表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
13/46

※リュート:バンパイア

 リュートは苦難しかないですね。お姉ちゃんに再会するまでだけど。

 この世界のくそったれなところは、別に人間が生物のトップじゃないところだろうか。


 まあ思い上がった貴族や冒険者みたいな人間も醜いもんだけど、力がないから足掻くしかない世界も、辛いもんだ。


 今日は、俺は村の外れの森で修行のためにコボルトの村をいっこ潰した。魔物とはいえ、俺は虐殺しまくってレベルを上げまくっていた。今世の不幸の始まりだったのかな。もし全く関係なくてもまあ気にはなるよな。


 なかば血まみれだけど、帰りにいつものように彼女、あずさのところに寄る。


 俺は神様にいっこだけサービスで、ユニークスキルというのをもらっている。


 それは「しん魔力間まりょくかん転移てんい」という、親しい人の魔力の中へなら自在にテレポーテーション、空間移動、跳躍、他に言い方あったか、とにかくそれができる。


 親しい人が違う星にいてもそこに移動できる。某戦闘民族もビックリなとんでもないスキルだよな。しかもこれ「オーバードライブ」させると多重影分身ができるんだよな。魔力をめちゃくちゃ払うと親しい人が作った魔力の空間に原理上は「俺」が無限に存在できる、まあ反則だ。実際には魔力の限界があるから無限とか無理だけど。


 とにかくこの親魔力間転移で、俺はこの世界に封印されたあずさのところに行ける。実際の場所はわからないんだよなぁ。神殿のような場所なんだけど。


 彼女は全身を結晶に封じられてる。この状態でも普通に生きてるんだぜ。綺麗な顔してるだろ。……真っ裸だからじっと眺めてると申し訳なくなるけど。なんでマッパよ。服くらいサービスしてくれたらいいのに。生まれた時はみんな裸だけどさ。


 まあ神様にサービス望むのもおかしな話だけどね。


 本当に俺って何様なんだよ。なあ。


 あずさがここにいて、会えるんだぜ。大サービスじゃねえか。


 ちなみに姉ちゃんはまだ来てないのか会えないけど。女神様は時間軸がぶれてるから百年後とかになるかもとか言ってたな。姉ちゃんが望まないと来ないし、早ければ先に着いてるらしいけどそれはなかった。


 とにかくこのスキルで、あずさに会いに来ていた。


 この時俺は、告白してきた幼なじみのやつと付き合ってもいいのかとか浮かれたことを言ってたんだよな。阿呆だな。幸せになる権利を放棄してここにあずさをむりやり連れてきたってのに。本当に俺は何様なんだよ。だからバチが俺を集中砲火するレベルで当たりまくるんだよ。


 このころ聖女国ホシトミツキじゃ隣国、魔人国クーバクと戦争になるかもって話が出ていた。ちなみにその聖女国ホシトミツキの辺境に俺の村があってな。


 ここまで言えばわかるよな。幼なじみのとこに親魔力間転移しようとしたら、


 できなかったんだ。魔力が、無かった。すでに、無かった。


 慌てて師匠の魔力を探ったらかろうじて見つけたけど、戦闘中を示す荒々しい魔力状態。泣きそうになりながら飛んだ。他に知り合いの魔力といってもとっさに思い付かなくて。バカだな、俺なんかが戦場に出ても、


 ああなることはわかっていたのに。


 師匠は生きていた。連携して敵と戦う。親魔力間転移で師匠の魔力の中を飛び回り、バンパイアらしき男たちをたちまち三人大型ナイフで斬り殺す。驚愕するバンパイアども。


「師匠、アイツは?!」


「む、息子は……レビンは……」


「?!」


 師匠の視線を追ったのはミスだった。倒れた幼なじみ、レビンとその腕を引き抜き食らいついているレッサーバンパイア。視界が真っ赤になっていた。


 またか。またなのか。もう、さすがに、


 これ以上は、無理だった。


 気づいた時には師匠も殺されて、食われていた。俺はそれを見ながら気持ちの悪いニタニタ顔のバンパイアの男にのし掛かられていて。


「少しは反応したらどうだ。仲間を三人も殺しおって……」


 涙がにじんでいた目を、抉られた。激痛。悲鳴もあげられない。なんで。なんで。そればっかりだ。全身の苦痛。親しい人がみんないなくなった空間で、俺の戦えるすべは多くない。


 無様にもそのまま何時間ももてあそばれていた。そこに、ようやく救いが来た。


 小柄ながらすらりとした肢体、長く伸びた白銀の髪、蒼く深く、輝く双眸。その手に握られた黒い鉄塊。


 聖女様が、ルシアナ様が、来てくれたんだ。


 普通はこんな激戦区に聖女が来ることはない。当たり前だ、聖女国は彼女たちでもってるんだから。実際にルシアナ様は法律を無視して手続きを無視して国王たる聖女王を殴りつけて駆けつけたらしい。


 その手に握った黒く輝くハンマーのように重厚なメイスが俺の上に乗っていたバンパイアの頭を、まるで軽石のように弾き飛ばす。


 俺にまとわりつくようにそこにいた数人のバンパイアの頭が次々に砕け、弾け飛ぶ。


 俺の知ってる聖女様は頭に超がつく脳筋武闘派だった。や、優しい人なんだけどね! 憧れだし!


 彼女を取り囲むバンパイア。


「き、きさま、よくも」


「やかましいわ犬どもが!」


「ぶげらっ!?」


 その華奢な体のどこにそんなパワーがあるんだよ、って膂力で、しゃべってるバンパイアの頭を弾き飛ばした。後ろからも横からもバンパイアが飛びかかり、彼女はめちゃくちゃに斬り刻まれる。


「ふう……、何が犬だ、聖女国の犬が……」


「ようやく死んだか……」


 情報って大事だよな。ルシアナ様の二つ名、そのスキルの名前を知ってたら、こいつらの頭は弾けていなかった。


 二つ名、「不滅の聖女」と。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ