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冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
18/46

ゆず:お腹いっぱいは無敵なり

 欲しがりさんめ!

 魚ハンバーグ。


 肉じゃないハンバーグは邪道?


 まあ日本じゃ豆腐ハンバーグもあるし、タンパク質? ハンバーグにしとけ! みたいな風潮はあるけど、


 メインディッシュにはハンバーグ。だよね。胃が疲れ始めていても気にせず肉を味わえる。今回は魚だからさらに軽いよ。


 そもそもお腹いっぱいになるだけの食材がないんだよなあ。


 でもほら、お腹いっぱいになると栄養が不十分でも、なんか無敵じゃん? 元気出るよね。


 だからお腹を起こす。いっぱいにする。


 この、魚ハンバーグに、私の料理の叡知を詰めてやるからね!


 正直、ハンバーグにパン粉を使う科学的な理屈は肯定も、否定もされてたりする。別に水気を吸着するからふっくらしないしパラパラだから繋ぎの効果もないよね。生パン粉ならまだしも。私の場合だけど、パン粉や卵を使うのは肉の味が鈍るからいや。牛乳はかえって臭い。肉の臭いを消すのが良いとは思わないし。私はね?


 どっかの誰かが肉だけのハンバーグを否定していたけど、そもそも肉だけのハンバーグでも十分熟成していたら美味い。ただの砕いたステーキだもん。だが確かにそれを最高のものとは思わないね。


 たまねぎも必要だ。二つ理由がある。


 糖質と食物繊維、そして、


 二つちゃうんかい。ごめん、三つやった!


 たまねぎの酵素。これを生かさないでなんのハンバーグなのか。


 酵素は熱で壊れるんで、はい、たまねぎを炒めるのはえぬじー!! のーーぐーーーっど!!


 一般的なレストランがどうとか知らんわ。不味い。不味い。不味い。断言してやる。私のより不味い!


 ハンバーグ作るときに「手でこねる」とか「ミンサーを使う」とか、そんなのは手の足りないファミレスだけでやっとけー!!


 はあ、はあ。


 なんで手を冷やしてアンをこねる必要がある。そもそも氷で冷やしたぐらいじゃ脂を溶かさない体温にするのは無理だ。私ら恒温動物やねん!!


 ほら、間違えた。な、しょせん古くさいレストランのレシピなんか間違いだらけ。もうそういう時代なんだよ(こてんぱんに負けるタイプの悪役のセリフ)!


 まあでもほんと、常温でステーキ焼くのにハンバーグは低温。あ、はい。間違いは間違いだわ。


 手を使わずに包丁で魚とたまねぎ(もどき)を粗びきにして包丁とスプーンで形を整える。肉でもこうしたら脂が溶けるはずない。それでも心配なら包丁冷やしとけ。凍らせたら切れないぞ。


 百人からに料理を出すなら確かにやってられない手間だよね。でも相手が一人なら?


 百人の手法で一人の料理を作るのは間違い。百人に一人のクオリティを出せないのは間違い。


 どっちも正しいんだよ。コストが許さないだけでね。


 だから私はここで対一人の最大クオリティのハンバーグを出す。百人に出すのは無理っぽいけど、美味い!


「あんたなにさっきからブツブツ言ってんのよ」


「ごめん、ハンバーグに対する情熱が溢れた」


「まあいい加減お腹もいっぱいだし、変なものなら出さなくていいわよ」


「そもそも私があんたを食わせる理由はないけどね」


 ないけど作る。私の前で飢えた人など出したくない。日本は飽食だからそう思うのかもしれないけど。


 お腹いっぱいは正義。お腹いっぱいは無敵。


 ようするに、魚とたまねぎを、塩とオールスパイスを加えて包丁で粗びきにしてスプーンを使いいっさい手は触れないでパテ、つまり団子に整形し、しばらく、最低五分放置。冷蔵庫があればそこで一日放置! 腐らないから! たまねぎの硫化アリルには強い殺菌作用がある。まあ異世界だから浄化する。


 そしてこのパテを常温のフライパンにオリーブオイルを引いてのせる。放置。じっくり弱火で火を入れながらアロゼ、つまり油を回しかける。


 百度を超える油でじっくり火は入るからね。中心温度は六十から八十が理想。魚だから低温でいい。アロゼでひっくり返さないで両面に火を入れたらそうそう割れないからね。また低温調理で細胞が保存されて旨味が逃げ出さない利点がある。最後に強火で焼き目をつけるのは構わないよ。


 科学は一昔前の料理の常識をひっくり返してる。専門的に研究したかったなー。料理人の地位は低い。


 まあ私は王様だけど!


「あんた女じゃん」


「また漏れてた!?」


「意外とひとり言多いわよ」


 だってパトスが、料理への情熱が溢れるんだから仕方ない!


「でも美味しそうねー、この料理。ハンバーグだよね」


「……この世界にもハンバーグあるの?」


「女神様のレシピよね。有名よ」


「くそ女神いいぃいぃいぃいいいい!?」


 なんてこった。知識チートこの世界にはないらしい。いや、私ほどの料理人いないと思うけど。王様だからね!


「だから女」


「じゃあ女王様でいいよ!」


「そもそも領地もないわ」


「裸の女王様だからね!」


 だから服くらいサービスしてえええ!


「はむ。んん? んんんん?」


「なんでつまみ食いしたあ?! まだソースつくってねえだろ!?」


「あんたなにこれこいつこのままで美味いじゃん!?」


「はあ……そりゃ美味いよ。お腹すいたもん」


「……ああ」


 語りすぎてすっかり腹ペコです。死ぬほど食べようハンバーグ。


 お腹いっぱいは正義! 無敵! 最強!


 ドレッシングは簡単に柑橘と砂糖と塩で作ったよ。美味しかった。おろしほしかったな。


 そのあと二人でお腹いっぱいに食べてから、ようやく身の上について話すことになったよ。


 私ら出会ってから飯しか食ってないね。なにやってんだ?





 おなかすいた。ストック切れました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] たのしい でも時々シリアス。 作者さまが楽しんで書いていらっしゃるのがわかる。 このまま、下に書いたこと気にせず書かれてくださいませー。 [気になる点] いっきにお書きになられたせいか、ち…
[良い点] メシテロはメシテロでも、調理の過程からおいしそうという神テロ……!! もうたまらん。ハンバーグ食べたいです。
[良い点] おはようございます、居茅様! お魚料理、勉強になります。 お魚は鮭がいいな。おソースは何がいいのかな?大根おろしでポン酢だと、ありきたりかしら? 「お腹いっぱい」って、素敵な響きだなー…
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