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冒険者ギルドの依頼人  作者: いかや☆きいろ
一章 冒険者たち
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※リュート:転生して

 この物語の副キャプテン、リュートのお話であります。

 くそったれな人生だった。でも、そう思うのは、きっと幸せもあったからなんだろう。


 姉ちゃんは優しかったし、恋人もできたし、両親もまともだったし。うん、幸せだったと思う。だった。


 だったから不幸になった。


 姉ちゃんが病に冒されて恋人と疎遠になって両親が仕事に逃げた。


 今回の人生よりはましだろうけど。幸せがあったぶんは。


 今回は、大切な家族は皆殺し、村は焼き払われ、師匠と幼なじみは殺されたばかりか目の前で食われ、俺は右目を抉られ凌辱され、尊敬してた聖女様が国の法を破ってまで助けに来てくれたから辛うじて生き残ったものの……。逆に死んでしまえたらよかったかもな。そんな状態だった。


 しかし今回の人生は別にボーナスステージじゃない。女神様に無理なお願いをしたから、その願いは実際に果たさないと駄目だろう。死ぬとしてもその後だ。


 こんなくそったれな状況だが、これは別に女神様が決めたことではない。そうだよな、恨むべきは女神様じゃないし、俺でもないし、遅れてきた聖女様であろうはずがない。


 彼女の派遣を渋った国のトップや、実際に村を襲ったバンパイア(くそったれ)どもだ。


 前世の最後も、俺は彼女のストーカーともみ合い、殺しあった。彼女は殺されてしまったから。


 女神様に自分の世界に来るかと誘われた時、彼女もこの世界に来るならと言ったら、人をよみがえらせることなどありえないと言われた。


 俺は転生できるのに? 普通は無理なのか? うん、普通は輪廻の際に記憶は失うもので、記憶が残っていても同じ人生の続きではないからあまり意味はないらしい。運命はただの流れだし神様はそこには手を出さない決まりらしい。本来は。そもそも神様は一人じゃないし俺たちの意思も別に無視はされていないらしい。無理なことは無理。当たり前のことだ。


 それにみんなが生き返ったら世界は人で溢れてしまうし、死ぬことは悲しいけれど、死なないともっと悲しいことになる。世界のリソースは一定だから。


 はあ、でも、女神様にわがまま言ったからな。願いは自力で果たさないと。


 女神様による封印から彼女を、あずさを解き放たないと。そのために俺はこの世界のやつらを利用する。


 なんかこの近くの村の出身者に勇者とか言うやつがいるし。小人族の勇者ってアレだよな。指輪でも捨てに行くのかな。危ないか。


 俺は救われなかったけど、その分やつとたくさんの人を救いたいとも思ってはいるんだ。あいつの名前はフィンリー、今はSランクの冒険者だ。小人族初の快挙で「小人の勇者」って呼ばれている。職業が天職、神様に与えられた職業、勇者なんだよな。あの人、女神様は前世だとゲーム好きだったからなぁ。ちなみに彼女はあずさのストーカーと法的に戦ってくれた生徒会長だったりする。めちゃくちゃ無理ばっかり言ったんだよな。姉ちゃんのことまで頼んだし。お前何様だって言われても俺は反論できないわ。神様ルール若干無視したらしい。頭上げたら姉ちゃんにも殴られそう。


 前世は男だったけど今回は女だ。彼女をよみがえらせる代償として、俺は性別も姿も変わった。小人族の女だ。ろりろりしい。彼女と再会してももう普通に恋の続きはできないだろう。レズもなんか嫌なんだよな。変なの。まあガキの頃は記憶なかったもんな。


 くそったれな状況だけど、望んだのは俺だ。女神様にお願いだけして代償も払わないとか逆に何様だって話だよな。


 俺様だ、とは言えないよな。


 もう一度、前世のラストから思い返してみる。


 俺が彼女、あずさと付き合うようになって、幸せが始まると思っていた、そのすぐにあと、大好きな姉ちゃんが病気になり、入院した。神経系の病で先天的なものだったらしい。徐々に五感が潰えて、最後には自律神経の働きが止まり、心臓が止まり、死に至ると。


 俺は自由人で元気いっぱいの姉ちゃんが大好きだった。だからだんだん弱ってく姉ちゃんのことばかり考えるようになって、あずさとも疎遠になって。


 医学の勉強をしはじめて忙しくなったんだよね。間抜けだと思う。今ある大切なものにも目を向けるべきだった、って姉ちゃんなら絶対いう。


 その結果が彼女はストーカーにつきまとわれ、命まで奪われることになったんだ。


 俺はその場に出くわした。当然犯人とは揉み合いになり、刺されたが刺し返した。相討ちだ。……守れなかった。


 悔しかったが、仕方ない。来世はストーカーのやつは虫けらに生まれ変わって糞にまみれて生き、最後は小魚に食われる運命らしい。そんな生をこれから何度も繰り返すようだ。命の大切さを分からせるためだろうか? 集合意識っていう、神様の上のレベルで決まってるらしい。


 ちなみに魂の階層の段階が集合意識、魂の世界、情報階層、深層意識、みたいにあるんだとか。まあそういうスピリチュアルな情報って中二心をくすぐるものがあるよね。


 もとい、人殺しなんかするもんじゃないな。死ななきゃわからんけど、集合意識ってやつが運命を決めているってことは、好き勝手したらきっちりタコ殴りにされるってことだよなあ。


 俺はこの世界の女神様に「うち来る?」ってノリで誘われたんだけど、無理を言った。彼女も一緒にって。


 さすがに無料で運命までねじ曲げるのは神様にも無理だったらしく、代償が必要となった。それは仕方がない。人を望んだ状態で生き返らせるなんて普通に奇跡だもんな。


 代償として男から女に生まれ変わって、記憶も残された。幸せに生きるのは無理かなーとはこの時点で思ったけど。


 ガキの頃は記憶が曖昧で、村を訪れた聖女様に憧れて、あんな風になりたいとか思ったんだよな。その気持ちは今も、記憶が戻った今もある。


 冒険者になってたくさんの人を助けたいと思った。近所に冒険者上がりの村人がいて、その人にいろいろ教わった。その人の息子と一緒にだけど。あの人はたぶん俺があいつと結ばれるのを望んでいたんだろう。


 ……まあ女だしな、今回は。子供とか欲しかったなー。もう無理だけど。


 まだ作りかけらしいけど、ステータスが設定されてる世界だから、魔物とか倒していくと子供でも強くなれるんだよね。だから時々村から出て、森の中で魔物を倒してレベルアップに励んだ。この世界の設定はまだまだ作りかけらしいけど、レベルのお陰で小人の女だけど強くなっていたってこと。


 この辺りの魔物はコボルトとかくらいだけど、村では俺が一番強いってくらいに狩りまくった。しょせんは村一番だったんだけどな。


 俺が生まれた国は聖女の国ホシトミツキという。小人や妖精なんかも住む国だ。聖女様は何人もいるんだけど、俺が憧れた聖女様は国を嫌いどこかに旅立ってしまったらしい。いい国だと思っていたんだけど上層部は腐ってたのかもな。とても綺麗で優しい人だった。まあ今でも憧れてるくらいだからな。


 その聖女様は最後に、俺を助けてくれたんだけど。


 あれはいつものように、俺が森に入って魔物狩りをしていた時だった。






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