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冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
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※リュート:不滅

 不滅の聖女。斬り刻もうが手錠で縛ろうが魔法で封印しようが無駄。


 絶対に死なないし止められない。寿命でも窒息でも飢餓でも縛り首や張り付けでも斬首でも腹切りでも、溶岩でも槍でも鉄砲でも聖剣でも邪剣でも隕石でも邪神の命がけの一撃でも、やったことはないけどブラックホールに飛び込んでも死なない、らしい。人間は生まれた時に辞めていると豪語していた。


 そのスキルを与えた神様か、同じ四聖女の仲間と戦わない限り負けないとも言われている。


 不滅、に、刃など効くはずもなく。毒? 呪い? 効かない。


 心臓? 脳味噌? 潰していいよ。気軽に潰させないでくださいこっちが潰れます精神的に。


 不滅は、不滅だから、不滅。心だけは殺せるらしいよ。……無理っぽいけど。無理っぽいけど。


 拷問や実験にもさらされまくった経験の持ち主。鋼でできてる魂が土下座するほどタフな精神力も持っている。四聖女最強。聖女ってなんだっけ。物理的な力も死なないからこそできる死ぬほどの特訓の末、殴った自分が弾け飛ぶほどだ。相手ももちろん。ちなみにアイアンゴーレムで埋めてもするりと出てこられるらしい。スキルというのはそういうものだ。


 大切な人たちを殺されて、心が千々に乱れていた俺でもポカーンってなったんだもの。彼女の規格外さはわかろうと言うもの。


 ハンマーで頭を潰されたら拳で頭を潰し返す。潰れた拳はもう元通り。あ、頭もついでにね。そっちがついでかよ。剣や槍で縫い止められるも、なにもないように歩く。ぶちぶち千切れる肉体は次の瞬間元通り。ちなみにそんなだから服も自然に直る特別な服を着ている。矢も普通に刺さってるけど蚊ほどにも感じてない様子。しかもすぐにボロボロと抜け落ちていく。封印魔法をかけられ絶対脱獄できない空間(笑)に閉じ込めたらくしゃみしながら「私花粉症なら死ぬかも」とか冗談を言う。当然のように無効。


 笑えてきてしまったよ。だって最強のアンデッドとか呼ばれてるバンパイアどもが、ゾンビか幽霊を見た幼児みたいな顔をしてるんだぜ。何人かションベン漏らして腰抜かして逃げられなくなってるし。もちろん頭が弾け飛ぶ。


「私以外は殺したら死ぬんだぞ。なにやってくれてんだ糞犬どもが。国ごと捻り潰すぞ」


 やりかねない。


 普段はめちゃくちゃに優しい人なんだけどね! 俺嘘つきだけど嘘じゃないからね!


 聖女様の脳筋な突撃に思わずみとれていたら、いつの間にか彼女は俺のところにきて、抱きしめてくれていた。


「ごめんね、リュートちゃん。間に合わなかったよ……」


「あっ……」


 そんなの聖女様の責任なはずがない。彼女が不滅ゆえに戦場に出せなかったのはわかるけれど、それでも国の上層部がひとつの村を捨てることに決めたのは想像に難くなかった。いや、なにより悪いのは仕掛けてきたバンパイアどもだし。


 世界と喧嘩売れそうな、いや、ガチで売れる四聖女の存在は驚異的過ぎるんだ。それは、頭ではわかってる。聖女の国がそんな力を持っていたら周辺国に吊し上げられて困るのは国民なんだから。


 四聖女にも簡単には決断できなかったのだろうことも。


「悪いけど私、これから逃げるわ。また、会いましょう。……私が怖くなかったら、だけど」


 聖女様に応えることは難しかった。完全に混乱していたから。彼女は、俺のためにここにきて、俺のために国を敵に回し、俺のために国を出るのだと、そう思ったら。


 ボロボロになった心でも、叫ばないとダメだった。彼女に抱きついて、どろどろの体で抱きついて、叫んだ。


「あ、ぁりがどお……、るじあなざまぁ……!!」


「ごめんね、私は他の人を癒すとかできなくてさ……。いつかサレナが治してくれたらいいんだけど……。可哀想に……」


 サレナ、四聖女「再生」の聖女様だ。彼女も「不滅」ほどではないけれど死なない聖女。彼女は死なせない聖女でもある。


 もうレビンと師匠は、無理だろうけど。


「う、うわあああああ……んッ!!」


 不滅の聖女様は、死にそうな顔で俺を抱きしめてくれた。


 大丈夫だよ、聖女様。俺は、強いからさ。大切なものをなくすのには、たぶん世界で一番慣れてるから。


 この世界じゃ家族ももういなかったけど。それでも生きてきたんだから。


 だけど。


 バンパイアども。お前たちだけは、絶対に滅ぼしてやる。


 そのためには力をつけなければならない。俺一人では無理だ。絶対に、


 これ以上は不幸にもなってやるもんか。


 最強で無敵の戦力で、お前たちを叩き潰す。


 ルシアナ様とは最後に一言だけかわして別れ、村人たちの墓を作り、廃村になった村から俺は旅立つ。


 俺はけっこう自分で思ってるより薄情なのかも知れないな。俺の心も不滅って言えたらいいんだけど、たぶんもう壊れようがないとこまで壊れてるんだろう。


 立ち直って、歩き出す。半月は動けなかったけど、俺にはまだ大切な人がいた。


 あずさを連れてきた責任だけは、なんとしても果たさないと。あのままじゃ申し訳なさすぎる。


 この世界をゲームのように思ってるわけじゃないけれど、だからこそ不幸も乗り越えないと。こんな世の中だからこそ、立ち止まってなんていられない。


 いくつかの村や町をさまよう。たまに盗賊とか、人の形の生き物を殺し、引き裂き、進む。俺のナイフはかなり頑丈な鋼鉄製だ。それは俺の心の牙であるかのように、俺の心を支えていた。


 バンパイアを滅ぼす。俺の今の目標だ。


 そんな旅の果てにヤツと出会った。勇者フィンリー、小人族の、俺と同じく、村を失った男だった。






 リュート編は一旦ここまでです。


 いろいろ練ってます。お待ちを。

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