでも二割。五公五民(税率五割)とか普通の時代もあったらしいのでかなり安いと言っていい。消費税とか無いし所得税の累進課税も無い。原始的なのはそもそも戸籍管理さえできてないからだ。


 魔物の出るこの世界で村まで正確に戸籍管理できてることをいちいち調査できないから人頭税を課してもごまかしが普通に起こる。そもそも地方の村まで教育制度が回っていないので村長クラスがギリギリ字が読み書きできる程度なのだ。ギルドの冒険者たちも税金が取られるなんて言われたら怒りだしたりする程度に馬鹿なので、依頼人側からの源泉徴収の形になるわけだ。


 他にも薬草採取、神樹平原の魔物の掃討にいくらかお金を出しておく。それでも白金貨一枚分は使ってない。ちなみに大金貨一枚(十万グリン、三百万円相当)出してるけど、大金貨十枚で白金貨一枚だ。三枚出してもまだ余る。


 さて、移動だ。まずはガウルさんたちを引き連れてスラムに向かい、そこで一旦解散する。なんかガラの悪そうな人たちが出てきたけどガウルさんとムーグルさんを見てあわてて隠れた。二人とも身長二メートル超えのガッシリした獣人なのでこの街でもかなり大きい方だ。スラムのやせっぽちな男たちでは十人がかりでも蹴散らされるだろう。


 解散して、私は昨日治療したお婆ちゃんと男の子、女の子の三人の家に向かった。


 まずはノックする。男の子が恐々と覗いて、すぐに私だと気づくと「先生!」と叫びながら飛び出してきた。


 ちなみにお婆ちゃんがソロムルさん、男の子がムルくん、女の子がティティちゃんと言うらしい。獣人の血が少し入ってるそうで、ムルくんとか動きが機敏だ。痩せてるのに。


 ん? しかしなんか、ムルくんは昨日より綺麗な感じになっている。部屋の中の嫌な臭いも治まってる。んん?


「いらっしゃいませ、先生。さっそくお仕事ですか?」


「ソロムルさん、いや、まだ完治してない……あれ?」


 薬師スキルという知識や観察眼を私は神様にもらっている。例えば薬草を見れば薬効や使い方を思いつき、一瞬で薬を作れたり、病気の人を見れば正確な病状が把握できる、のだが。


 お婆ちゃん、ソロムルさんの病気が、何故か完治していた。


 んん? 昨日なんか変わったことしたっけ?


 ん? まさか……ドーナツ?






 ほら、ドーナツはしっかりチートでしょ?


ドーナツ「むっほーーー?!」


 でも称える気にならないまでが仕様です。


ドーナツ「?!」



 マリモは可愛いなー。



マリモ「おおよそ可愛いから遠い行動してるつもり」


 だよね。



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